従業員の自己愛によって引き起こされるハラスメント・対人関係からの撤退
経済・経営
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2024-68
仙波 亮一 准教授
従業員の自己愛によって引き起こされるハラスメント・対人関係からの撤退
経営学部経営学科
■ 研究業績等
【著書】
・著書『キャリア・カウンセリングエッセンシャルズ400』金剛出版(分担執筆):2022/03
【論文】
・学術論文「優越感・有能感型自己愛が組織機能阻害行動に及ぼす影響」日本キャリア・カウンセリング学会TODAY 日本キャリア・カウンセリング学会 4(3):9-18 (単著): 2022/03
・学術論文「パワーハラスメント認知と自己愛、性別の関連」産業カウンセリング研究日本産業カウンセリング学会20(1):11-20 (共同):2019/03
・学術論文「上司からのサポートは組織機能阻害行動を促進させてしまうのか? -自己愛タイプ別に見た上司サポートの調整効果-」九州国際大学国際・経済論集九州国際大学現代ビジネス学会 (3):25-46 (単独):2019/03
【学会発表】
・自我脅威を知覚した労働者の行動選択プロセス.労働者 25名へのインタビュー調査から.(一般社団法人日本キャリア・カウンセリング学会第 26回大会):2021/11/14
・The effects of superiority/ competence complex narcissism on organizational dysfunctionalbehavior(The 14th Biennial Conference of the Asian Association of SocialPsychology): 2021/07/29
・アンガーマネジメント研修の有効性の検討ー従業員の自己愛に着目してー(一般社団法人日本産業カウンセリング学会第25回大会):2020/11/24
職場では、従業員がハラスメントに代表される攻撃行動を起こしたり、対人関係から撤退したりと、建設的ではない行動をとることがあります。これらの行動は、自己愛が主な規定要因だと考えられています。 自己愛とは、自分のことを肯定的にとらえたいという誰しも持っている心性です。人は否定的な外的評価を受けると、自己愛的な自己評価とのズレから自己評価低下の危機(自我脅威)を知覚します。肯定的な自己評価を維持したい従業員は、他者評価を受けいれず、自分を否定した他者に対してネガティブな感情を抱き、攻撃行動を選択します。逆に他者評価を受け入れた従業員は、自己評価が低下し、自分に対して否定的な感情を持ち、対人関係からの撤退を選択します。このように、自己愛によって従業員が攻撃行動を選択、あるいは対人関係から撤退するプロセスを説明することが可能です。 従業員の自己愛タイプを理解し、希求するサポートを提供することによって、これら建設的ではない従業員の行動を低減できる可能性があります。
私の一連の研究では、上司のサポートにより、建設的ではない従業員の行動が低減される可能性が示唆されました。しかし、上司は部下にサポートを提供しているつもりでも、受け手の部下がサポートとして認知していなければ効果はありません。 この部下のサポート認知と、彼らの自己愛タイプの関連を調べたところ、自己愛タイプにより、有効なサポートに差異が生じることが分かりました。このことは、上司が部下の希求するサポートを提供することで、ハラスメントや対人関係からの撤退といった建設的ではない行動を低減で
きる可能性があること を示唆しています。また、その際は、部下の 自己愛タイプにあった教育・指導を提供しないとサポートとして認知されない可能性があります。
人材育成において、自己愛タイプ別にどのような行動傾向があるかを知り、そのタイプにあったサポートを提供することで従業員の非建設的な行動(ハラスメントや対人関係からの撤退)の低減が期待されます。
ハラスメント、対人関係からの撤退、自己愛
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