女性の自立と社会的役割

人文・歴史・教育 ---------------------------- 2023-73 野村 倫子 教授 女性の自立と社会的役割 文学部日本語日本文学科 ■研究業績等 【著書】 ・著書『『源氏物語』宇治十帖の展開と継承ー女君流離の物語』和泉書院(単著):2011/05 ・事典・辞書『京都府謎解き散歩(新人物文庫)』新人物往来社(共著):2012/03 ・事典・辞書『源氏物語大辞典』角川学芸出版(共著):2011/02 【論文】 ・学術論文「『思はぬ方に泊まりする少将』を読むー「宇治十帖」を基点にー」堤中納言物語の新世界(知の遺産シリーズ4)武蔵野書院149-169(単著):2017/03 ・学術論文「「斜行」する「形見」たち」狭衣物語文学の斜行翰林書院140-158(単著):2017/05 ・学術論文「狭衣と飛鳥井君-その娘の行方まで」知の遺産シリーズ6『狭衣物語の新世界』武蔵野書院(単著):2019/02 『源氏物語』は貴族社会を中心とした物語ですが、「宇治十帖」になると、下級の官人や国司を中心とした地方の人々の活躍の様子が描かれています。正編のような男君と女君だけでは物語世界が動かなくなっているのです。その『源氏物語』の影響下にある『狭衣物語』は、皇族を中心とした男女模様の中に、1人異質ともいえる中納言の娘が介入してくることによって、物語世界は大きく動いていきます。「宇治十帖」では母親の身分によって差異化され、権門貴族の社会からははじかれるような存在であった女性が、『狭衣物語』では生母の身分を隠して皇女になるにいたります。このような社会制度を覆す物語のメカニズムは、時代を読むものであり、また現代とも無縁ではないと考えます。また、『源氏物語』の「宇治十帖」の継承ともいうべき諸例を後世の物語から収取し、物語の女房達の活躍をあとづけていくことで、女主人と女房の双方が時代に応じて変遷していく過程がより明確になると推測されます。 『源氏物語』はともかく、『狭衣物語』についてはまだまだ知られていない面が多く、物語世界内の話だけでは説得力が弱いと考えられます。したがって、当時の社会ではどうであったのか、歴史的な面からの考察を行ないます。すでに、藤原道長の時代に権門貴族の女性が女房として出仕した例や、後見の弱い母后について論文を発表していますが、さらに実例を探求していく予定です。 女院・后、女房、貴種流離、身分、平安京と地方