難病である炎症性腸疾患に対して新たな臨床検査法を構築する
ライフサイエンス
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2024-27
岡田 光貴 准教授
難病である炎症性腸疾患に対して新たな臨床検査法を構築する
健康科学部臨床検査学科
■研究業績等
【論文】
・その他論文「炎症性腸疾患の重症度判定に貢献する臨床検査法の発展」臨床化学51(2):151-152(単著):2022/04
・学術論文「CarbonicAnhydraseIIIHasPotentialasaBiomarkerforExperimentalColitisandFunctionsasanImmuneRegulatorbyInhibitingInflammatoryCytokineSecretion」biologyMDPI11(4):494(共著):2022/03
・学術論文「Anewhybridproteinisanovelregulatorforexperimentalcolitisinrats」Inflammation45(1):180-195(共著):2022/02
【学会発表】
・炎症性腸疾患における生体内変動タンパク質の重症度判定マーカーとしての性能評価(第31・32回生物試料分析科学会合同年次学術集会):2022/03/13
・ラット大腸炎に対する組換えペプチドhMIKO-1の薬理効果(第68回日本臨床検査医学会学術集会):2021/11/13
・マクロファージにおける3型炭酸脱水酵素の免疫抑制機構に関する基礎的検討(第61回日本臨床化学会年次学術集会):2021/11/05
潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)は、大腸組織を中心に炎症が生じる、厚生労働省指定の難病です。日本では現在その患者数が20万人を超え、さらに年々増加傾向にあります。近年では特に、本疾患による炎症の増悪を契機とした大腸癌の発症例が多く報告され、問題視されています。
IBDの発症及び悪化の原因として腸管内の抗原に対する各種免疫細胞の過剰応答が考えられています(図1)。しかし、この抗原に関する報告が少なく、不確定要素の多いことが本疾患の早期発見のための臨床検査法や治療法の開発を遅らせて
います。大腸内視鏡検査は直接患部を観察できる点で、本疾患の検出と病態の把握に有用です。しかし、患者への身体的・精神的な負担が大きく、頻繁に実施できるものではありません。そこで、本研究では、IBDにおいて特に大腸組織中で変動するタンパク質や遺伝子を詳細に解析し、そこから新たなバイオマーカーの発掘とその測定系の開発、免疫学的役割の解明、及び新規治療法の考案を目的とし
ています。図1.大腸組織におけるIBDの発症及び悪化メカニズム
私達はこれまでに、IBD患者の血清中S100A8/A9タンパク質の濃度測定がUCの重症度判定に有用であることを報告しました(OkadaK,etal.LabMed,2019)。一方で、本タンパク質は特異性が低く、IBD以外の疾患でもその血清中濃度が上昇することが報告されています。そこで、我々はS100A8/A9以外で、IBDの病態把握に有用な新規バイオマーカーの発掘とそれに伴う新しい検査法の構築が不可欠であると考えました。
現在はUCモデルラット(UCR)やIBD患者の血清、尿、糞便、及び大腸の病理組織スライド標本を対象として、そこから炎症時における新たなバイオマーカー候補タンパク質の検出に取り組んでいます(図2)。特に今後は、健常人とIBD患者の血清中や、UCRと正常ラットの大腸組織中における変動タンパク質を詳細に解析し比較する事で、IBDに特異的なマーカーの探索を行う予定です。
炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、 バイオマーカー、S100A8/A9
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