リレーエッセイ「研究者のつぶやき」

京都橘大学総合研究センターでは、本学の研究活動状況やトピックスなどを広く一般に公開するため、2017年5月より「リレーエッセイ 研究者のつぶやき」をスタートしました。
このリレーエッセイでは、執筆者が次回執筆者を指名する数珠つなぎで、学部・学科を越えた輪を広げていっています。
テーマ設定はなし。研究テーマに関わるトピックスや情報、最近気になることなど、何でも自由につぶやいています。
「研究の話は難しい」と思っているあなた、コーヒー片手に気軽に”研究者のつぶやき”を聞いてみませんか。

第57回(2021年10月)
「イメージと語ろう」

大久保 恭子(児童教育学科教授)

20世紀フランス美術、ことにモダニズムにおいて巨匠と謳われたアンリ・マティスに長い間関わってきた。私の研究領域は西洋美術史と呼ばれる。ここで私の行っている研究を誤解を恐れずまとめれば、「イメージを言語化する」ということなのだが、問題は言語化するためのマニュアルが存在しないことである。加えて20世紀後半から21世紀に入って急速に分析対象がモノだけでなく、モノを通して発生する作用全般に拡大し、事態は複雑さを増すばかりである。とはいえ、作品と直に触れることは必須であるから美術展に足繫く通い、ときに収蔵庫で作品を独り占めすることもあり、この時ばかりは高揚感に包まれる。

2014年、ロンドンのテート・モダンでマティスの切り紙絵展が開催された。切り紙というと紙をまわしながら特定の形態を切り抜くことを思われるかもしれないが、マティスの場合は彩色済みの紙を切った切片を貼り合わせながら画面を構築する手法で、1947年以降は壁画サイズの作品が増える。それらが一堂に会した展覧会が開催されたのである。開館と同時に入場して会場を何巡かした時、奇妙なことに気がついた。会場には子ども連れの観客が何人もいたが、3、4歳くらいの女の子が一人、壁画サイズの《インコとシレーヌLa Perruche et la Sirène》(1952年)の前で踊っている。しばらくするとまた一人、別の子どもが満面の笑みでスキップしだす。他の展示作品の前では見られない光景である。この作品は、年を重ね歩行もままならなくなったマティスが自分のために作った「庭」である。植物が生い茂り生命力が横溢(おういつ)するこの作品の力が子どもを踊らせたのだ。なんと直観的な反応だろう。なんと見事に作品を理解していることか。こういうとき私は子どもの感性に脱帽する。

さて、子どもを羨んでばかりはいられない。私も作品と大いに語ろう。そして(つたな)い言葉を繰り出して言語化に挑むのである。

予告:次回は経済学科の 平井 健文先生です。お楽しみに!

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