Interview

人の命や社会の安定を守る情報セキュリティ
深い専門性と広い視野で次代を築くプロフェッショナルへ

インタビュー

2022.04.11

インターネットの普及に伴い、暮らしが便利になりコミュニケーションが活発になる一方で、さまざまなリスクにさらされるようになった現代社会。ネット上でおこる事故や事件、悪意や犯罪から人々や社会を守るため、情報セキュリティが担う役割はますます大きくなっています。今回お話をうかがった吉浦裕先生は、データベースの暗号化やプライバシー保護、フェイクニュース対策などを長年研究してきた情報セキュリティのプロフェッショナル。2021年4月に開設した工学部情報工学科ならではの学びや情報セキュリティという技術分野の可能性についてインタビューしました。

工学部 情報工学科 吉浦 裕 教授
<専門分野>
情報セキュリティ(Information Security)/情報ネットワーク(Information Network)
<研究テーマ>
・ソーシャルメディアのプライバシー
・フェイクニュース対策
・ビッグデータの利用と保護
・秘密計算

※インタビューおよび撮影時のみマスクを外しています

Q/吉浦先生のご専門は情報セキュリティやネットワークセキュリティとありますが、具体的にはどんな研究をされているのか教えてください。

大きくふたつあって、ひとつがインターネットにおける「プライバシー保護」。個人情報の保護を含む安全・安心にネットを活用できる技術について、「保護」と「警鐘」の両面から研究しています。

「保護」の研究で行っているのは、「秘密計算」と「匿名化」の技術です。「秘密計算」はデータを暗号化したまま分析する技術で、たとえば個々人の年収を暗号化した状態で平均年収や高額所得者数などの統計を計算することが可能です。これによって、誰がいくらの年収を得ているかといった個人情報は秘密にしつつ、統計だけを開示しさまざまな分析に役立てることができます。「匿名化」は、データと個人とのつながりを分からなくする技術で、ビッグデータの利用における重要技術として個人情報保護法でも取り上げられています。

「警鐘」の研究では、SNSの匿名アカウントからユーザーを特定する技術や位置情報の履歴から個人を特定する技術を研究し、プライバシー漏洩への警鐘や匿名化の有効性評価と改善につなげます。

もうひとつのテーマが「フェイクニュース対策」で、こちらでは「検知」と「警鐘」の両面から研究を行っています。「検知」の研究では、SNS上のニュースの伝わり方から、それが本物やフェイクかを区別する技術を研究。一方「警鐘」の研究では、悪意を持った人物によるSNSアカウントの乗っ取りやなりすましによって、どれだけフェイクニュースを拡大できるかの危険性を分析し、対策につなげます。

Q/なぜ情報セキュリティを研究しようと思われたのか、きっかけや理由を教えてください。

一番のきっかけは今からおよそ25年前、インターネットの普及やテレビ放送・通信のデジタル化など情報化社会に向けて時代が大きく動き始め、それに伴ってさまざまなリスクやトラブルが発生し始めたことです。

たとえば、ネットショッピングが盛んになっていくと、店舗の信用性が追求されるようになり、テレビ放送や音楽が次々とデジタル化されていくなかでは、違法コピーのリスクが発生しました。2003年には個人情報保護法が施行されるなど、情報やネットワークにおけるセキュリティ技術の必要性が問われ始めたときでもありました。

そうした時代の流れをうけ、「インターネットの安全性やプライバシー、著作権保護が今後重要になるはず」と直感しました。数学を使って分析するなど自分が好きな技術分野でもあったことや、当時まだまだ未開の分野で先頭を切って走れる点にも魅力を感じましたね。
何より、当時の自分を突き動かしたのは、セキュリティは人の命や社会の安定にとって欠かせない技術であるということです。そこに大きな意義とやりがいを感じ、この道に進んでいきました。

Q/ ネット環境やITが進化するなかで、情報セキュリティのあり方はどう変わりましたか? また、将来に向け、どんな魅力や可能性を感じておられますか?

研究を始めた2000年頃のセキュリティといえば、暗号とコンピュータウイルスの研究がほとんどでした。あれからネットを取り巻く環境や人々の意識は大きく変わり、現在は、暗号とウィルスの研究だけでなく、個人情報保護を含むプライバシー保護が重要な社会課題となっています。その要因の最大の理由は、ビッグデータの発展にあるといえるでしょう

皆さんも、日頃ネット上でいろんなサービスを利用したり、買い物をしていると思いますが、使えば使うほどあなたがどんな商品に興味があり何を買ったかなど、パーソナルなデータが業者側に蓄積されていきます。そうして集積されたビッグデータは、より良いサービスや情報提供、社会の仕組みづくりなどに役立てられていくわけですが、IT技術が高度化・複雑化するに伴って、プライバシーを守るための技術も進化・発展が求められています。

