大学進学を選んだブレイキントップダンサー。世界最高峰の舞台『Red Bull BC One World Final TOKYO 2025』を沸かせたB-Boyが描く次の夢とは?
インタビュー
2026.09.02

経営学部経営学科 4回生
米澤 脩斗(よねざわはると)さん
Body Carnival Zoo所属
B-Boy Haruto
ブレイキン(=ブレイクダンス)のダンサーなら、誰もが一度はその舞台に立ちたいと願う世界最高峰の大会「Red Bull BC One World Final」。2025年に東京・両国国技館で行われた世界大会で約7,000人の観客を沸かせ、初出場ながら準優勝という快挙を成し遂げたのが、B-Boy harutoこと米澤脩斗さん。世界トップレベルのブレイキンダンサー、B-Boyとして活躍する米澤さんには、経営学部経営学科に通う4回生というもう一つの顔があります。
「ダンスか、進学か」。高校卒業を前に、多くのアスリートやB-Boyが向き合う選択。幼い頃からブレイキンに打ち込み、日本一にも輝いてきた米澤さんが選んだのは、ダンス一本ではなく大学進学という道でした。学業とブレイキンの両立を貫いた先でたどり着いた世界の舞台。なぜ彼は大学進学を選び、その経験をどのように自身のダンスへとつなげてきたのか。大学で学ぶ意味、世界の舞台で得た気づき、そしてB-Boyとして描く未来について伺いました。
※2026年7月にインタビューしたものです
Q/まずは、これまでのブレイキン歴について教えてください。
出身地の石川県でダンスを始めたのは、小学2年生の頃です。先に姉がヒップホップダンスを習っていたのですが、僕はブレイキンの方が唯一無二でかっこよさそうだと感じて選んだと記憶しています。小学6年生の時、日本一を決める大会で優勝したことが、習いごとだったブレイキンが本気の夢に変わるターニングポイントでした。
中学生時代には、3度の日本一を経験し、地元・石川県の星稜高校に進学。高校入学後は、憧れだったKAZUKI ROCKさんが所属する京都のクルー「Body Carnival」に加わりました。高校から帰宅してすぐに京都へ向かい、夜間のチーム練習に参加した後、夜行バスで石川へ戻り、そのまま高校へ通う日々。石川と京都を往復しながら、ブレイキンに打ち込んだ高校生活を送っていました。

Q/日本屈指のレベルを誇る「Body Carnival」のメンバーとして、高校卒業後はプロダンサーとして生きる道もあったかと思うのですが、なぜ大学生に?
まわりのダンサー仲間には、勉強よりもダンスを優先する人が多かったのですが、僕はどちらか一方に絞りたいとは思いませんでした。大好きなブレイキンを続けながら学びにも挑戦したいという想いがあって、文武両道を志し京都橘大学への進学を決めました。
トップダンサーの中には、ダンス一本で勝負する人がたくさんいます。でも僕は、ダンスを極めるためには、ダンス以外の世界に触れることが大切だと考えていました。いろいろな考え方や価値観を持つ人と出会い、それらが自分の中で混ざり合うことで、新しい表現や発想が生まれるのではないかと思ったんです。京都橘大学には理系、文系、医療系と、さまざまな分野を学ぶ学生がいて、そうした環境の中で自分の視野を広げながらダンスにも向き合いたいと考えました。
また、経営学部を選んだのは、経営コンサルタントとして働く親の影響が大きいです。子どものころから、経営者へ戦略提案を行ったり、クライアントのWEBページを制作、運用したりする姿を間近で見てきたので、自然と経営に興味を持つようになりました。経営について学ぶことで、その知識をダンス活動はもちろん、さまざまな分野で生かせる可能性があると感じています。将来は、自分自身の活動や挑戦にもその学びを活用していけたらと思っています。



Q/2025年にはブレイキンの世界最強を決める大会「Red Bull BC One World Final」に出場。当日はどんな気分でしたか。
大会側から招待を受けて出場する選手とは違い、僕は日本の地区予選、国内決勝、そして最終予選を勝ち抜いて世界決勝の舞台にたどり着きました。そこまでの過程で十分に準備ができていたので、当日は不思議と緊張よりも楽しみな気持ちの方が大きかったですね。

一回戦の相手は、パリオリンピック日本代表であり、同じ石川県出身、同じダンススクールで育った幼馴染で親友のHiro10でした。そして決勝戦で対戦したのは、「Body Carnival」のチームメイトであるISSIN。どちらも長い時間を共に過ごしてきた仲間であり、自分にとって特別な存在です。実は、Hiro10やISSINは以前からRed Bull BC Oneの世界大会に出場していて、活躍する姿を近くで見てきました。その一方で、自分だけがその舞台に立てない時期もあったんです。

だから今回、自分も同じ場所に立てたこと自体が感慨深かったですね。しかも、一回戦と決勝でバトルしたのが、その仲間たちだった。敵と戦うという感覚はまったくなくて、むしろ子どもの頃から切磋琢磨してきた仲間と、世界最高峰の舞台で踊れていることがとてもうれしかったです。勝敗以上に、その瞬間そのものを全力で楽しんでいたという感覚が強く残っています。



