Event Report

「救急救命士として、社会や人の役に立ちたい。」
この思いが学生たちの自ら学び、自ら鍛える姿勢を支えています。

イベントレポート

2020.05.15

人の命を守るうえでなくてはならない、救急救命士の重要性が注目されています。京都橘大学の健康科学部救急救命学科の学生たちが救急救命の技術・知識を競う「第12回 西日本学生救急救命技術選手権(2019年11月開催)」に参加し、優勝を飾りました。同学科の福岡範恭先生に、学生たちの大会出場に向けての準備をはじめ、大会当日の様子などをインタビューしました。

健康科学部 救急救命学科 福岡 範恭専任講師
<専門分野>
救急救命学/組織心理学
<研究テーマ>
・救急救命士の職場環境、バーンアウト、モチベーションに関する研究
・バイスタンダーサポートに関する研究
・病院前救護教育に関する研究

Q/「西日本学生救急救命技術選手権」とは、どのような大会ですか?

「西日本学生救急救命技術選手権」は、全国の救急救命士を養成する大学や専門学校約40校で組織する一般社団法人全国救急救命士教育施設協議会(以下、JESA)が主催しており、JESA会員校の学生たちの技術・知識を競い合うことにより、救急救命技能の向上に資することを目的にしています。また、4つの地区からなる北日本・東日本・西日本・南日本大会の地区大会と各地区上位2校による4年に1度の全国大会があります。この大会では「内因性(脳血管)」「外傷」など6つのステージが設定され、隊員の活動やチームワークが評価表に基づき評価されます。そして、各ステージの順位点の合計で総合順位が決まります。

京都橘大学が、この大会に初めて出場したのは2011年のことでした。毎年上位入賞を果たしており、2018年度は西日本のブロック大会で優勝したばかりか、全国大会では準優勝という結果を得ることができました。3回生の6人で構成されるチームで、本当によく頑張ったと思います。

第12回大会(西日本ブロック)に参加した『橘救急隊』の学生たち

Q/京都橘大学のチームはどのように選んでいるのですか?

実は学生の自薦です。ただ単に優勝を狙うのであれば、私たち教員が上回生の学生を指名して徹底的に指導すれば良いでしょう。ですが、出場者を教員が指名せずに、学生の自薦というところに京都橘大学の良さが現れていると思います。

大会は毎年11月頃に開催されます。春頃や夏頃など、その年によってさまざまですが、学生が自分たちでチームをつくり、出場したいと申し出てきます。出場するのは6人で、同じ学年だけの年があるかと思えば2・3回生の混合チームの年もあります。このように出場者の選出は学生の意思に任せて、学年構成もまちまちな京都橘大学ですが、毎年上位となっており、強豪チームとして知られています。学生も、自分たちのチームが京都橘大学の伝統を受け継がなくてはならないと真剣にトレーニングに励んでおり、その姿は見ているだけで胸が熱くなるほどです。

Q/出場するための準備とは、どのようなことをするのでしょうか?

大会では、救急救命活動が必要な6つのステージで技術を競うといいましたが、当日、その場に行くまで、どのような場面が設定されているのかはわかりません。そのため勉強したことをすべて復習し、6人が各自の役割を理解して行動するためのトレーニングを行います。これは学生だけで行うのですが、毎日、授業後に遅くまで残っています。ちなみに私たち教員も、チームから要請があれば指導に行きます。さらに、自分たちでOB・OGに連絡をとってサポートをお願いしています。学生にとっては身近でありながら憧れの存在でもあるOB・OGは、すでに救急救命士として活躍しているため、救急救命の現場を体験している先輩ならではの厳しい指導を受けられるというのは、学生たちにとってとても勉強になると思います。

Q/トレーニングを重ねて準備万端でも、大会当日はやはり緊張するのではないでしょうか?
学生の様子を教えてください。

準備はしっかりしていても、京都橘大学は強豪チームという伝統を守り、さらに良い結果を出したいというプレッシャーで緊張しています。また、大勢の人が見ている中で活動することに慣れていないということもあります。ですが、実際の救急救命の現場でも、たくさんの人が見ている中で活動しなければならないことも多く、良い経験になると考えています。

Q/大会出場を経験した学生には、どのような変化があるのでしょうか。

自分たちでトレーニング内容を考えて、OB・OGのサポートも自分たちで依頼して、限界に挑戦するかのようにトレーニングに打ち込み、当日は今までに経験をしたことのないような環境で技能を競うというのは、学生にとってはすべてがハードルの高いことです。しかも、他者から要請されたのではなく、自分で挑戦すると決めているわけですから、辛いときは後悔することもあるのではないでしょうか。また、トレーニングを重ねるうちに、チーム内で考え方が食い違ってぶつかることもあります。それだけ皆が真剣になっているということですが、若い彼らにとっては割り切れないこともあると思います。このようななかで、粘り強くトレーニングを続けるうちに、次第に自分のことで精一杯だった学生がお互いのことを考えて行動できるようになります。そうなると全員の顔つきが変わり、チームの雰囲気が一変します。そして、授業に対する姿勢やまわりに良い影響を与える力が備わってきます。「万一のときには、こんな救急隊員に来てもらいたい」と思うような存在になっています。

Q/京都橘大学の救急救命士国家試験合格率が100%というのは、
大会に出場するなど実践的に学ぶ機会が多いからでしょうか?

それはあると思います。救急救命士は、知識と技術と経験が必要な専門職です。大会では、どのような場面が設定されているのかがまったくわからないため不安になるのですが、この体験を通じて現実はもっと厳しいということを、身をもって感じます。だからこそ、もっと学ばなければいけないということにも気づきます。この気づきを通じて、国家試験に合格することがゴールなのではなくスタートと考えて、勉強にも力が入るのです。

さらに、トレーニングの際には、周りの学生に依頼して手伝ってもらいます。周りの学生を巻き込むことで良い刺激が広がり、大会後は出場した学生を中心に前向きな良い空気が生まれます。この流れに乗って、皆で合格に向かって頑張ることが良い結果につながっていると思います。

Q/では最後に、救急救命士をめざしている高校生にメッセージをお願いします。 

全国には救急救命士を育成する大学は約20校あります。そのなかでも本学は、救急救命士として現場で活動してきた経験を持つ教員が多数在籍し、実践的に学ぶ機会や大会出場、医療系の学会で発表するなど、学生が自主的に活動し、活躍する機会に恵まれた大学です。

今、全国的に災害が頻発するようになり、救急救命士の需要が増えると同時に、より高度な救命技術が求められるようになっています。そのため、4年間じっくり学ぶことはとても大切だと思います。この分野で社会の役に立ちたい、人の役に立ちたいと考えている人は、ぜひ、京都橘大学で学んでください。

ここがDISCOVERY!

・京都橘大学は、「学生救急救命技術選手権」の強豪として知られている!
・出場するメンバーは自薦で決定。学生が積極的に学ぶ姿勢が現れている!
・健康科学部救急救命学科には救急救命士として現場で活動してきた教員が多数在籍!OB・OGとのつながりもありサポートが充実!

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