学生×教員が本音で語ってみた。
『クロスオーバー型課題解決プロジェクト」って実際どうなの?
#共通教育特集
特 集
2025.03.21

『クロスオーバー型課題解決プロジェクト』とは、毎年10法人以上の企業や自治体からリアルな課題を提示してもらい、さまざまな分野で学ぶ学生たちが協働しながら解決策を考えるというキャリア教育科目です。
科目名の“クロスオーバー”とは「”垣根”を越える」という意味ですが、学生たちが所属する“学部学科の垣根”、あるいは“学生と社会人の垣根”、さらには“企業と大学の垣根”を越えることにより、学生たちに「越境力」を身につけてほしいという願いが込められています。でも、実際のところはどうなのか!?
今回は数多くのプロジェクトの中から、株式会社リクルート(以下リクルート)が発行する結婚情報誌『ゼクシィ』の編集部と連携し、「次世代の結婚式を考える」というテーマに取り組んだ4名の学生と同社プロジェクトを担当した経済学部の乾明紀教授が本科目の特徴や魅力について語り合いました。
【参加者プロフィール】
◆乾 明紀 教授(コーディネーター/写真一番右)
所属:経済学部経済学科
専門分野:キャリアデザイン論、探究学習論、プロジェクト・ベースド・ラーニング
※写真左から
◆大槻凪 さん/経営学部経営学科2回生
※本文中では大槻(凪)
◆小森瑠奈 さん/経済学部経済学科2回生
◆橋本千聖 さん/経営学部経営学科2回生
◆大槻都桜子 さん/経営学部経営学科2回生
※本文中では大槻(都)
■「クロスオーバー型課題解決プロジェクト」を履修したきっかけは?
乾/本科目を履修したきっかけや理由について教えてください。また、2024年度は14のプロジェクトが用意されていましたが、中でもゼクシィ編集部のプロジェクトを選んだ理由を聞かせてください。
小森/私が履修したのは先生に勧めていただいたのがきっかけです。中でもコンビニやCMなど私達の身近なところでよく見かける結婚情報誌『ゼクシィ』の編集部の方と関われるのは、とても光栄なことだと思いました。
大槻(都)/本科目の紹介文を見た時に、先輩方が「100%おすすめ」と書いてあるのを読んで履修を決めました。また、テーマが「次世代の結婚式を考える」ということで、ちょうど次世代に結婚適齢期を迎える私たちが当事者意識を持って取り組めるプロジェクトだと思いました。
大槻(凪)/高校時代から京都橘大学のクロスオーバー型課題解決プロジェクトに注目していました。なぜなら、他学部の学生と交流できる授業形態がすごく珍しいなと。ゼクシィ編集部とのプロジェクトを選んだ大きな理由は、僕の人生の考え方を変えてくれた乾先生が担当教員だったからです。乾先生は1回生の『キャリア開発演習Ⅰ』で、「大学1・2回生は下積み時代だ。そこでたくさん経験を積んでおけば、その後の人生は必ずよくなる」という熱い言葉をくださいました。この大学を選んで本当によかったです。

橋本/履修登録のガイダンスで、「受講した方がいい」と先生に勧めていただきました。私はもともとブライダル業界に興味があり、ブライダルの専門学校へ行こうかと迷ったくらいで。ゼクシィ編集部とのプロジェクトは「まさにこれだ!」と思って選びました。
■他の科目にはない、この科目の学びの特徴と魅力を教えてください。
乾/皆さん、さまざまな目的やきっかけがあって履修されたのですね。そこで感じた本科目の特色や魅力、他科目との違いは何ですか?
大槻(都)/実践的なところが1番のポイントだと思います。サービスの利用者を具体的に想定するペルソナ設定を検討する上で、複数のカップルにインタビューをしましたし、実際に私たちが考える結婚式の提案まで行いました。
小森/私は普段の大学生活では関われない企業の方と交流できるのがよいところだと思います。
大槻(凪)/学生が主体となって進めていくプロジェクトであり、企業の方とも密接に繋がれるところが特色だと思います。実際にグループワークにも企業の方が参加して、一緒になって真剣に議論してくださいました。
橋本/わざわざ東京からゼクシィ編集部の方が来校され、対面で私たちに意見やアドバイスをしてくださる。そんな機会はなかなかないですし、さらにはプレゼンテーションに順位を付けるところが今回の同社プロジェクトの特色だなと。そこで競争心といいますか、「私たちのグループももっといいものを作ろう!」という気持ちが高まりました。



