公平で効率的な教育費負担のシステム
経済・経営
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2024-66
阪本 崇 教授
公平で効率的な教育費負担のシステム
経済学部経済学科
■ 研究業績等
【著書】
・ 著書『文化経済論(16章中8.5章)』ミネルヴァ書房(共著) :2005/12
・著書 『大学とコスト(シリーズ 大学 第 3巻)/社会は大学のコストを負担できるのか..大学の生産性と公的支援の論理』岩波書店(共著) :2013/05
・教科書『テキストブック現代財政学/芸術・文化と財政..根拠・評価・主体』 有斐閣 (共著):2016/06
【論文】
・学術論文「公共政策論の現代的課題における『ボーモルの病』の意義」京都橘女子大学研究紀要 (第28号 ):167-188 (単著):2002/01
・学術論文「所得連動型貸与奨学金ーその理論的背景と課題ー」高等教育研究日本高等教育学会 22:29-48 (単著):2019/05
・学術論文「文化経済学と新しい公共性.政策論的視点から見た『ボーモルの病』の貢献.」同志社大学政策研究(第2号):95-110 (単著):2008/03
日本は、高等教育に関わる費用の私的負担の割合が、世界でも最も高い国のひとつとして知られています。また、リーマンショック後の不況の時期には、奨学金の返済負担によって多くの若者が経済的に苦しい状態にあると報道されることもしばしばありました。こうしたことから、近年では、高等教育の「無償化」が目指され、その具体的な方法として給付型奨学金が導入されつつあります。 しかしながら、給付型奨学金のような所得制限や成績による制限が課せられる奨学金は、第 1に制度的に複雑で扱いにくいものになりがちであり、第 2に選別主義的であるためにその恩恵を得られない高所得層の支持を得にくいという欠点があります。 オーストラリアやイギリスでは、学費(あるいは生活費も含めて)をいったん貸与し、卒業後に所得が一定水準を超えたところから所得の一定割合を返済させるという所得連動型教育ローンとよばれる公的なローンシステムが高等教育費の負担システムとして採用されています。この方法は、給付型奨学金のような制度上の困難がない上に、それを利用する個人にとって一種の保険として働くことから、より公平で効率的な教育費の負担システムとして注目されています。
所得連動型教育ローンのシステムは、1989年にオーストラリアでHECS(Higher Education Contribution Scheme)として導入されて以降、イギリスなどでも導入されていますが、日本学生支援機構の奨学金(国際的に見ると奨学金は返済不要でかつ学力基準で給付する資金を指し、日本の貸与型奨学金はローンと呼ぶのが一般的です)に応用されるなど、少しずつではありますが、その考え方が導入されています。 また、その仕組みは、たとえば司法サービスへの公平なアクセスを実現する際などにも応用可能であるとされ、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者スティグリッツによって「重要な社会的イノベーション」と評されています。
所得連動型ローンは、教育だけでなく、公共的な性格を持つ多様なサービスに応用される可能性を持っています。
教育費、奨学金、ローン
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