そして、今後大きなテーマとして注目を集めているのが、AIのセキュリティです。

たとえば自動運転のAIはアルゴリズム※によって人を人と認識し運転を制御するわけですが、もし認識を誤ると、深刻な事故につながってしまいます。そこで行われるのが“AIを騙す研究”です。敢えてAIが誤認識するよう働きかけアルゴリズムの弱点を浮き彫りにし、警鐘を鳴らします。それによって、より精度の高い認知機能を実現していくというものです。そのほか、膨大な量の個人情報をサンプルに学習するAIの思考履歴をたどることで、元の個人情報が割り出されるというリスクをいかに回避するか、AIが人間の能力を超えるシンギュラリティ問題への対策など、やりがいのある研究テーマが山積みです。

いずれにせよ、技術の進化と、そこに派生するリスクから人や社会を守るセキュリティの進化は切っても切れない関係です。時代が進めば進むほど、セキュリティの役割や可能性はますます大きく広がっていくし、活躍の舞台もどんどん大きくなるでしょう。

※ある特定の問題を解いたり、課題を解決したりするための計算手順や処理手順のこと

Q/2021年4月よりスタートした工学部情報工学科では、どんな授業を担当されていますか?

2021年度は、1回生全員が受講する「情報セキュリティⅠ」や「プロジェクトマネジメントⅠ」を担当しました。「情報セキュリティⅠ」では、暗号の原理やコンピュータウィイルスについてなど、ネットワークやプライバシー保護に関する技術面での基礎知識とスキルを学んでいきます。そして、2022年4月から始まる2回生の「情報セキュリティⅡ」では、それら基礎を深掘りし、より詳細で高度なスキルを修得します。また、それ以外にも、「情報理論」や「科学技術と現代社会」などがあり、多彩な授業を通して実社会に通用する実践力をつけていきます。

開設して1年目は、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン授業を多く取り入れましたが、学生の皆さんの意欲が伝わってきて、確かな手応えが感じられましたね。なかには、私の研究室を訪れ、将来の進路や資格のこと、4年間の学びで必要なことなどを質問する学生もいたほどです。特に、セキュリティ分野では学生たちが他大学と横断的にチームをつくり、プログラミングコンテストのようなさまざまなコンペティションに参加する機会もあるのですが、そうした活動に参加するにはどんな準備が必要かなど、積極的な姿勢には目を見張るものがあります。2年目はどんな年になるのか、学生の皆さんとの学びがますます楽しみになっています。

将来、情報セキュリティのプロとして活躍するためには、深い専門性に加え、広い視野・教養がプラスになります。情報セキュリティとは、実は社会との関わりがとても深い技術。通信・ネットワークなど情報インフラの知識はもちろんのこと、そこからつながる通販ビジネスやSNS、企業サイトなどの仕組み、関連する法律など、幅広い分野を理解する能力があれば活躍の場が広がります。本学では、セキュリティ全体の仕組みづくりから関わりプロジェクトを動かす人材となる力を養成していきます。

Q/吉浦先生が思う、京都橘大学ならではの魅力を教えてください。また、本学での学びを通して、どんな人材に育ってほしいとお考えですか?

本学の魅力といえば、まず、新設学部として最先端機器や設備を備えた学習環境が挙げられます。なかでもアカデミックリンクス3階にある「イノベーションラボ」では、高性能の最新PCやプログラミングソフト、VR機器、撮影スタジオなど充実したワークスペースを完備しています。日頃から最新技術に触れることで、実社会で通用する発想力を養うことができます。

もうひとつの魅力としては、情報工学の基礎であるプログラミングをしっかりと教え、専門性を深めて知識や技術を身につける一方で、経済学部や経営学部、工学部建築デザイン学科とのクロスオーバー教育によって広い視野と教養を身につけられることです。解決すべき社会課題を見出し、深い専門性と高いスキルで解決策をつくりだしていく。そんなプロフェッショナルに育ってほしいと思っています。

Q/最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

高校生の皆さんに伝えたいのは、ぜひ大学での4年間を通して自分の好きな道を見つけ、将来は好きな仕事に打ち込んでほしいということです。

私は大学教員になる前に企業に勤めていたのですが、その時に感じたのは、自分が目的意識を持ち、自分自身で創り出していく仕事は、どんなに大変でも苦にならないほど楽しいということでした。

もちろん、そのためにはしっかりとした技術と知識、思考力や提案力といった能力が必要です。京都橘大学は、そんな社会で活躍するために必要な力を養える場。皆さんが自分の好きな道、夢中になれる何かを見つけ出せるよう、一緒に学んでいきましょう。

<ここがDISCOVERY!>

・吉浦先生は情報セキュリティの重要性に早くから着目し、長年研究を続けてきたその道のプロ!
・京都橘大学では、最先端のAI・ITの魅力に触れ、学べる、充実した環境が整っている!
・4年間でしっかりとしたプログラミングスキルを身につけ、技術者としての専門性を磨く!
・経済学部・経営学部・工学部建築デザイン学科とのクロスオーバー教育で、広い視野と教養を身につけられる!

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