乾/実際にコンペティションといいますか、授業の中で「次世代の結婚式」を提案し、それをゼクシィ編集部やブライダル産業の方に評価してもらって順位を付ける場面がありましたね。それが「負けたくない」という競争心に繋がったのですか?
橋本/特に中間発表の時ですね。他のグループのプレゼンテーションや斬新なアイデアに圧倒されて、「もっと深掘りして作戦を練らなきゃダメだ」と強く思いました。やっぱり具体的な順位が出ると、少し焦ってしまいますね。
■課題を提示するだけでなく伴走してくれる企業の方たち。関わりの中で印象に残っていること、学びになったことは何ですか?
乾/企業の方は頻繁に足を運んでくださいましたね。課題を提示して終わるのではなく、一緒に最後まで寄り添ってくださいました。その中で特に印象に残っていることはありますか?
大槻(都)/インサイト(自分自身も気がついていない願望や要求のこと)を探ることです。ブライダル業界でマーケティングに携わるお仕事ならではの視点を学ばせていただきました。それから私も自分自身のインサイトを探すようになって、「なぜ私はこれが好きなんだろう」と過去の自分を振り返っています。いろいろな物事をインサイトという視点で捉えられるようになりました。



大槻(凪)/僕はグループワークです。グループワークでご一緒した時、意見をまとめあげる力が本当にすごいなと思って。学生同士のグループワークをしていた際、グループ内の誰からも意見が出ない状況でした。それが、ゼクシィ編集部の方が交ざってくださった瞬間に場の流れが急に変わって、みんなの意見がポンポン出るようになった。そして最後はきちんと話がまとまったので本当に驚きました。
乾/クロスオーバー型の授業とはいえ、話が全くバラバラだったら確かに交わらないですね。ある意味、企業の方がモデルを示してくれたというか、「こうやって話し合いをまとめるんだよ」というやり方を実践的に教えてくれたのかもしれませんね。
大槻(凪)/学生同士のグループワークとは全然違いました。ひと言でいえば、無言の時間がなかった。誰かが意見を出すまでずっと、「たとえばこんなこともあるよね」などと具体例を示しながら終始声をかけてくださいました。
小森/学生がアイデアを発表した後に企業の方がフィードバックをくださるのですが、私たちが到底思いもつかないアイデアを返してくださった時にはやはり「さすがだな」と感じました。それから、私たちとの他愛もない雑談もきちんとメモに取られ、「こんな雑談まで企業の方は参考にされているのか」と驚きました。先ほども「インサイトを探る」というお話がありましたが、その後は私もSNSでバズっているものを見て、「なぜこれが流行っているのだろう」と考察するようになりました。
乾/学生が普段当たり前だと思っていることも、企業の方にとってはすごく価値のあるもので、そこからさらに深掘りしてアイデアを紡いでいこうと思われたのかもしれませんね。中間発表や最終発表はもちろん、普段のグループワークからこまめに意見を返してくださいましたし、やはりフィードバックは大事だったということですね。

