「いつかこんなことができたら」と二人三脚で挑みつづける!ハンドベル自動演奏装置でヒューマンインターフェースシンポジウム2024で優秀プレゼンテーション賞を受賞!
インタビュー
2024.12.11
情報技術の進歩によって「いつかこんなことができたら」という夢が実現できる世の中。2021年に開設した京都橘大学工学部情報工学科でも、最新の機器を活用し、学内でモノづくりに没頭する学生の姿が多く見られます。杉浦昌教授と二人三脚で、ハンドベル自動演奏装置を製作した樋口雅裕さんもそのひとり。27個のハンドベルが奏でる華やかな音色を聴きながら、お話を伺いました。
工学部情報工学科2回生 樋口雅裕さん
工学部情報工学科 杉浦昌教授
IT企業勤務を経て、2017年に本学着任。2021年より工学部情報工学科教授に就任。
<専門分野>情報セキュリティ、情報ネットワーク、通信工学
<キーワード>セキュリティマネジメント、システムセキュリティ、IoTセキュリティ
※2024年11月にインタビューしたものです
Q/ハンドベル自動演奏装置の制作に取りかかった時、樋口さんはまだ1回生だったとか。研究室への所属が無い中、杉浦先生とはどのようにして出会ったのですか。
樋口/入学してすぐ、工学部の全員が履修するアカデミックスキルという基礎クラスがありました。グループワークで仲間と情報を共有しながらモノづくりをしたり、効果的なプレゼンテーションの方法を学んだりする、そんな内容です。僕は迷路を攻略していく車の仕掛けに取りかかっていたのですが、想像以上に難しく困り果てていました。そんな時、杉浦先生が私に声をかけアドバイスをくださったことが最初の出会いです。
樋口/杉浦先生はアカデミックスキルのクラス担当ではなかったと思いますが、あの時どうして私に声をかけてくださったのですか?
杉浦/樋口くんがあまりにも一生懸命だったから。授業がある時以外はクリエーションラボに来て、学生が利用できるスペースで朝から晩までモノづくりをやっていたよね。その熱心な姿が印象的で「君は何をやっているの?」と声をかけたのが始まりでした。
Q/樋口さんが京都橘大学を選んだ理由のひとつに、学生と教員の距離の近さがあったとか。
樋口/入学前から京都橘大学の情報を集める中で、教員の方と学生の距離が近いという特徴があることを知り、そこに大きな魅力を感じていました。僕は幼い頃からモノづくりが大好きで、中学でプログラミングにはまり、高校では勉学とモノづくりに。大学は情報工学科に進もうと決めておりました。周囲のサポートも手厚そうだし、自分のやりたいことを形にできる環境だと感じて京都橘大学を選びました。
杉浦/確かにそういう校風はあると思います。私は長年、企業に勤務してきましたので大学に勤めるのは本学が1校目。実際に来てみればわかりますけれど、教員と学生の距離はもちろん、職員の方たちと学生のやりとりも境界がないといいますか。カリキュラムの組み方にしても、様々な人と人との関係が密接になるよう設計されていると感じています。
Q/長年お勤めになった企業から大学へ、杉浦先生が働く環境を変えた理由をお教えいただけますか。
杉浦/国内外のITに関わるメーカーで、ソフトウェアからハードウェアまで様々なモノづくりに携わっていました。LSI(※1)やPC、ネットワークを作ったり、セキュリティを担ったりと幅広い仕事をさせてもらって、企業人としてある程度の区切りがついたと思えました。ここから先はモノづくりの技術やマインドを若い人たちに引き継いでいきたい、という想いが強くなっていったことがきっかけですね。
※1LSI(Large-Scale Integration)とは、大規模集積回路を指す。半導体の小片の表面に微細な電子部品や配線を大規模に集積した装置。
Q/モノづくりがおふたりの共通項ですね。今回はなぜハンドベルを製作されたのでしょうか?
