人は他者の表情をどのように読み取っているのか

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心理 ---------------------------- 2024-52 柴田 利男 教授 人は他者の表情をどのように読み取っているのか 総合心理学部総合心理学科 ■研究業績等 【著書】 ・著書『心理学概論[第2版]』ナカニシヤ出版(共著):2014/04 ・著書『青年期以降の発達心理学-自分らしく生き、老いるために-』北大路書房(共著):2009/08 ・事典・辞書『発達心理学用語集』同文書院(共著):2006/04 【論文】 ・学術論文「児童の学校不適応感とself-controlおよび情緒性との関連性」北星学園大学社会福祉学部北星論集(53):195-206(単著):2016/03 ・学術論文「幼児の対人葛藤場面における敵意の認知と解決方略」北星学園大学社会福祉学部北星論集(51):43-50(単著):2014/03 ・学術論文「無表情の感情価-既知の人物に対する表情認知-」北星学園大学社会福祉学部北星論集(50):75-82(単著):2013/03 【学会発表】 ・情動コンピテンスの個人差(日本感情心理学会27回大会):2019/06/30 ・感情特性の個人差(日本感情心理学会第26回大会):2018/11/10 ・友人との関係性が感情表出の制御に与える影響(日本教育心理学会第60回総会):2018/09/15 Russell らの一連の研究では、表情の認知構造は「快-不快」・「覚醒度」という2 次元から構成されており、文化的にも発達的にも、その構造は同一であると主張されています。この考え方について日本の幼児を対象に検証した結果、2 次元構造に関しては文化的・発達的に同じであると考えることが出来ますが、個々の表情の配列に関しては、被験者の日常的な感情コミュニケーションの形態によって変化する可能性が高いことがわかりました。またプロトタイプ表情とモーフィング表情を用いた研究によれば、幼児の場合は質の異なる表情刺激に対して、それぞれ独立に2 次元の認知構造が適用されており、発達に伴って1 元化されていくという推測が成り立ちました。一方、大学生を対象とした無表情を含む表情写真を用いた研究では、各表情は幼児と同様にほぼ円環に近い布置となりました。無表情は、男性では「快・やや不活性」、女性では「やや不快・活性」に近い位置に配置されました。すなわち無表情とは"neutral" な表情ではなく、その認知には性差が存在することが示唆されました。 従来の表情認知研究では、表情自体に生物学的進化論的な基礎があるため、その認知構造も人類に共通のメカニズムが生得的に備わっているという考え方が基本として存在していました。本研究においても大人でも子どもでも基本的には2 次元の表情認知構造が認められ、ある程度は生得的な認知構造であるということが出来ます。しかしながら必ずしも同じ表情に対して常に同じ認知・解釈が成立するわけではなさそうです。おそらくそこには人ぞれぞれの普段の感情コミュニケーションの形態による意味づけの違い、また他者との親密度の違いによる何らかの解釈のブレのようなものが発生していると思われます。今後の研究では、そのような日常的なコミュニケーションという文脈の中で、いかにして表情が読み取られているのか検討していきたいと考えています。 ・生物学的-心理学的-社会的な表情認知構造の探求 ・コミュニケーション障害に対する介入可能性を考えるための基礎研究40 表情認知、認知次元、無表情の感情価