小森/アイデアの出し方や発表の仕方まで、本当に実践的なアドバイスをいただきました。それは今後の就職活動や社会人生活にもきっと活かせる。たとえば、私たちは「結婚式にSNSを取り入れる」という提案をしたのですが、「それなら準備期間も含めてSNSで発信したら?」というフィードバックをいただきました。その発想は私たちにはなかったです。
橋本/最後の授業でゼクシィ編集部の方が私たちへのメッセージをくださった時、とても親身で心のこもったメッセージをいただきました。そして泣いてくださる方もいました。私たちのことを思ってくださっていたことを改めて実感して、ありがたいなと思いました。
■この科目を履修して成長したことや自身が変化したと感じることを教えてください。
乾/本科目を通じて成長したことや変化したことなどがあれば聞かせてください。
大槻(凪)/僕の場合はコミュニケーション力と想像力が身についたと思います。先ほどお話ししたグループワークでも、企業の方が引っ張ってくださったおかげで、僕たちもたくさん意見交換をして、活発なコミュニケーションを取ることができました。また、僕が思いつかないような意見まで飛び交って、「こんな考え方もあるのか」と想像力が膨らむようになりました。
橋本/私は大きく2つあって、プレゼンテーション力と周りを見て助ける力が身についたと思います。まず、プレゼンテーションに関しては、パワーポイントを使った資料の作り方から企業の方にアドバイスをいただきました。たとえば、「ここは順番を変えた方がいい」だとか、「もっと統一感を出した方がいい」だとか。さらには見せ方のコツとして、「パワーポイントの内容は少し控えて、あとはしゃべりで押し通した方がいい」などと、本当に具体的なアドバイスばかりでした。それからは他の授業のプレゼンテーションでも、いただいたアドバイスを意識するようにしています。また、周りを見て助ける力というのは、やはりこの授業ではグループ全員で協力しないとうまくいかないんですね。話し合いの輪に入れない人がいたり、何をしていいのか分からない人がいたりすると、「こんな方向性でプロジェクトを進めたいから、あなたにはこれを担当してほしい」という言葉をかけられるようになりました。プロジェクトの進行を見て、適切に作業を振り分けるマネジメント力も同時に養えたかなと思います。

大槻(都)/私は今2回生で、将来就きたい職業も人生の目標も何も定まっていませんでした。でも、この授業をきっかけに「人の幸せに携わる仕事ってすごく素敵だな」と思えるようになりました。ぼんやりとではありますが、「人を幸せにしたい」というキャリアの方向性が見えてきました。
乾/「人を幸せにしたい」と考えるようになってから、何か行動に変化はありましたか?
大槻(都)/企業説明会に参加した時に、「この企業の業務内容は人を幸せにするものだろうか」と考えるようになりました。企業を見る視点が変わったと思います。
小森/先ほどの大槻(都)さんの話にもありましたが、私もインサイトを意識するようになりました。今までは、この人はこういう考えだろう、と勝手に決めつけてしまう面がありましたが、この授業でインサイトを学んでからは、「こう見えて実はこんなことを考えているのかも」「本当はこんなことを求めているのかも」と思考を巡らせるようになりました。そうした経験から私はマーケティング職にも興味を持つようになり、自分の将来を見据えてキャリア教育科目を多めに履修したり、キャリアセンターへ足を運んだりするようになりました。
■履修を迷っている学生へのアドバイス
乾/企業の皆さんも「学生のために」と本気で授業に取り組んで、すごく時間と労力を割いてくださいましたよね。今後もしクロスオーバー型課題解決プロジェクトの履修を迷っている学生がいたら、どんなふうに声をかけますか?
大槻(都)/私が読んだプロジェクトの紹介文と同じく100%お勧めします。自分の成長にも繋がるし、新たな価値観も生まれる。それによって視野も広がるから、絶対に履修してほしいです。
小森/今まで受けた授業の中で1番自分のためになったし、1番面白かったです。このクラスは金曜4限の開講でしたが、企業の方やグループのメンバーと会えるのが本当に楽しみでした。もし迷っている人がいたら、「受けて損はないよ」と伝えたいです。

