第1回
はじめまして、哲学対話
みなさんと、対話が何なのかということについて対話をすることができたこと、とても豊かな時間でした。最近は、対話が何なのかということに加えて、何によってわたしたちは対話ができなくさせられているんだろうということをよく考えています。あなたはどう思いますか?
第1期(2023年度前期)
身はひとつ、1日は24時間なのに、情報量は激増の一途をたどっています。コスパ、タイパを意識し、効率を重視したくなるのも当然です。仕事も家事もスピーディにこなし、余暇も娯楽もコンパクトに! 人づきあいも恋愛も、ムダをしているヒマはない!
その一方で、「ネガティブ・ケイパビリティ(消極的な受容力)」――すぐに答えが見つからなくても、拙速な結論や解決法には飛びつかず、急がず焦らず、問いをかかえた状態で持ちこたえる力や態度が注目されます。
目まぐるしく変化する現代社会だからこそ、「人の話をじっくり聞く」「立ち止まって自分に問いかけ、借りものでない自分の言葉で考える」「性急な答えを求めない」――そんな時間を大切にするのがUkonです。「ゆるやかなつながりを取り戻す」「変化を楽しむ学びの場」――それが、Ukonのめざすところです。
Ukonの考える教養とは、物質的なしあわせを得るための手段ではなく、心をゆたかにし、世界との新たな結びつきを見つけるための作法です。日々の営みや自らの心や身体と丁寧に向き合い、自己解像度を高め、他者への想像力を育んでいく、その第一歩になればと願っています。
街場や学校で「哲学対話」をひらいている永井玲衣さん。ひとりで難しいことを考え続けるイメージのある哲学とは異なり、日常の中のささいな「問い」を “誰かと一緒に” 育てる時間は、とても創造的だと言います。目の前の「問い」を通して、他者と繋がることができる哲学対話。そもそも、対話そのものを私たちはできているか?ということも同時に考えさせられる、とても丁寧な時間をご一緒しましょう。
「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を知っていますか?ある疑問に対して、早く答えを出すという合理的な手法とは異なり、知りたいという興味を持ちながら分からないままの状態を耐え抜く力のこと。京都橘大学の学長の日比野英子さんは、50年間、心理学という分野に身を置きながら、自分なりの問いに向き合い続けてきました。そんな日比野さん自身が辿ってきた道と、時間をかけて得た「気づき」についてじっくり伺います。
世紀を超えて広く愛されるチャップリン。ワンシーンを撮るのに膨大なテイクを重ねる彼のNGフィルムは、世界で3人しか見られておらず、大野裕之さんがその一人です。なぜそんなにもNGを出したのか?それは、差別や嘲笑を含むような安易な笑いではなく、世界中の人を笑わせたいと願うチャップリンが試行錯誤の末に体得した“ヒューマニズム”だと言います。現代の私たちのケアにこそ必要な、その「笑いの力」とは?
食べ物から経済を考える、「食料経済」について、京都橘大学・経済学部准教授の平賀緑さんに教えていただきます。私たちが毎日食べている食品を、経済の枠組みの中の「商品」と捉えることで、見えてくるものがあると言います。ショッキングな真実をはらんだ農業・食料システムの現状。けれども最近、“コモンズ(共有財)”をキーワードに、「人も自然も壊さない経済」という明るい動きが世界で活発化してきているそうです。
翻訳家の鴻巣友季子さんは、翻訳するという行為について「圧倒的他者との出会いであり、ケアである」と言います。アマンダ・ゴーマンの詩を翻訳するという課題では、参加者から実に多様な訳文が登場!AIの翻訳例も取り上げながら、人にしか汲み取れないものは何か?人間の知性とは?創造力とは何か?を考えていきます。訳者の知識を総合的・複合的・有機的に繋げて紡ぐという翻訳の、難しさと面白さをお楽しみください。
2005年、ひょんなきっかけからウズベキスタンに行くことになった河原宣子さん。その使命は、基礎看護学カリキュラムの導入支援。言語も文化も異なる場での技術提供という経験を経て気づいたことは、「大切なのは相手の言動だけを見るのではなく、その人が持つ価値観・世界観を尊重し、受け止めた上でどう行動するかを考えること」だと言います。看護という分野に限らず、今を生きる私たちに大切なことを教えていただきます。
日本のみならず、中国や韓国にも多くのファンを持つ京都アニメーションの作品。なぜこんなにも10代の心を掴むのか?野村さんはその理由を、現代の若者たちが感じている「居場所」について考察することで見えてくると言います。具体的な京アニ作品を例に上げながら、彼らが共感を覚えている要素、さらには時代とともに変化してきた社会のあり方などについてお話を伺います。「最近の若者は分からない」という方、必見です。
