Event Report

PBLに挑む!
エムケイ株式会社に新しい観光ツアーを提案

イベントレポート

2021.10.01

京都橘大学経済学部の福井弘幸准教授のゼミの観光とまちづくりを学ぶ学生19人がエムケイ株式会社(以下/MK)のPBL(課題解決型学習)に取り組みました。貸切観光タクシーの新たな可能性を探る2カ月間。このプロジェクトの企画提案をMKの経営部門の方々に向けて最終プレゼンテーションしました。

MKとの産学連携プロジェクト概要
●PBL課題/「貸切観光タクシーの新たな可能性の創出」
貸切観光タクシーの利用者の中心だった観光客や修学旅行が長期化するコロナ禍のため、利用者が激減。新たな顧客の開拓のため、新サービスやPR法を若者の視点から考える。なかでも利用の少ない10~20代向けのプラン開発を行い、貸し切り観光タクシーの認知度を高め、理解を深める。
⓵3回生課題「貸切観光スタイルの認知度の高め方を情報の類型から考察」
➁2回生課題「貸切観光におけるターゲットごとに訴求力のあるサービス内容、価格帯、販促方法の考察」
 
●目標/フィールドワークでの実車体験を経て、マーケティング分析を行い、貸切観光タクシーの価値を広く認知させるための施策などを提案
 
●参加者/京都橘大学経済学部・准教授 福井弘幸、学生 19人(3回生14人、2 回生 5 人)
 
●期間/2021年6月~7月(約2ヵ月間)
 
〇フィールドワーク
MKタクシーが提供する「貸切観光タクシー」でのホスピタリティを体験し、理解を深めるため、MK のトラベルコーディネーター※とともに寺社仏閣をめぐるフィールドワークを行う。
2021年6月29日(火) 3回生、6月30日(水) 2回生
京都橘大学発~東福寺~伏見稲荷大社~京都橘大学着
※トラベルコーディネーター:ホスピタリティに特化し、観光ガイド兼運転業務をするドライバーのこと。
 
〇最終プレゼンテーション/3回生グループ、2回生グループ、フィードバック、意見交換会
日時:2021年7月28日(水)
会場:エムケイ株式会社 国道十条営業所(京都市南区)
対象:エムケイ株式会社 経営企画部、外商部、人事部の職員

最終プレゼンテーションをレポート

7月28日(水)、この日、MKの社員さんのほかにメディアの取材陣も入ったため、プレゼンテーションを前に学生たちは少し緊張している様子。当日、現地で参加できないメンバーはYouTubeとZoomを使って、リアルタイムで参加しました。MKの担当者や福井先生からの挨拶などを終え、いよいよプレゼンテーションです。

2回生によるプレゼンテーション

まずは、2回生のプレゼンテーションから。2回生は「リアルツアーの課題と販促方法」とまとめたプレゼンテーションです。学生たちは、緊張した面持ちで壇上に立ち、実車体験で気づいたこと、良かった点や課題、タクシーツアーのメリットと課題をあげました。

<メリット>
・高級感があり、普通の観光ではできない体験ができる
・移動中、周囲の観光客を気にする必要がない
・運転手による案内や解説がある
・少人数のため、柔軟なトラブル対応が可能

<課題>
・価格が高い
・ツアーの内容がわかりにくい
・強み、魅力をアピールしきれていない

<提案>
・割り引きや他店との連携でお得感を出す
・ツアーの価格に見合った高級感を出す
・ツアー名を短くしてインパクトを出す
・ターゲットを明確にする
・高級感や優れたホスピタリティをお客さまに伝える

さらに、顧客目線での4P(企業目線)と4C(顧客目線)でのマーケティング分析を発表。京都観光において、分析によるターゲットから、具体的な観光商品の提案をしました。

<ターゲット分析>
・年齢:入洛観光客は40歳以上が多い
・男女比:女性が多い
・同行者数:7割以上が2名以上で訪問
・訪問回数:5回以上のリピーターが約8割
・旅行形態:宿泊客
(市内交通費消費額においては、宿泊観光客が日帰り観光客の約3.5倍)

今回のターゲットはリピーターであるため、主要観光地以外が重要と考え、大学がある山科区周辺に着目しました。メインとなる観光地として、世界遺産であり写真映えもする醍醐寺と、船で疎水沿線の名所を巡る体験ができる山科疎水船をピックアップ。

また、ドライバーの個性や趣味が同社の強みであると考え、それらを踏まえた商品内容を提案しました。

<商品提案>
・運転手の趣味(例:カメラ)を生かしたツアー
⇒ドライバーイチオシのフォトスポットを巡る
・相互コミュニケーションを生かし、思い出に残るツアー
⇒記念としてお客様の写真を撮影し、USBなどに入れてツアー後にお渡しする
・タクシーツアーの課題を解決したツアー
⇒主要観光地以外で、目玉となる目的地を作る

3回生によるプレゼンテーション

次は3回生の発表です。3回生は「貸切観光の認知方法~プロモーションを情報の類型から考察~」のプレゼンテーションを行いました。貸切観光タクシーを利用してもらうためには、認知度を高め、お客さま(若年層)に、価格に見合った価値を理解してもらうことが大切となります。

そこで、観光情報には「誘発情報」「選択情報」「計画情報」「現地情報」「評価情報」の5つがあります。観光の一連の流れから、それぞれの現状と課題を書き出し、改善策を提案しました。

(1)旅行者に興味をわかせ、行動しようとする意思決定に関わる「誘発情報」

若年層が魅力に感じることとして
・そこにしかない四季の景色や名物
・友達や恋人との特別な楽しい時間
・流行のSNSの映え写真
・そこにしかないグルメや期間限定グルメ
・ドラマやアニメの聖地巡礼 があげられることから、SNS映えスポットや期間限定のグルメなど、そこに行かなければ体験できない「付加価値」を作り出すことが重要と考えました。

