胎生期の記憶が与える成人期以降のリスクファクターを探る
ライフサイエンス
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2024-29
木村 智子 准教授
胎生期の記憶が与える成人期以降のリスクファクターを探る
健康科学部理学療法学科
■研究業績等
【著書】
・著書『PT・OT入門イラストでわかる内部障害』医歯薬出版(共著):2020/01
・著書『シンプル理学療法学シリーズ義肢装具学テキスト改訂第3版』南江堂(共著):2018/01
【論文】
・学術論文「Correlationbetweenmusculoskeletalstructureofthehandandprimatelocomotion:Morphometricandmechanicalanalysisinprehensionusingthecross-andtriple-ratios」PLOSONE15(5):e0232397(共著):2020/05
・学術論文「PostweaningIronDeficiencyinMaleRatsLeadstoLong-TermHyperactivityandDecreasedReelinGeneExpressionintheNucleusAccumbens」TheJournalofNutrition150(2):212-221(共著):2020/02
・学術論文「ChangeinBrainPlasmalogenCompositionbyExposuretoPrenatalUndernutritionLeadstoBehavioralImpairmentofRats.」JNeurosci.39(39):7689-7702(共著):2019/09
【学会発表】
・脳内リン脂質構成変化とラットの行動との関連(第8回日本DOHaD研究会学術集会):2019/08
・妊娠中の低栄養ストレスは母乳成分の変化をもたらす(第7回日本DOHaD研究会学術集会):2018/08
・胎生初期低栄養曝露による閉経モデルラットは非アルコール性脂肪性肝疾患を呈する(第7回日本DOHaD研究会学術集会):2018/08
近年、生活習慣の欧米化に伴いメタボリック症候群が急増しており、この基盤病態が「燻ったような非常に低いレベルの慢性炎症」であると注目されています。また、この症候群による医療費増大も社会的問題となっています。一方、感受期(胎児期~発達期)に曝される環境因子が、成長後の健康状態や種々の疾病発症リスクに影響を及ぼすというDOHaD概念があり、胎生期に低栄養ストレスに曝されると成人後にメタボリック症候群をはじめ、骨粗鬆症やサルコペニアなどロコモーティブ症候群の罹患率上昇が疫学調査や動物実験により示唆されています。
日本では、妊娠可能年齢層の無理なダイエットによる「やせ」傾向が強く、現在BMI18.5以下の20歳代女性は20%を超え、低出生体重児出産リスクが高まっています(低出生体重児の比率約10%)。従って、今後は低出生体重児の成人期以降における非感染性慢性疾患発症頻度は上昇し、これまでの医療では対応できない状況に陥る可能性が予測されます。
本研究では、胎生初期の低栄養ストレス曝露により、成人期以降に引き起こされる種々の生体反応を解明することで、今後の臨床活動への糸口を見出すことを目指しています。
これまでラットを用いた実験によって、器官形成期直前までの「胎生ごく初期」の低栄養曝露が、生後に行動異常を引き起こすことや後肢骨成長障害を引き起こすことなどを明らかにしてきました。さらに、胎生初期低栄養で閉経(卵巣摘出)を迎えると、変形性関節症や骨粗鬆症、高度肥満、脂肪肝などの発症リスクも上昇することが分かってきました。このような現象は、初期胚への低栄養ストレスが幹細胞に対し形態や機能の恒久的変化をもたらすようなエピゲノムの変化(修飾)を引き起こすという「胎児プログラミング」の発動によるものと考えます。そこで、これら背景にあるものを明らかにするとともに、エピゲノムに挑む環境要因を提供することを含めたアプローチの開発を目指しています。
生活習慣病、メタボリック症候群、DOHaD、胎児プログラミング
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