男女共同参画社会を目指すための、男性のジェンダー意識変革
心理
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2024-53
濱田 智崇 准教授
男女共同参画社会を目指すための、男性のジェンダー意識変革
総合心理学部総合心理学科
■研究業績等
【著書】
・教科書『心理学概論-こころの理解を社会へつなげる』ナカニシヤ出版(共著):2018/10
・著書『男性は何をどう悩むのか-男性専用相談窓口から見る心理と支援』ミネルヴァ書房(編者(編著者)):2018/03
・著書『働くママと子どもの"ほどよい距離"のとり方』柘植書房新社(共著):2016/07
【論文】
・学術論文「子育て環境と子どもに対する意識調査(草津市版)結果報告」京都橘大学心理臨床センター(3):35-56(単著):2017/03
・学術論文「京都橘大学心理臨床センターにおける子育て支援と男性を対象とする臨床心理学的子育て支援プログラムの開発に向けて」心理相談研究京都橘大学心理臨床センター(2):43-48(単著):2016/03
・学術論文「コントロールすることによりコントロールから抜け出そうとする試みー統合失調症水準の不安を抱える女性の事例からー」心理相談研究京都橘大学心理臨床センター(創刊号):73-80(単著):2015/01
社会に根強く残る固定的性別役割意識の変革は、男女共同参画が共通認識となってきた現代においても、日本全体が抱える大きな課題と言えます。これまで女性の視点に立った変革は多く検討されてきましたが、男性視点で変革に取り組む事例や研究は多くありませんでした。男女共同参画の達成には、女性のみならず男性が持つジェンダー意識の変革は必須であり、また固定的性別役割意識から脱するために、子育てやワークライフバランスへの支援の必要性があると考えまし。これらの点に着目して、これまで以下のような実践を重ねてきました。
1995 年には日本初の男性による男性のための相談電話"『男』悩みホットライン" を開設し、それを足掛かりとして全国各地の自治体における、男性のための相談窓口の開設・運営を進めました。さらに、一般男性を対象とするストレス対応やコミュニケーションに関する講、および自治体の相談員に対する専門研修の実施をとおして、男性のジェンダー意識の変革を目指してきました。
さらに、男性相談の実践活動をベースとし、乳幼児を持つ父親の語り場の開催や、草津市における保護者に対する意識調査(対象:保育所・幼稚園に子どもが在籍する草津市内全世帯)などを行いました。
1)研究成果(出版物)
『男性は何をどう悩むのか-男性専用相談窓口から見る心理と支援』濱田智崇・『男』悩みのホットライン編 2018 年 ミネルヴァ書房2)草津市での意識調査結果と今後の展開 2015 年に本学の提携先である草津市の社会実験推進事業とし、保護者対象の質問紙調査「子育て環境と子どもに対する意識調査(草津市版)」を実施しました。市内の幼稚園・保育所に子どもを通わせている全世帯に配布し、2086 世帯(父親1356 名、母親2075 名)から回答を得ました。本調査は、子育てに関して現実的状況に留まらず、感情を詳しく尋ねている点、父親と母親に同時に同じ質問紙へ回答させている点が、これまでの調査にない特徴です。
調査の結果、母親の物理的・心理的負担が大きいこと、父親はもっと子どもと関わりたいと望んでいるにも関わらず、仕事のためそれができていないことなどが明らかとなりました。また、父親の80%が「母親にはかなわない」と考える一方で、90%が「子育てに父親はなくてはならない」と考えており、過去に神戸市東灘区を対象として実施した調査結果とも一致しています。
理想の父親像を尋ねても、回答にばらつきは大きく、画一的な「父親像」から解放されて多様化が進んでいると考えられる一方で、モデルを失ったがゆえに「迷っている」現代の父親像が浮かび上がりました。
今後、これまでの実践および研究の成果を統合して、子育てやワークライフバランスに寄与する男性のための心理教育プログラムの開発を進めていきます。
臨床心理学において男性のジェンダーに着目した数少ない実践・研究
男性相談、ジェンダー、男女共同参画、子育て支援、メンタルヘルス
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