Event Report

#イベントレポート
健康科学部作業療法学科の高校生向けイベント
「暮らしの中の空間を科学してみよう!視覚と行動のつながり」をレポート!

イベントレポート

2021.03.18

人混みの中で誰にもぶつからずに歩く。誰もが当たり前のように行っていることを立ち止まって考えてみると、「なぜ、そんなことができるのだろう?」と不思議な気持ちになりませんか? 

このような視点で眺めることで見えてくる「日常生活の中に潜む不思議な世界の探求」をテーマに、健康科学部作業療法学科が「暮らしの中の空間を科学してみよう! 視覚と行動のつながり」と題した高校生向けの体験型イベントを開催しました。

※このプログラムは、小学5・6年生・中学生・高校生に大学の研究室の取り組みを伝える日本学術振興会主催の「令和2年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開発表(B)(ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~~KAKENHI))JP20HT0170」に採択され、実施しました。

 

今、見ている世界は“現在”?それとも“過去”?
未知の世界への扉が開いた!

12月19日(土)午前10時、イベントに参加する高校生の皆さんが京都橘大学の教室に集合しました。参加する皆さんは、高校1年生から3年生の6人で、作業療法士をめざしている人や、研究職や科学の分野に興味を持っている人などです。講師を務めるのは、本学の健康科学部作業療法学科の吉田健先生です。

午前中は「見える仕組みについて」「探索眼球運動からわかること」と題した2つの講義が行われました。講義では、眼から入った情報がたどる経路や網膜の働き、脳内での視覚情報処理の仕組みなどを学びました。

講義で特に印象的だったのは「脳内での視覚情報処理」の項目です。

吉田先生が、「眼からの情報が脳に到達するまでの時間は、どのくらいだと思いますか?」との質問を投げかけると、高校生の皆さんのメモを取る手が止まり、お互いに顔を見合わせながら考えます。

「1秒? 0.5秒? 0.3秒?」と挙手を促した後、皆さんの顔を見渡しながら「現在、眼からの情報が脳に到達するまでおよそ0.1秒かかるとされています。ということは、今、私たちが観ているのは過去の世界ということになりますよね」と吉田先生。

先生のこの一言で、高校生の皆さんに驚きと発見の表情が現れ、緊張で張りつめていた教室の空気が次第に和らいでゆくのが伝わってきました。

 

午後は、午前中に学んだ知識をもとに、「アイマークレコーダーを装着してみよう」「オプティックフロー刺激による影響を体験してみよう」などの体験型プログラムを、吉田先生のゼミ生のサポートを受けながら学びました。
※例えば、高速で運転しているときに、街灯の光が流れるように見えることによってスピードを感じる、顔の側面でなにかが動いているのが見えるとそちらへ首が周りやすくなるなど、運動機能への影響があったり、識別の手がかりになったりする視覚情報や、またその刺激を与えること。

「アイマークレコーダー」とは、「人がどこを見ているか?」を可視化・計測する視線計測システムです。角膜にLEDで光を当てて、眼球運動を計測します。この日は、帽子のように見えるウェアラブルタイプ(身に装着できる)とデスクトップパソコンのような形状をしている非接触型タイプの2種類の視線計測システムを使用しました。

ウェアラブルタイプのアイマークレコーダーを使った実験は、廊下を歩いて視線の動きを可視化する実験と、モグラたたきゲームを行って、視線と手の動きを計測しました。

非接触型タイプを使った実験では、ハンバーガーショップの広告や、まちがい探しゲームの際の視線の動きを計測しました。特に盛り上がったのは、ハンバーガーショップの広告の視線の動きの実験です。画面に商品が並んだ広告が映し出されると、高校生の一定時間見た部分(注視点)がドットマーク(●)で現され,それらを繋ぎあわせ視線(注視点軌跡)として解析されます。これにより視線の注視パターンの特徴や集中して見ている箇所が可視化されるのです。実験しているひとりの高校生に「ソフトクリームをずっと見ていますね」と吉田先生が指摘すると、「ソフトクリームが食べたいなと思っていたので見てしまいました」と高校生は答えました。「わかる!」と合いの手を入れる人もいて、教室にはにぎやかな笑い声が起こりました。

  

楽しみながら研究の基本「科学的思考の4段階」を体験した充実した一日。

いよいよプログラムの締めくくりとなるプレゼンテーションの時間がやってきました。プレゼンテーションの目的は、自分の考えを自分なりの表現で他者へ伝えることにあります。午前中の講義で得た知識と実験で得られたデータから何がわかり、どのような気づきがあったのかを、意見交換をしたあと、それぞれが発表内容をまとめる作業に取り組みました。

プレゼンテーションでは

「アイマークレコーダーを着けて廊下を歩き、光ったり動いたりするものに視線が誘導されやすいとわかりました」

「ハンバーガーの広告では、自分の好きな商品に真っ先に視線が行き、買いたい商品順に視線が動きました」

「ハンバーガーの広告は、今までは漠然と見ていると思っていたのですが、私もほかの人も自分の好きな商品を無意識に見ているとわかって驚きました」

「モグラたたきをして、最初は見た後に手が動いていましたが、慣れると視線に関係なく手が動くようになり、そうなると打点がグンと上がりました」

といった発表がありました。

高校生によるプレゼンテーションの後、吉田先生が「大学の研究室では、観察・仮説・実験・考察の4つの段階を繰り返し行っています。これを科学的思考の4段階といいます。今日は、午前中に観察と仮説、午後に実験と考察を経験していただいたわけですが、皆さん、とても良いプレゼンテーションができました。今日は、すでに大学進学が決まっている人も、これから大学をめざして勉強する人も参加されているようですが、皆さんには好きなことを見つけてほしいと思います。研究というと堅苦しく感じますが、実は好きなことを掘り下げることが研究です。また、研究は一人ではできません。周囲の人の協力があってできるのです。このことも忘れないでくださいね」とあいさつし、一人ひとりに修了書を授与しました。

照れながらも誇らしげに修了書を受け取る高校生の姿がとても印象的で、その表情から充実した一日であったことが伝わってきました。

最後に皆で集合写真
※撮影時のみマスクを外しています。

<ここがDISCOVERY!>

吉田健先生は眼の働きに関する研究者!
京都橘大学では、視覚情報が日常生活に与える影響や、人体の不思議について、作業療法の観点から深く学ぶことができる。

大学の研究室では、観察・仮説・実験・考察の4つの段階を繰り返し行っている!これを科学的思考の4段階と言う!
・研究=周囲の人の協力を得ながら、好きなことを掘り下げること!

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