第1回
はじめまして、哲学対話
みなさんと、対話が何なのかということについて対話をすることができたこと、とても豊かな時間でした。最近は、対話が何なのかということに加えて、何によってわたしたちは対話ができなくさせられているんだろうということをよく考えています。あなたはどう思いますか?
第1期(2023年度前期)
身はひとつ、1日は24時間なのに、情報量は激増の一途をたどっています。コスパ、タイパを意識し、効率を重視したくなるのも当然です。仕事も家事もスピーディにこなし、余暇も娯楽もコンパクトに! 人づきあいも恋愛も、ムダをしているヒマはない!
その一方で、「ネガティブ・ケイパビリティ(消極的な受容力)」――すぐに答えが見つからなくても、拙速な結論や解決法には飛びつかず、急がず焦らず、問いをかかえた状態で持ちこたえる力や態度が注目されます。
目まぐるしく変化する現代社会だからこそ、「人の話をじっくり聞く」「立ち止まって自分に問いかけ、借りものでない自分の言葉で考える」「性急な答えを求めない」――そんな時間を大切にするのがUkonです。「ゆるやかなつながりを取り戻す」「変化を楽しむ学びの場」――それが、Ukonのめざすところです。
Ukonの考える教養とは、物質的なしあわせを得るための手段ではなく、心をゆたかにし、世界との新たな結びつきを見つけるための作法です。日々の営みや自らの心や身体と丁寧に向き合い、自己解像度を高め、他者への想像力を育んでいく、その第一歩になればと願っています。
1991年東京都生まれ。哲学研究者。哲学研究と並行して、学校・企業・寺社・美術館・自治体などで哲学対話を幅広く行っている。哲学エッセイの連載なども手がける。著書に『水中の哲学者たち』。
1953年京都府生まれ。京都橘大学学長。主な著書に『臨床心理学を基本から学ぶ』、『個と向きあう介護』、『身体は誰のものか比較史でみる装いとケア』(以上、共著)、『心理学概論』(監修・共著)など。
1974年大阪府生まれ。著書に『チャップリンとヒトラ- メディアとイメージの世界大戦』、『ディズニーとチャップリン エンタメビジネスを生んだ巨人』他多数。映画『太秦ライムライト』他でプロデューサー・脚本を担当。
1971年広島県生まれ。京都橘大学経済学部准教授。植物油を中心に食料システムを政治経済学的アプローチから研究。著書に『植物油の政治経済学』、『食べものから学ぶ世界史:人も自然も壊さない経済とは?』。
1963年東京都生まれ。翻訳家、文芸評論家、大学講師。訳書に、ブロンテ『嵐が丘』、ミッチェル『風と共に去りぬ』、ウルフ『灯台へ』、アトウッド『誓願』他多数。著書に、『全身翻訳家』『謎とき『風と共に去りぬ』』『文学は予言する』他多数。
1964年三重県生まれ。京都橘大学看護学部教授。2005年に国際協力機構(JICA)の技術協力専門家としてウズベキスタン看護教育改善プロジェクトにおいて基礎看護学カリキュラムの導入支援にあたった。
1964年三重県生まれ。京都橘大学文学部教授。専門は日本近代文学。主な著書に『小林秀雄 美的モデルネの行方』、『宮崎駿の地平』、『京アニを読む』、『二・二六事件の思想課題』、『東京裁判の思想課題』など。
1992年東京都生まれ。ゲーム会社でシナリオライターとして勤務する傍ら、2021年から文筆家、書評家、書評系YouTuberとして活躍。毎日新聞文芸時評担当(2022年4月~)。著書に『物語のカギ』。
「たちばな教養学校 Ukon」は、京都橘大学が2023年度からつくるあたらしい学びの場(学校教育法第107条に定める公開講座)です。半年ごとにテーマを定め、多彩な講師陣による全8回の授業を実施します。受講資格は特にありません。学ぼう、楽しもうという意欲があれば、どなたでも受講できます。
テーマ | 自分をひらくケア――「つながる」ことへのレッスン |
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受講形態 | 2023年5月~2023年9月に実施した第1期授業をオンデマンド配信でご覧いただけます。 |
配信期間 | お申し込み後~2024年4月30日(火) ※お申し込み後、すぐに授業をご覧いただけます。 |
受講料 |
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受講対象 | 学ぶ意欲のある方なら、どなたでも受講いただけます。 |
講師 | 「授業一覧」からご確認ください。 |
申込方法 | いずれも、申し込みボタンからお申込みください。 |
一括申込特典 | 「全8回一括申し込み」でお申し込みいただいた方のうち、ご希望の方に第1期授業をまとめた「Ukonノート」をプレゼントします! |
定員 | 最大500名 |
その他 | 第1期対面授業に一括お申し込みいただいた方は、無料で視聴いただけます。 |
みなさんと、対話が何なのかということについて対話をすることができたこと、とても豊かな時間でした。最近は、対話が何なのかということに加えて、何によってわたしたちは対話ができなくさせられているんだろうということをよく考えています。あなたはどう思いますか?
悪天候の中、Ukonの講座にお越しくださってありがとうございました。私にネガティブ・ケイパビリティが備わっているとすれば、それは心理臨床の場で大切な語りを聴かせてくださったクライエントの方々のおかげのように思います。それぞれの人生に伴走させていただいたからこそ、急がず焦らずその意味を考え続ける習慣を身につけたのかもしれません。
講演を聞いて何かの正解を求めるよりも、誤解でもいいので、受けた刺激をヒントに日常や仕事において行動を起こしてほしいと願っています。「学んで、充電する」とかよりも、感電して停電して放電するイメージで。
私の話はドロドロした凹みそうな話になりがちなので、今回は「つながり」の「回復」を目指すという、とてもチャレンジングな挑戦でした!今回みなさんと一緒に考えたことも糧に、人も自然も壊さない「経世済民」を考え続けてゆきたいと願っています。
講義のなかで、「翻訳とは言葉を生け捕りにすることである」と申しました。まさに、まさに、それを講師自身が実感する90分でした。みなさんが届けてくれたアマンダ・ゴーマンの訳文の数々。そこには、勇猛な、あるいはシャイな、繊細にして強靭な網ですくいとられた、生きた言葉が跳んだり跳ねたり、しっとり蹲ったり、輝く瞳で誘いかけたりしていました。これぞ、翻訳の醍醐味。本当に楽しい時間でした。また、ぜひ「たちばな」でお会いしましょう!
ウズベキスタン共和国で出会ったすべての人々に心から感謝しています。私たちは、他者の言動を見聞きして、他者の想いや考えを「私」が解釈し判断しているに過ぎません。人はひとり一人違うから相手のことは100%わからない。このことを意識すれば、世の中に「思いやり」の振る舞いがもっと増えるのではないか?ウズベキスタンでの経験からの貴重な学びです。
大変楽しい時間を過ごさせていただきました。居場所というテーマは、最近の思春期の少年少女たちなら誰でもぶつかる問題です。今回、参加していただいた方々の多くは「元少年少女」の方々で、このテーマに興味を持つのかなと不安に感じていましたが、みなさん熱心で積極的に参加してくださいました。居場所というテーマはひょっとしたら年齢を超える、誰の人生にもある問題なのかもしれないと、そんな感想を持ちました。
第一期最終講義として、物語やケア、対話といったUkonで扱われた様々なテーマを引き継ぎ、まとめるつもりで「他者と自己をケアするための物語」を題材にしました。一筋縄ではいかない問いですが、受講生の方々に支えられ、無事に終えることができました。物語を紡ぎ、読み、考える旅を共に続けていきましょう!