医療業のジレンマ―経営効率と公共性をどう両立すべきか
経済・経営
----------------------------
2024-70
髙山 一夫 教授
医療業のジレンマ―経営効率と公共性をどう両立すべきか
経済学部経済学科
■ 研究業績等
【著書】
・著書『アメリカの医療政策と病院業.企業性と公益性の狭間で.』 法律文化社 (単著):2020/03
・ 著書『新世界の社会福祉第 6巻 アメリカ合衆国/カナダ』旬報社(共著) :2019/08
・教科書『入門現代日本の経済政策』法律文化社 (共著):2016/08
【論文】
・その他論文「アメリカの医療政策動向 (19) ワクチン接種等の義務化と2022年度予算法案をめぐって」 文化連情報日本文化厚生農業協同組合連合会(528):22-25 (単著):2022/03
・その他論文「医療における市場化を考える.自由貿易協定とアメリカの通商政策が日本の医療制度に及ぼす影響を中心に.」大阪保険医雑誌大阪府保険医協会 (667):26-29 (単著):2022/03
・その他論文「アメリカの医療政策動向⑱ 2022年度予算法案と雇用主提供型医療保険の行方」文化連情報日本文化厚生農業協同組合連合会(527):50-53 (単著):2022/02
【学会発表】
・講演 自著紹介とその後のアメリカ医療の動向、これからの研究の方向性について(日本医療福祉政策学会第 4回研究大会):2020/12/06
・医療改革の事例研究.経済学からのアプローチ(日本医療福祉政策学会第 1回研究大会):2017/12/02
・教育講演 TPP協定と医療制度(日本医療経済学会第 40回総会・研究大会):2016/12/05
この研究では、医療業の特質と望ましい経済的・社会的規制を考察することを目的としています。経済学の立場から医療を考える際には、いわゆる資源配分の効率性だけではなく、誰もが必要な時に適切な医療を受けることができるという意味での衡平性を実現することが大切です。日本を含む多くの国々では、公的な医療保障制度を構築することで普遍的な医療アクセスを実現しており、そうした医療制度の枠組みのもと、病院や診療所などの医療業もまた、それが私的な事業として営まれる場合でも、経営効率と公共性(衡平な患者の取り扱いや地域医療への貢献)を発揮するよう、法制度や診療報酬制度によって促されています。先進国では例外的に普遍的な公的医療保険制度を持たず、市場競争の激しいアメリカの医療業では、経営効率と公共性の両立をどう図るかが、他の国々と比べても鋭く問われます。それだけに、医療業の特質と望ましい医療制度を考察するうえで、アメリカの医療業の動向に注目することが不可欠だと考えます。
医療制度をまったく異にする日米の医療業を比較検討することで、医療業の特質というべき経営効率と公共性との両立を図るために望ましい制度がどのようなものか理論的に明らかにします。経営効率については産業組織論に代表される理論的枠組みや計量的な分析手法が相当程度まで確立しているものの、公共性に関する概念や分析方法は発展途上であり、日米の法制度、例えば医療業における公益性の認定基準や補助金の交付基準、地域医療における貢献の内容と実態(日本における救急医療等確保事業、米国のコミュニティ・ベネフィット基準)、無保険者やマイノリティなどの診療を主たる事業目的とする米国のセーフティネット・プロバイダーの活動事例、医療業が地域経済に及ぼす経済効果分析などに注目して、医療業における公共性概念の精緻化と分析方法の確立、望ましい制度設計のための政策的含意の導出などを目指します。
・医療業の特質と望ましい経済的および社会的規制の理論的な枠組みを提供。
・医療制度および市場環境の違いに基づく医療業の国際比較研究への視座を提供。
医療業、経済性、衡平性、公共性、医療経済
コメント