地域問題に空間的側面からアプローチする

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情報・通信 ---------------------------- 2024-05 片岡 裕介 准教授 地域問題に空間的側面からアプローチする 工学部情報工学科 ■研究業績等 【論文】 ・学術論文「Analysisonaccessibilitytourbanfacilitiesusingtheflexibledistanceattenuationfunction」JapanArchitecturalReview3(3):375-383(単著):2020/07 ・学術論文「柔軟な距離減衰関数を用いた都市施設のアクセシビリティ分析」日本建築学会計画系論文集83(743):73-82(単著):2018/01 ・学術論文「住民までの距離に着目した都市施設の利便性評価-京都市山科区を対象として-」京都橘大学大学院文化政策学研究科研究論集(10):23-40(単著):2016/03 【学会発表】 ・施設間で利用交通手段が異なる状況での商業施設選択確率に関する分析(2019年度日本建築学会大会(北陸)学術講演会):2019/09 ・中学生の活発な身体活動に影響する近隣の環境特性(第80回日本民族衛生学会総会):2015/11 ・日常生活行動と関連する地域の物理的環境指標の開発-全国市区町村別自家用車所有台数との関連の検討-(第74回日本公衆衛生学会総会):2015/11 地域空間に存在する事象のなかには、人間の日常生活を脅かすものとして看過できないものが数多くあり、それらの抑止を支援するための分析ツールの開発をおこなっています。なかでも空間的な要因が大きいとされる健康危機に関わる問題を対象として、数理的な分析手法の開発、ならびに地理情報システムを用いた地図上での視覚化を主なテーマとしています。具体的には、心停止発生地点にもとづくAEDの最適配置、インフルエンザ流行の時間的・空間的な把握、身体活動促進に向けた地域環境評価、そして集計単位が不明瞭な患者報告数の母集団推定に関わる問題にこれまで取り組んできました。 非日常的に生じる危機事象の動態を把握するにあたっては、これまで分析に必要となる基礎的情報の整備が十分でなかった、そしてリアルタイムの情報の取得が困難であったなどの課題がありました。しかし、位置情報を含む大量で多様なデータの流通や活用が進む社会においては、迅速で適切な状況把握が一層求められます。 2009年に流行した新型インフルエンザを扱った分析では、小学校の児童欠席状況データを用いて、感染症の流行過程の把握を試みました。方法としては、対象地域の各校区の状況を考慮した流行のモデル化をおこなっています。この結果より、校区間の人々の移動量(図1)の増加に伴って、感染への影響がほぼ一定の割合で増加することなどが示されました。 また、AEDの適切な配置地点を求める問題では、まず過去の心停止発生地点を地図上にプロットし、そこから地域内でAEDの需要が高いとされる場所を推定しました。さらに、AEDからの距離で決まる救命確率と各地点の需要から、AEDによりどれだけの人が救命可能であるかを表す設置効 果を求め、それにもとづいてAEDの最適な配置地点を得ました。これより現状の装置の設置地点が、必ずしも潜在的に需要が高い場所や、設置効果が特に高い場所ではないことが確認できました(図2)。 地理情報システム、視覚化、空間情報、地域差