iPS細胞のがん形成阻止で安全な再生医療を目指す
ライフサイエンス
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2024-26
大澤 幸希光 専任講師
iPS細胞のがん形成阻止で安全な再生医療を目指す
健康科学部臨床検査学科
■研究業績等
【論文】
・学術論文「Morphologicalanalysisofliveundifferentiatedcellsderivedfrominducedpluripotentstemcells」StemCellsandDevelopment(共著):2018/01
・学術論文「Examinationofmorphologicaldifferencebetweenundifferentiatedcellsanddifferentiatedcellsderivedfrominducedpluripotentstemcells」PrimingBioMedicine(共著):2017/12
【学会発表】
・Liquidbasedcytologyにおける観察範囲の差異が細胞判定に与える影響の解析(第62回日本臨床細胞学会総会(春期大会)):2021/06
・子宮体癌幹細胞におけるカドヘリンの意義(第62回日本臨床細胞学会総会(春期大会)):2021/06
・子宮頸部細胞診におけるディープラーニングのアルゴリズムの検討(第62回日本臨床細胞学会総会(春期大会)):2021/06
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、身体を構成する様々な細胞へ分化(変化)することが出来ます。したがって、その性質を利用し失われた臓器や組織を再生する、再生医療への応用が期待されています。しかしながら、iPS細胞は生体に移植すると奇形腫と呼ばれる腫瘍を形成し、それらが悪性腫瘍(がん)であることが明らかとなっています。その解決法として、iPS細胞を目的の細胞種へと分化させたのちに移植することが考えられていますが、細胞種中に奇形腫を形成する細胞(未分化細胞)が混入することが問題となっています。これらの背景から、それら未分化細胞を検出する様々な方法が検討されています。
本研究では形態学的手法による非侵襲的な検出法を検討しており、現在急速に発展している人工知能(AI)による画像認識技術との組み合わせにより、迅速で正確な未分化細胞の検出を目指しています。形態学的手法による非侵襲的な未分化細胞の検出・除去が可能となればiPS細胞を用いた安全な再生医療の一助になると示唆されます。
iPS細胞を用いる再生医療は生体移植後のがん形成が問題であり、その原因は分化誘導後の残存未分化細胞と示唆されています。そのため薬剤や遺伝子操作などで未分化細胞を除去するといった方法が提案されていますが、ヒトへの細胞移植治療を想定したとき、薬剤や遺伝子操作を用いることによる安全性が懸念されます。
本研究では、細胞や人体に最も侵襲性の低い未染色および生存状態における細胞形態を解析しており、これまでも未分化細胞マーカーを発現する細胞の形態を明らかとしています(OsawaY,etal.StemCellsDev.2018)。今後はさらに未分化細胞の詳細を明らかとし、それらのデータを画像認識AIに学習させ、細胞集団中からを迅速かつ正確な未分化細胞検出を目指します。
iPS細胞、再生医療、がん化、人工知能
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