食材や生体試料から自然毒を正確に検出・測定する

ライフサイエンス ---------------------------- 2024-28 岡田 光貴 准教授 食材や生体試料から自然毒を正確に検出・測定する 健康科学部臨床検査学科 ■研究業績等 【論文】 ・学術論文「フグ毒テトロドトキシンに対する新規ELISA測定系の構築」医学検査71(1):1-9(共著):2022/01 ・学術論文「高速液体クロマトグラフィーによる毒キノコ成分α-アマニチンの検出と定量に関する検討」生物試料分析44(4):120-130:2021/10 ・学術論文「毒キノコ成分α-アマニチンに対する新規ELISA測定系の構築」生物試料分析44(1):34-44:2021/03 【学会発表】 ・毒キノコ成分α-アマニチンの検出および定量に関する基礎的検討(第71回日本医学検査学会in大阪):2022/05/22 ・陰イオン交換クロマトグラフィーを活用したフグ毒テトロドトキシン測定系の構築(第71回日本医学検査学会in大阪):2022/05/21 ・フグ毒テトロドトキシンに対する新たな測定系の構築と性能評価(第31・32回生物試料分析科学会合同年次学術集会):2022/03/13 日本では現代においても、食材中に含まれる自然毒を原因とした食中毒が数多く発生しています。現在、自然毒に対する臨床検査法は無く、現場では患者やその家族の聴取と症状から推察し、何が食中毒の原因であるか診断せざるを得ません。この事は誤診や対応の遅れに直結するため、対策が急務です。そこで、自然毒が原因である食中毒について、毒成分の同定と患者の病期(初期、重症期、完治など)の判定に有用な検査法の樹立が必要と考えました。 本研究を通じて樹立した食中毒患者の毒成分の検出・定量法は、食材の安全保証につながる食品安全検査にも応用が可能であり、その関連業界への需要も見込まれます。食中毒患者に対して臨床検査が介入することは稀であるため、これまでに国内外の研究で類例はなく、既存の診療や食品安全検査を変える可能性を秘めております。 本研究は、臨床検査技術を応用し、食材や生体試料に含まれる代表的な自然毒成分の検出・定量法の樹立を目的としています。具体的には、高速液体クロマトグラフィー、イムノクロマト法、および酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)による自然毒測定系の構築に取り組んでいます。さらに各手法の精度評価を実施し、自然毒の検査に最適な手法を提案することを目標としています。なお、最近では、毒キノコとして有名なドクツルタケ(図1)に含まれる自然毒α-アマニチン(AMA)の検出に有用なELISAの構築に成功しております。このELISAにより、毒キノコの成分抽出液や生体試料(尿と血清)内に含まれるAMAの正確な測定が可能となりました。 現在は、近年の食中毒発生が多い動物性自然毒であるテトロドキシン(フグ毒)やシガトキシン(藻類&魚類毒)、植物性自然毒では、ジャガイモの芽や皮に含まれるα-ソラニンおよびα-チャコニンの検査法の開発を目指し、日々の実験に取り組んでおります。本研究は将来的に、臨床検査法や食品安全キットとしての応用や製品化に繋がることが期待されます。 自然毒、食中毒、 臨床検査