自分の中の「攻撃性」との出会いは「新たな自分」との出会いに繋がります。

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心理 ---------------------------- 2024-51 ジェイムス 朋子 准教授 自分の中の「攻撃性」との出会いは「新たな自分」との出会いに繋がります。 総合心理学部総合心理学科 ■研究業績等 【著書】 ・著書『臨床心理学と心理的支援を基本から学ぶ』北大路書房(共著):2021/09 ・著書『心理面接‐安全空間創成の対話法-モノグラフ2号(章執筆;刑務官と応答構成)』国際基督教大学高等臨床心理学研究所(共著):2013/03 ・著書『心的安全空間-「人間の安全保障」の基盤-モノグラフ1号』国際基督教大学高等臨床心理学研究所(共著):2011/11 【論文】 ・学術論文「集団精神療法の導入過程における夢の語りの治療的意味-性犯罪者を対象とする集団精神療法において見られた陰性治療反応プロセスの検討から-」京都橘大学心理臨床センター心理相談研究(7)(共著):2022/02 ・学術論文「薬物依存症者の短期限定力動的集団精神療法における有効性の検討-薬物依存に対する自己効力感の変化から―」京都橘大学心理臨床センター心理相談研究6(単著):2020/03 ・その他論文「薬物依存症者に対する短期力動的集団精神療法の成果」犯罪心理学研究日本犯罪心理学会56(特別号):84-85(共著):2019/03 【学会発表】 ・性犯罪者を対象とするプレ集団療法のプロセスの検討-夢の語りに見られた自由連想的発話空間の意味-(第37回日本集団精神療法学会):2020/03/21 ・薬物依存症者に対する短期力動的集団精神療法の成果(第56回日本犯罪心理学会):2018/12/09 ・誰にも話せなかったことが語られるプロセスの検討―再犯防止を目的とした刑務所における短期力動的集団精神療法事例から―(第56回日本犯罪心理学会):2018/12/09 複雑化した人間関係や仕事、未曽有の災害や日常生活を一変させたパンデミックなど、現代はストレスに尽きません。ストレスは危機に対応するための反応を人に引き起こし、緊張状態を作りだします。「闘争逃避」と言われる状態です。しかし、この「闘争逃避」ではなかなか対応できなくなった現代、私たちは「攻撃性」の衝動・欲求をうまく取り扱いかねていると考えます。  IT やAI は、人の身体感覚を大きく超えた社会空間を作り出すため、この傾向はますます加速するかもしれません。圧縮されたり解離されて、言語化されないままの潜在的な「攻撃性」は、鬱や漠然とした不安、自尊心の低下をもたらしたり、突然の自暴自棄な言動や反社会的行動に人を駆り立てたりします。さらには、愛情に関わる人の心の基本的な機能を阻害することもあり、これがますますストレスを引き起こすスパイラルを生じさせます。  そこで、回避したり発散させたりするのではなく、ストレスと向き合うこと、心の機能の育て直し・鍛え直しの機会とし、特に「攻撃性」に焦点を当てて、臨床心理学や精神分析学、集団力動学、システムズ理論などの知見に基づいた集団精神療法プログラムの開発・実践を行っています。 プログラムの基本は、潜在した衝動や欲求を丁寧に言語化していくこと、それを安全な空間で、他者との協同作業において行うことです。「攻撃性」は自分の頭の中で認知的に言語化するだけではそのプロセスに歪みが生じかねません。他者との間で「攻撃性」のエネルギーを交わし味わう体験をしながら情報化することで、自分独自の「攻撃性」の特性や自身の取り扱いの特徴、そのルーツなどを探求し、新たな感覚や取り扱いを模索することができます。そのため、それらを可能にする構造、すなわち、集団サイズや、メンバー構成、専門家チーム構成、時間設定や空間設定、基本ルールの設定や目標設定などの丁寧な設計が重要になります。  これまで、「疾風怒濤」と言われる青年期のキレ反応の予防、引きこもりや、依存症からの回復、犯罪被害者や被虐体験者の方々のPTSD 予防と治療、罪を犯した人々の再犯防止など、「攻撃性」に関わる心の機能の育て直しや治療を目的とした集団精神療法プログラムの開発を行い、高校や大学などの教育機関、医療機関、司法矯正機関との連携において実践・成果研究に取り組んできました。 他者との自然な「自分語り」を通じて「攻撃性」に関わる人格機能 調整を行う臨床心理学的プログラムを、対象となる方々や状況に応 じて開発・実践・研究しています。 攻撃性、集団精神療法プログラム、予防と治療