<付加価値の提案>
・地域に詳しいドライバーだからこそ知っている、映えスポットや限定グルメ
・MKグループと地元企業のコラボ商品
・そこでしか味わえない、特別感を感じるコラボ体験
・Instagramの活用
・観光客にモデルになってもらう

(2)観光の目的、目的地、時期などの選定に関わる「選択情報」

世代別によって異なる情報収集の手段をあげ、MKのホームページやSNSの現状をもとに、提案をしました。

SNSの使い分けによって、異なる世代にアピールができ、特に若者に人気で、企業にあまりなじみのないTik Tokの活用を提案しました。Tik Tokを使用した発信のメリットとしては、利用企業が少ないため、他社に埋もれずに存在感が出せることや、フォロワー以外の画面にも表示されるため、より多くの人に認知されることをあげました。

<ホームページに関する提案>
ドライバーの個性を伝えるため、
・出身地や趣味などプロフィールを充実させる
・ブログなどの個人発信で、お客様に親近感を持ってもらう

<SNSに関する提案>
SNSの使い分けによって、異なるユーザー層にアピールするため、
・旅行系YouTuberとのコラボレーション
・他のSNSよりも話題性があり、若年層に人気のTik Tokを活用。

(3)具体的な観光計画に関わる「計画情報」

<改善のための提案>
世代別のモデルコースをホームページに公開することとともに、貸切観光タクシーは、コロナ感染のリスクを回避できる有効な手段であるとして、コロナ禍への対策の追記を提案。

(4)現地での旅行行程を快適にする「現地情報」

<改善のための提案>
思い出に残る写真撮影サービスの充実や、バリアフリー、チャイルドシートなどの完備をあげました。さらに実車体験での気づきとして、普通タクシーの車内にMK社の取扱商品の広告などがないことを指摘。

(5)旅行全体の情報をフィードバックする「評価情報」

WEB上の口コミから良い点と課題を書き出し、そこから価格以上の付加価値を提供し、誘発情報につなげること重要であることお話ししました。付加価値の提案としては、アイドルやアニメ、ドラマを例に挙げ、若年層に人気のあるコンテンツを織り交ぜることを提案。同世代ならではのユニークな提案に、MK社員の方々も興味津々の様子でした。

<付加価値の提案>
・推しと同じ名前の神社を参拝
・撮影地の訪問(聖地巡礼)
・タクシーのナンバープレートを、推しの誕生日や名前にかけたものにする
・ライブの当選確率を願う、運気アップの神社を参拝
・等身大フィギュアの乗車
・車を痛車にする
・ドライバーがアニメの衣装を着る

また、実車体験でのフィールドワークの気づきとして、

ビニールシートで隔離された運転席に話しかけづらかった体験を挙げ、客側にもマイクを置いてはどうか。観光タクシーに関する認知度を上げるため、自社の普通タクシー車内に、パンフレットやQRコードなど、貸切観光タクシーの広告を出し、タクシー利用客にアピールすることを提案しました。

最後にフィールドワークを終えての感想として、利用客への気づかいや配慮、おもてなしが心に残ったことを振り返りました。改善点としては、若年層に適さない価格設定をあげ、これを解決するためにも、改めて情報の拡散と価格に見合う付加価値の提供が大切だとして、発表を締めくくりました。

参加した学生に聞きました!

最終プレゼンテーションを終えた学生たちに、PBLに参加した感想などを聞きました。

Q/PBLに参加した感想をお願いします。

楠木 駿介さん 現代ビジネス学部都市環境デザイン学科3回生
ゼミ授業の一環として取り組むことになりました。グループでいろいろな事を調べたり、実際にマーケティングを進めていくうちに、どんどん理解が深まっていきました。みんなで話し合い、いい案がでたときには、すごくやりがいを感じました。

見坂 実久さん 同学部同学科2回生
大学に入ったら何かしたいと考えていましたが、1回生の時は、コロナ禍で授業以外に何も参加することができませんでした。2回生になり、企画力やプレゼンテーションする力をつけたいと思い参加しました。

Q/実際やってみていかがでしたか?

竹野入 闘気さん 同学部同学科3回生
はじめは、全然カタチにならなくて焦りました。でも実際フィールドワークをしてみて、グループの中で担当を決めたり、話し合ったりすることで、皆で1つのものを作り上げていく楽しさを実感できました。また、人に伝えることの難しさも経験し、本番まで、何度も練習し、皆で意見を出し合うことで納得のいく内容にまとめることができ、達成感を感じました。

Q/PBLを通じて、成長を実感できたところはありますか?

今若 遥さん 同学部同学科2回生
なかなかうまくまとめられなくて、どうしようかと悩んだこともありましたが、2回生5人で話したり、先生からのアドバイスをいただいて、何とかまとめることができて安心しました。人前で話すことに慣れるという新たな課題も見つかりましたが、練習の甲斐あって、今日はしっかりと話せたと思います。PBLに参加して、自分自身が成長したと感じられました。

学生たちがプレゼンテーションで企画提案した内容については、今後、同社の広告宣伝活動や貸切観光ツアーの商品化などで検討される予定です。

<ここがDISCOVERY!>

・京都橘大学はさまざまな企業と産学連携し、PBLを実施している!
・PBLでの経験が自身の変化と成長につながることを実感!
・参加した学生は、チームで取り組むことのやりがいや楽しさを知り、次への意欲が高まる!
・プレゼンテーションで企画提案した内容が、商品化されることも!

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