気候変動問題への対処の鍵となる「金融の仕組み」とは
経済・経営
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2024-76
矢口 満 教授
気候変動問題への対処の鍵となる「金融の仕組み」とは
経済学部 経済学科
■ 研究業績等
【論文】
・学術論文「進展するインドネシアのサステナブルファイナンス.グリーンフィンテックの活用が今後の鍵に.」月刊資本市場公益財団法人資本市場研究会(466):42-52(単著): 2024/06
・学術論文「今秋にも導入される EUの炭素国境調整措置.対象品目の拡張をにらみ日本でも実務面の対応が課題に.」月刊資本市場公益財団法人資本市場研究会(453):42-52(単著):2023/05
・学術論文「国際的な議論を呼ぶ EUの国境炭素調整措置.日本でも議論参加に向けて炭素排出量の計測などが課題に.」月刊資本市場公益財団法人資本市場研究会(434):pp.47.55(単著):2021/10
【学会発表】
・国際収支の発展段階説に関する報告に対するコメント(日本金融学会2023年度秋季大会):2023/09/30
・国際収支マニュアル改訂の検討状況に関する報告へのコメント(日本金融学会 2020年度秋季大会):2020/11/01
・暗号資産の国際収支統計への反映に関するコメント(日本金融学会 2019年度秋季大会):2019/10/19
持続可能な開発目標(SDGs)の制定やパリ協定(注)の採択を受けて、持続可能な社会の構築が大きな課題となりました。そうした中で、新たな産業・社会構造への転換を促し、持続可能な社会の実現を金融面から支える「サステナブルファイナンス」が不可欠となっています。特に、2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ化)を実現するには巨額の資金が必要なことから、金融資本市場に大きな期待が寄せられています。 サステナブルファイナンスを推進するために、グリーンボンドなど様々な「仕組み」がありますが、その中でも私が注目しているのは、①企業の排出する炭素に価格を付け、排出者に経済的負担を求める「カーボンプライシング」、および②フィンテック(金融サービスと情報技術の融合)の強みを活かして気候変動問題に取り組む「グリーンフィンテック」、という 2つです。 (注)2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された国際的な枠組み
「カーボンプライシング」と「グリーンフィンテック」のそれぞれについて、以下のような研究事例がございます。 「カーボンプライシング」の手法の一つに排出量取引があり、欧州連合(EU)では域内事業者に適用しています。ところが、域外事業者は同種の負担が相対的に小さいため、競争条件を平準化する必要が出てきました。そこで EUは炭素国境調整措置(CBAM)というメカニズムを導入しましたが、これ自体がもたらす新たな課題について研究しています。 CBAMは EU域外国に対して事実上、EU域内と同等の「カーボンプライシング」を求める措置です。このため新興国も炭素税や排出量取引を導入しつつありますが、そこでネックとなるのが、そもそも新興国の中堅・中小企業が自社の温室効果ガス排出量を計測していないことです。こうしたなかで注目されるのが上述の「グリーンフィンテック」です。金融面のインセンティブを付けることで、環境関連技術を一気に普及させることが可能となります。私は東南アジア(特にインドネシア)の現状につき研究しています。
「サステナブルファイナンス」は実務が先行し、学術的な研究・分析が十分に追い付いていない部分のある分野です。私は民間金融機関出身の大学教員として、その狭間を埋めるような、分かりやすい説明を得意としています。
SDGs、ESG、サステナビリティ、温暖化、気候変動、グリーンフィンテック
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