スクウェア・エニックスでシナリオライターを経て、作家・書評家として活躍されている渡辺祐真さん。小説、新聞、ニュース、誰かが語る今日の出来事に至るまで、「世界は物語でできている」と言います。私たちは、日常生活の中で接するあらゆる事態を、因果関係のある“物語”として整理されることで、「分かった」気持ちになれます。そこから生まれる、他者への理解という「ケア」としての役割と、危険な側面についても伺います。
「たちばな教養学校 Ukon」は、京都橘大学が2023年度からつくるあたらしい学びの場(学校教育法第107条に定める公開講座)です。半年ごとにテーマを定め、多彩な講師陣による全8回の授業を実施します。受講資格は特にありません。学ぼう、楽しもうという意欲があれば、どなたでも受講できます。
テーマ | 自分をひらくケア――「つながる」ことへのレッスン |
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受講形態 | 2023年5月~2023年9月に実施した第1期授業をオンデマンド配信でご覧いただけます。 |
配信期間 | お申し込み後~2024年10月31日(木) ※お申し込み後、すぐに授業をご覧いただけます。 |
受講料 |
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受講対象 | 学ぶ意欲のある方なら、どなたでも受講いただけます。 |
講師 | 「授業一覧」からご確認ください。 |
申込方法 | いずれも、申し込みボタンからお申込みください。 |
一括申込特典 | 「全8回一括申し込み」でお申し込みいただいた方のうち、ご希望の方に第1期授業をまとめた「Ukonノート」をプレゼントします! |
定員 | 最大500名 |
その他 | 第1期対面授業に一括お申し込みいただいた方は、無料で視聴いただけます。 |
みなさんと、対話が何なのかということについて対話をすることができたこと、とても豊かな時間でした。最近は、対話が何なのかということに加えて、何によってわたしたちは対話ができなくさせられているんだろうということをよく考えています。あなたはどう思いますか?
悪天候の中、Ukonの講座にお越しくださってありがとうございました。私にネガティブ・ケイパビリティが備わっているとすれば、それは心理臨床の場で大切な語りを聴かせてくださったクライエントの方々のおかげのように思います。それぞれの人生に伴走させていただいたからこそ、急がず焦らずその意味を考え続ける習慣を身につけたのかもしれません。
講演を聞いて何かの正解を求めるよりも、誤解でもいいので、受けた刺激をヒントに日常や仕事において行動を起こしてほしいと願っています。「学んで、充電する」とかよりも、感電して停電して放電するイメージで。
私の話はドロドロした凹みそうな話になりがちなので、今回は「つながり」の「回復」を目指すという、とてもチャレンジングな挑戦でした!今回みなさんと一緒に考えたことも糧に、人も自然も壊さない「経世済民」を考え続けてゆきたいと願っています。
講義のなかで、「翻訳とは言葉を生け捕りにすることである」と申しました。まさに、まさに、それを講師自身が実感する90分でした。みなさんが届けてくれたアマンダ・ゴーマンの訳文の数々。そこには、勇猛な、あるいはシャイな、繊細にして強靭な網ですくいとられた、生きた言葉が跳んだり跳ねたり、しっとり蹲ったり、輝く瞳で誘いかけたりしていました。これぞ、翻訳の醍醐味。本当に楽しい時間でした。また、ぜひ「たちばな」でお会いしましょう!
ウズベキスタン共和国で出会ったすべての人々に心から感謝しています。私たちは、他者の言動を見聞きして、他者の想いや考えを「私」が解釈し判断しているに過ぎません。人はひとり一人違うから相手のことは100%わからない。このことを意識すれば、世の中に「思いやり」の振る舞いがもっと増えるのではないか?ウズベキスタンでの経験からの貴重な学びです。
大変楽しい時間を過ごさせていただきました。居場所というテーマは、最近の思春期の少年少女たちなら誰でもぶつかる問題です。今回、参加していただいた方々の多くは「元少年少女」の方々で、このテーマに興味を持つのかなと不安に感じていましたが、みなさん熱心で積極的に参加してくださいました。居場所というテーマはひょっとしたら年齢を超える、誰の人生にもある問題なのかもしれないと、そんな感想を持ちました。
第一期最終講義として、物語やケア、対話といったUkonで扱われた様々なテーマを引き継ぎ、まとめるつもりで「他者と自己をケアするための物語」を題材にしました。一筋縄ではいかない問いですが、受講生の方々に支えられ、無事に終えることができました。物語を紡ぎ、読み、考える旅を共に続けていきましょう!