Q/世界最高峰の大会は、どんな気づきを与えてくれましたか。
「Red Bull BC One World Final」の決勝では、審査員5人のうちISSINに3票、僕に2票というジャッジが出て準優勝となりました。ISSINを支持したジャッジは彼のようなパワームーブを得意とするダンサーで、僕に票を入れてくれたのは、自分らしいスタイルや表現を大切にしている方々でした。だから結果には納得していましたし、すべてを出し切ったうえでの準優勝だったので悔いはありませんでした。

大会を通して強く感じたのは、「何を表現するか」の大切さです。ブレイキンにはさまざまなスタイルがありますが、世界のトップで評価されるダンサーには必ずその人にしかない個性があります。僕がブレイキン界で尊敬しているは、KAZUKI ROCKさんやカザフスタン出身のamir選手で、2人に共通しているのは、誰にも真似できない独創性を持っていることです。
以前の僕は、世界大会に出ることや優勝することを大きな目標にしていました。しかし実際にその舞台を経験した今は、「Red Bull BC One World Final」の舞台で優勝したいと思う一方で、自分らしい踊りを探求したいという気持ちもあります。ダンスはスポーツであると同時にアートでもあります。だからこそ周囲の評価や結果だけを追うのではなく、自分にしかできない表現を磨き続けたい。今回の経験は、そんな自分の軸を再確認する機会になりました。
そして、その表現を磨くためにはダンスだけをやっていればいいとも思っていません。自分とは異なる価値観を持つ人と出会ったり、これまで知らなかった考え方に触れたりすることで、新しい発想や表現が生まれることがあります。大学で学び、多様な人たちと関わってきた経験も、今の僕のダンスを形づくる大切な要素になっています。
そうした経験を通して、「人の心を動かす表現とは何か」を以前より深く考えるようになり、自身の研究テーマとしています。

Q/経営学部4回生でもあるharutoさん、卒業論文の執筆テーマは?
スタジオジブリのファンなので、世界中の人々を魅了し続けるジブリ作品のビジネスモデルを研究テーマにしました。中でも『千と千尋の神隠し』に着目して、どのように価値を創造し、多くの人に愛されるブランドを築いてきたのかを分析しています。
卒業論文では、その研究から得られた知見をブレイキンにどう応用できるのかについても考察しています。ダンスの魅力は感覚的に語られることが多いのですが、その価値や面白さを言語化できれば、ワークショップやレッスンで教える時にも、より多くの人に伝えられるはずです。
また、ジブリ作品がそうであるように、人の心を動かす表現には必ず理由があると思っています。僕自身もダンサーとして、自分の表現がなぜ人に伝わるのか、何に魅力を感じてもらえているのかを深く考えるようになりました。卒論を書く中で、これまで感覚的に捉えていたものを言葉に置き換える力が身についたと思いますし、そのプロセス自体が、僕が目指す“表現者”になるために必要な学びだったと感じています。


Q/大学生としての経験が、自分のダンスにも影響を与えたと思いますか?
卒論もそうですし、ブレイキンと大学の両方があったから今の自分が形づくられていることは確かです。「ダンスに活かしたい」という想いは、授業を受けるモチベーションにもなりましたし、なによりゼミの増谷博昭教授の存在が大きかったですね。大会への挑戦を応援してくださっただけでなく、卒論の進め方も本当に丁寧に指導してくださいました。時には厳しく向き合っていただくこともありましたが、そのすべてが自分の成長につながったと思っています。増谷先生から学んだことは、今後の人生においても大きな財産になるはずです。
また、大学でさまざまな価値観を持つ人たちと出会い、話し、学べたことも大きな収穫でした。ブレイキンの世界だけにいたら出会えなかった考え方や視点に触れたことで、物事を多角的に捉える力が身についたと思います。そうした経験は、自分らしい表現を追求するうえ大きな力になっています。振り返ってみると、大学に進学するという選択は、ダンサーとしての自分を成長させるためにも必要なものだったと感じています。

Q/学内外で高い評価を受けた学生に贈られる、京都橘大学2025年度特別学生表彰も受賞されましたね。
もちろん受賞はうれしかったのですが、それ以上に印象に残っているのは、ほかの受賞者の皆さんの活動を知れたことでした。
例えば、書道コースの学生が日展に入選していたり、研究論文が国際学術誌に掲載されていたりと、それぞれが異なる分野で高いレベルの挑戦をしていて、本当に刺激を受けました。同じ大学にこんなにもすごい学生がいるんだと知る機会になりましたね。
ダンスの世界にいると、どうしても自分の分野だけに目が向きがちです。でも、大学にはさまざまな夢や目標に向かって努力している人がいます。そうした仲間たちの存在を知れたことも、大学で学んだからこそ得られた大きな財産だと思っています。


