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研究/産学公地域連携

ジェンダー・フリー社会とは 第7回
「女性が‘芸術を仕事にする’ということ」

小暮宣雄/本学文化政策学部助教授

 いよいよ2001年度から、「女性に文化という仕事を!」というコピーを伴って本学に文化政策学部が産声を上げた。
  私の担当する「アーツ(=アート)マネジメント」(芸術経営)論という領域は、典型的な「文化」の一つである「芸術」を仕事にする環境を対象としている。つまり芸術環境を観察しよりよくするために提案することを目指している。
  したがって、「アーツマネージャー」とは芸術を仕事にしている人たち、ということになる。
 もちろん、芸術を仕事(金銭的な稼ぎは少なくとも社会的使命を持つ場合も含めて考えていい)として行う芸術家たちもいる。そういうアーティストはプロフェッショナルであると呼ばれ、アーツマネージャーとともに、芸術を創り社会へ伝える大切な 「仕事」を受け持っているわけだ。
 なお、特に「社会へ伝える(=アウトリーチと呼ばれることが最近多くなった)」のがアーツマネージャーの仕事である。アーツマネージャーはもちろん、アマチュアの芸術表現者とともに仕事をすることもあり、その場合もアーツマネージャーは「プロとして」仕事をすることになる。

 そもそも芸術が成立するには、芸術を創る人(A)と芸術を受け取る人(B)が必要となる。その(A)と(B)の橋渡し(=C)をしているのが「アーツマネージャー」だ(おおざっぱに言えば)。
 一般的に「芸術を受け取る人」(B)はプロではなく、鑑賞者とか参加者として、(A)と(C)によって創られた芸術を享受する、広く社会にいる私たちである。 
  「一般的に」と言ったのは、「芸術鑑賞」のプロである芸術批評家やアーツジャーナリスト(専門誌記事を書くような人)がいて、(C)のもう一つの役割をアーツマネージャーとともに果たしていると言える。

 さて、芸術を仕事にしている人の性別はどうなっているだろうか。芸術家の性別は国勢調査などで分かるだろう。ただし、いわゆるレッスンプロの存在があってその分女性の数が多く出る傾向にある。
 実は、映画やお芝居、交響楽団においても、それらの中心となり指導的な役割を果たす人、すなわち監督や演出家、指揮者の女性の比率はまだまだ少ないのが現状だ (ただし、京都や大阪でいま女性の若手演出家を何人も知っているから、その比率が高まっていることは確実だろう。またダンスアーツについては女性の振付家を特別視することはない)。
 他方、芸術を創造する力において女性が男性よりも劣っているとは思えない。逆に日本人総体を見れば芸術を楽しみ理解できる比率は女性の方が高いのは明らかだと思われる。

 ではなぜか。
 演奏者や役者、あるいは作曲家や戯曲家などでは、輝かしい才能や創造力を発揮している女性の芸術家が輩出している。個人の才能で勝負するなら負けないのだ。問題は集団の統率力ということだろうか。
  いや、それもあるだろうが、実は芸術世界内の問題だけでなく、一般の社会の受け 止め方が大きいように私には思える。いまだに「女流」作家、「女性」監督という名称がメディア的に意味を持つことが象徴的な表れだ。

 そのなかで、アーツマネージャーの役割を忘れてはならない。いままで、アーツマネージャーは芸術家を陰で支える役目をすることが多かった。確かに本番ではアーツマネージャーは黒子に徹することが多い。
 しかしながら、社会へいま制作中の芸術のすばらしさを伝えるのはアーツマネージャーしかできない。なぜなら創造者やパフォーマーはまだその「芸術」を完成していず、それまでは黙々と創作し稽古してもらわないといけないからである。
 そのときこそ、アーツマネージャーがいかに女性のアーティストを社会へアピールできるか、社会やマスコミに偏見があればそれをどういう形で取り除くかという課題に立ち向かわなければならないのだ。
 もちろん、アーツマネージャー自身が女性であることがハンデになることもまだまだあるだろう。ただ、最近にできた日本でもっとも自主事業を積極的に展開している二つの公共ホールの館長がどちらも女性であることが象徴するように、女性の「制作」が裏方で男性の館長やプロデューサが表に出る情勢は変化してきた。やっと「芸術経営」に女性の顔が見えだしてきたのだ。

 この流れをもっと本格化したい。女性がアマチュアの鑑賞者(B)だけの時代は終わった。いま、まさに仕事として芸術を伝える女性のアーツマネージャー(C)の時代がきたのだ(とはいえ、地方公務員で実にすばらしいホールマネージャーであった女性をいまだに大切にしないで平凡な定期異動の対象にすることはよくあって、年度の変わり目は実に複雑な気分になる)。

 ジェンダーの視点から、(C)の彼女たちがすることは二つある。
 一つはいままで述べてきたように、女性の芸術家の力を社会へまっとうに伝え活躍する場所、助成金を獲得することだ。
  もう一つは、芸術は女性の楽しみ、趣味にすぎないと思っている男性へ、芸術の奥深さを伝えてあげること。
  つまり、芸術があることで、21世紀の社会に埋没せず個性を輝かして生きていけることの恩恵を、男性にも「おすそ分け」してあげることである。