サーモグラフィと環境センサを組み合わせた非接触な深部体温推定

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情報・通信 ---------------------------- 2024-10 工藤 寛樹 助教 サーモグラフィと環境センサを組み合わせた非接触な深部体温推定 工学部情報工学科 ■研究業績等 【著書】 ・著書『生体センシング技術開発の現状と研究開発のポイント』情報機構(共著):2024/02 【論文】 ・学術論文「Reliability Estimation and Filtering of Heart Rate Measurement Using Inertial Sensor during Exercise」Sensors and Materials MYU K.K. 34(8):2985-2999(共著):2022/08 ・学術論文「TSVNet: Combining Time-Series and Opportunistic Sensing by Transfer Learning for Dynamic Thermal Sensation Estimation」IEEE Access IEEE 9:102835-102846(共著):2021/07 ・学術論文「ThermalWrist: Smartphone Thermal Camera Correction Using a Wristband Sensor」Sensors MDPI 19(18):3826(共著):2019/09 【学会発表】 ・アバターとの会話から適切な運動を促す健康支援システムの開発(第32回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS 2024)):2024/10 ・排尿支援予測機器を使用した予備調査から見えてきた課題〜個人のタイミングに合わせた排尿誘導を病院で実現するモデル構築に向けて〜(ヒューマンインタフェースシンポジウム2024):2024/09 ・新生児熱画像セグメンテーションモデルの異種環境適用に向けた転移学習の検討(情報処理学会MBL研究会第111回研究発表会):2024/05 本研究は、サーモグラフィを活用した非接触型の深部体温推定手法に関するものです。運動中の深部体温は、体調管理やパフォーマンス解析において非常に重要な指標となりますが、従来の深部体温測定は侵襲性が高く、連続的な測定が困難であるという課題がありました。特に運動中にリアルタイムで深部体温を計測することは難しく、複数の人々を対象にした低コストで実用的な手法の必要性が高まっていました。本研究では、サーモグラフィによって取得した顔の体表温度と、気温や湿度などの環境情報を組み合わせた機械学習モデルを用いて、複数の対象者に対する深部体温の推定を試みました。これにより、非接触かつ低コストで運動中の深部体温を推定することが可能となります。評価実験では、トレッドミル走行中のデータを基に、サーモグラフィのみを用いた推定精度を検証し、ウェアラブルデバイスを使用した場合と比較しても、推定誤差の増加を7.9%に抑えられることを確認しました。 本研究では、サーモグラフィと環境センサから取得したデータを使用し、深部体温推定モデルを機械学習に基づいて構築しました。提案手法では、サーモグラフィを用いて顔付近の体表温度分布を取得し、それを気温や湿度などの環境情報と組み合わせ、深部体温を推定するための入力データとして使用します。これにより、従来の侵襲的な測定手法とは異なり、非接触での推定が可能となります。実際の評価実験として、被験者がトレッドミルで30分間ランニングを行う際のデータを収集し、機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレストおよびニューラルネットワークを使用して、推定モデルの性能を比較しました。その結果、サーモグラフィのみを使用した場合でも、平均絶対誤差が0.41°Cとなり、ウェアラブルデバイスを併用した場合と比べても、推定精度の大きな悪化は見られませんでした。特に、運動時に深部体温を正確に推定できる非接触型の手法として、本提案手法の有効性が示されました。今後の課題としては、個人差や運動量の変動など、時系列的なデータを考慮した推定モデルの精度向上が必要であり、さらなる研究が求められます。 ユビキタスコンピューティング、バイタルセンシング