Q/卒業後のビジョンを教えてください。
本当に悩みましたが、今はダンサーとしてもう一段階成長したいという想いが強く、卒業後は就職ではなくプロダンサーの道に進むことに決めました。もちろん、就職しながら好きなことを続けたり、仕事で得た経験を自分の活動に生かしたりする道も素晴らしい選択だと思います。ただ、自分の場合は、今しかできない挑戦に全力で向き合いたいという結論に至りました。
ダンスの奥深さは、ある人にとってはスポーツであり、ある人にとってはアートであり、またある人にとっては趣味でもあります。その人が表現したいものを、自分らしいスタイルで自由に表現できることこそ、ダンスの最大の魅力だと思っています。
世界大会を経験した今は、勝敗や結果だけではなく、自分にしかできない表現をもっと追求していきたいという気持ちが強くなりました。ショーケースやワークショップ、そして大会などを通して、今の僕にしか生み出せない表現を、より多くの人に届けていきたいと思っています。

Q/大学でも好きなことを続けたい。無二の夢を抱く高校生に向けてメッセージをお願いします。
京都橘大学に進学して、本当にたくさんの人と出会いました。そのおかげで視野が広がりましたし、自分の考えや表現を深めることもできたと思っています。ブレイキンに限らず、スポーツでも文化活動でも、何かを本気で続けている人にとって、多様な価値観に触れることは必ずプラスになるはずです。
もし今、好きなことを続けるか、大学へ進学するかで悩んでいる人がいるなら、僕は「どちらか一方を選ぶ」のではなく、「どちらにも本気で挑戦する」という道もあることを伝えたいです。もちろん簡単ではありませんし、努力も必要です。でも、好きなことと学びの両方に向き合ったからこそ見える景色があると思います。
僕自身、大学に進学したことでダンサーとしての可能性も広がりました。だからこそ、今は答えが出ていなくても大丈夫。まずは一歩踏み出してみてください。その経験が、きっと自分だけの未来につながっていくと思います。

<ここがDISCOVERY!>
- 「ダンスか、進学か」ではなく、両方を選んだ4年間
- 世界最高峰の舞台「Red Bull BC One World Final」で準優勝
- 多様な価値観との出会いがブレイキンの表現力を深化
- 卒業論文は、ブレイキンの魅力発信に活かせるテーマを探求中
- 卒業後はプロダンサーとして新たな挑戦へ
■Red Bull BC One World Final
Red Bull BC One World Finalは、世界最高峰の1対1ブレイクダンスバトルを決定する国際大会。世界各国で開催される予選大会「Red Bull BC One Cypher」を勝ち抜いたB-Boy・B-Girlや、世界トップレベルの実力を持つ招待選手が集結し、頂点の座を懸けて激突する。2025年大会は、ブレイキン文化の聖地の一つである日本・東京の両国国技館で開催され、世界中から集まったトップブレイカーによる熱戦が繰り広げられた。技術力だけでなく、音楽性や創造性、個性あふれる表現力も評価される本大会は、ブレイキンカルチャーの魅力と進化を世界に発信する最高峰の舞台として高い注目を集めている。
https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-bc-one-world-final-tokyo
■Body Carnival CREW
2005年に京都で結成された日本を代表するブレイキングチーム。個々のダンサーが持つ独自のスタイルと高い技術力、チームならではの創造的な構成力を武器に、国内外の数々の大会で実績を残してきた。世界的なクルーバトル「BATTLE OF THE YEAR」や「R16」などへの出場経験を持ち、強い結束力から生まれるパフォーマンスは世界的にも高い評価を受けている。現在も競技活動に加え、後進の育成や地域貢献にも積極的に取り組んでいる。
http://www.bodycarnival.com/
■KAZUKI ROCK(桑原 和樹)氏
京都を拠点とする世界的ブレイキングチーム「BODY CARNIVAL CREW」の中心メンバー。卓越した技術と独創的なスタイルを武器に国内外の大会で活躍し、後進の育成やブレイキング文化の普及にも力を注いでいる。
http://www.bodycarnival.com/profile/kazukirock/
■AMIR ZAKIROV(アミル ザキロフ)氏
カザフスタン出身のB-Boyで、「B-Boy Amir」の名で世界的に知られるトップブレイカー。2021年にはブレイキング最高峰大会「Red Bull BC One World Final」で優勝。卓越したパワーと独創的なスタイルを武器に活躍し、2024年パリオリンピックにも出場した。
https://www.instagram.com/amir_pdvl_predatorz/
■Hiro10(大能 寛飛)氏
石川県出身のB-Boyであり、世界トップクラスの実力を誇るブレイキングダンサー。ダイナミックなパワームーブを武器に数々の国際大会で優勝を果たし、2024年パリオリンピック日本代表としても活躍。世界のブレイキングシーンを牽引する若手選手の一人である。
http://bboyhiro10.com/
■ISSHIN(菱川 一心)氏
岡山県出身のB-Boyで、世界的ブレイキングチーム「BODY CARNIVAL」所属。爆発的なパワームーブと高い完成度を武器に世界で活躍し、2025年には東京で開催された「Red Bull BC One World Final」で優勝。日本を代表する次世代ブレイカーである。
https://www.redbull.com/jp-ja/artist/issin
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