こんなところに薬剤耐性菌!?-ヒト・動物・自然環境-
健康科学・医療
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2024-36
藤原 麻有 専任講師
こんなところに薬剤耐性菌!?-ヒト・動物・自然環境-
健康科学部臨床検査学科
■研究業績等
【論文】
・学術論文「NG-TestCARBA5を用いたカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌検出の有用性」日本臨床検査医学会誌日本臨床検査医学会69(9):649-653(共著):2021/09
・学術論文「クロモアガーmSuperCARBAを用いたカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌スクリーニングに関する検討」医学検査68(1):110-116(共著):2019/01
・学術論文「βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の薬剤感受性検査におけるDPS192ixの有用性」日本臨床微生物学雑誌28(2):112-118(共著):2018/03
【学会発表】
・京都府内の河川における基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生Escherichiacoliの検出(第60回日臨技近畿支部医学検査学会):2021/11/27
・自然環境から分離されたPseudomonasotitidisの解析(第32回日本臨床微生物学会総会・学術集会):2021/01/30
・全自動遺伝子解析装置GENECUBEを用いたOXA-1型βラクタマーゼ産生遺伝子検出法の開発(第32回日本臨床微生物学会総会・学術集会):2021/01/30
近年、抗生物質が効かない、いわゆる薬剤耐性菌が世界的に増加傾向にあり、ヒトからだけでなく、家畜や自然環境からも検出されています。海外の報告では、特定の薬剤耐性をもつST131型基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌が、動物や都市部の河川から検出されており、世界的流行株として問題視されています。こうした背景から、薬剤耐性菌問題の解決に向けては、ヒトに対する医療のみならず、獣医療、食品衛生、環境を含め
全体(ワンヘルス)をふまえたアプローチが重要であると考えられています。国内では、ヒトや動物に対する薬剤耐性菌の動向調査は広く行われていますが、自然環境を含めたワンヘルスに基づく網羅的解析は進んでいないのが現状です。本研究では、自然環境(河川など)からヒトに感染リスクのある細菌を分離し、薬剤耐性の有無、ヒトと自然環境から分離される菌株との関連性を明らかにすることを目的とします。
自然環境から薬剤耐性菌が検出される原因としては、医療施設からの排水に留まらず、生活排水や生息する動物による媒介などが挙げられます。特に都市部ではヒトの流入も多く、海外から持ち込まれるケースもあり、自然環境中の細菌分布に影響を与える要因は様々です。しかしながら、その関連性については未だ明らかな見識が得られていません。この研究では、大腸菌をはじめ特に院内感染の原因として問題となっているグラム陰性桿菌に焦点を当て、周辺地域における自然環境中の薬剤耐性菌の存在を調査します。薬剤耐性菌が検出された場合は、ヒトや動物から分離される菌株との相同性・関連性を遺伝子レベルで解析します。このような遺伝子学的解析から伝播ルートの一部解明に貢献でき、ヒトへの影響の程度を予測することが可能となります。
環境、薬剤耐性菌、ワンヘルス、医療
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