橋本/私も「絶対、履修してください!」って伝えます。私が今まで履修してきた授業の中で1番時間が過ぎるのが早く感じる100分間でした。他学科の学生や企業の方と交流できる滅多にない機会ですし、さらには直々にアドバイスをいただけるなんて本当に貴重です。大槻(都)さんが言われたように、価値観や考え方が変わったり、新たな自分を知れたりすると思います。
乾/今回、集まったのは経済学部と経営学部の2回生ですが、他にもこのクラスには総合心理学部の学生がいたり、3回生の学生がいたり、あるいは弓道部などの強化指定クラブに所属する学生がいたりしましたね。実際に学生同士でもさまざまなクロスオーバーがあったわけですが、それについてはどのように感じましたか?
橋本/たとえば総合心理学部の学生の意見を聞くと、人の心を深く勉強しているだけあってグループの中でも少し視点が違うなと。また、3回生の先輩方はやはり頼りになるというか、はっきり意見をいってくれるところがありました。グループワークに取り組むとそれぞれの個性が出ますね。
大槻(凪)/僕も「履修しなきゃもったいない!」というくらい勧めます。せっかく京都橘大学に進学したのなら、その特色であるクロスオーバー型課題解決プロジェクトは必ず受けるべきだと。学部学科も学年も越えて、企業の方とも関われて、本当にたくさんの経験をここで積ませてもらえます。さらにはプレゼンテーション力が向上したり、新しい考え方ができたりと、自分の成長に直結するのでぜひ履修してほしいと助言します。
■受講前のあなたに今、声をかけるとすると何と声をかけますか?
乾/大槻(凪)さんは高校時代からこの授業を受けみたいと考えて、京都橘大学に進学したと話していましたね。授業を終えた今だからこそ受講前のあなたに伝えられることは何ですか?
大槻(凪)/「君の選択は正しかったよ」ということです。でも、実をいうとこのプロジェクトは女性の受講生の割合が比較的多かったんですね。だから最初はガチガチに緊張してしまい、自分の意見をあまり言えなかった。でも、授業の後半は自然体の自分を出せて、たくさんのことを吸収できました。あの時の自分に今の自分が言えるのは、「みんな怖い人ではないし、話しかけたら気さくに接してくれるよ。もっと気軽に声をかけて、いろいろなものを吸収するといいよ」ということ。最後のプレゼンテーションでは企業の方にも評価をいただき、手応えを感じることができました。
小森/私は、この授業は実際の仕事の一部を経験したような実りがあると思っています。企業の方が一人ひとりの学生と親密に関わって、個々にアドバイスをくださる機会なんてなかなかないですよね。また、学外の就業体験だと緊張して自分を出せないかもしれませんが、受講生の中には顔見知りもいましたし、企業の方にも心を開いて話せたような気がします。

乾/この授業は学内で行われるものですが、大学にいながらにして企業の方からたくさんのことを学べる。そんな科目でしたね。
大槻(都)/私だったら、「履修してくれて本当にありがとう」と声をかけたいです。14回の授業では物足りないくらい。もっとやりたかったと思える時間でした。
橋本/それすごくわかります!前期と後期の1年をかけてやりたかったなって。私も「取ってくれてありがとう。よくやった!」って伝えたい。あとは「もっと積極的に動いた方がいいよ」って受講前の自分にアドバイスします。私は今、習い事でダンスをしていますが、この授業を通じてエンターテインメントの世界で人を幸せにする職業に就きたいと考えるようになりました。あとは、ここで出会えた企業の皆さんが楽しそうに仕事に向き合っておられるのが印象的で、皆さんのことが大好きになりました。ちょっと贅沢かもしれませんが、私も自分が楽しいと思える仕事と職場環境に恵まれたいと思いました。

<ここがDISCOVERY!>
- 企業や自治体から提示されるリアルな課題に対して、様々な分野で学ぶ学生たちが協働しながら解決策を考えるプロジェクトがある!
- 他学部・他学年など多様な学生と交流できるのが魅力!
- 学生にとっての“当たり前”は、企業や自治体にとって価値のあるもの。それが新しいアイデアになる!
- インターシップを凝縮したような授業で、コミュニケーション力、マネジメント力、プレゼンテーション力など、キャリアに活きる学びがたくさんある!
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