樋口/高校生の頃から自動演奏の機械を作るのに興味を持っていました。大学へ進学し、モーターの回転数で音が鳴る、ちょっと特殊な作品を持ってきて杉浦先生にお見せしたことがありました。
杉浦/モーターの回転音でブーブーと鳴るだけなので、正直これは地味だな~と思いました(笑)。地味が悪いとは言わないですけど、せっかく新しいチャレンジをしているのにインパクトが弱い。少し目線を変えた方がいいねと話をしているうちハンドベルに辿り着きました。ハンドベルにソレノイドという電磁石の部品をつければ、マイコンで鳴らせるのではないか?というところから開発がどんどん進んでいきましたね。
樋口/あらゆる年齢のメイカー(つくる人)が参加するDIYの展示発表会「Maker Faire Kyoto」や京都府主催の「京都まなびフェスタ」といったイベントへの出展、情報処理学会の全国大会での発表など、学外活動にも積極的に参加しながら、そこで集まった方々からご意見もいただき、改良の糸口や新しい観点を得ることができました。
Q/2024年9月には、「ヒューマンインターフェースシンポジウム2024」に参加。ハンドベル自動演奏装置を用いた研究発表で、優秀プレゼンテーション賞を受賞されたそうですね。
樋口/よりよい世界を実現するための装置やソフトウェアなどの総称、ヒューマンインターフェース。その研究者やユーザーが一堂に会する学会最大のイベント「ヒューマンインターフェースシンポジウム2024」で評価をいただけて、これまで頑張ってきて良かった!と思いました。それまでもコンテストやイベントに参加したい気持ちはありましたが、何からどう着手すればいいのかわかりませんでした。シンポジウム参加に向けて、杉浦先生にご教示いただきながら論文を推敲し続ける作業はとてつもなく苦しかったけれど、とても貴重な経験でした。
Q/シンポジウムで発表した内容とは?
樋口/マイコン制御の自動演奏と、私がこの鍵盤を使ってハンドベルを動かした演奏、比較すると人はどう感じるのか。簡単に言うと機械か人間か、どちらで奏でた方がよい音に聞こえるのかを、音楽経験がある人とない人にアンケートを取ってデータを可視化しました。今回は音楽経験のある人は自動演奏にあまりいい印象を持たない、という傾向が見られました。
杉浦/目標や達成したいこと、それをどうやって実現したかという研究内容が明確な論文であり、プレゼンテーションだったと思います。論文は本当に苦労していたようですけどね。これまで私の経験から言っても、ほとんどの研究は、先が見えずに苦しかったですよ。でも、苦しい先に楽しみがあることもまた事実なんですね!新しいことにチャレンジすることがモノづくりの本質。モノづくりをやる人は一生そこから離れられない、なぜなら何と言っても楽しいからです。
Q/今後のビジョンをお聞かせください。
樋口/卒業後は、IoT関連の仕事に就き、生活をする上で必要となるモノを開発したいです。今、学内有志メンバーと共にバス発車案内システムを制作するプロジェクトが結成され、まさに学内で実証実験を行なっています。これは学生からこんなものがあったら便利だなというつぶやきから生まれたもので、複数の公共交通機関のダイヤや運行状況を解析して統合、リアルタイムの運行案内をデジタル時刻表に表示するシステムです。これに続き、ソフトウェアとハードウェアの両方を視野に入れた、実用性の高いモノづくりを探求していきたいです。
杉浦/情報工学科の学生の多くは、もともとモノづくりが好きです。好きなことを見つけて力をつけて、卒業研究のテーマにして、それを強みにして就職していく人も珍しくありません。情報工学を学ぶ上で必要なのは、ハードウェアでもソフトウェアでもアルゴリズムでも理論でも、モノを作ったり生み出したりするのが好きかどうかだけです。私自身は、プログラミングの基礎知識のあるなし、理系の人間かどうかも選択時に関係ないと感じます。挑戦したいことがあって、「いつかこんなことができたら」と夢を広げてやり遂げたい気持ちさえ持っていれば、情報工学科できっと成長できると思いますよ。
<ここがDISCOVERY!>
- モノづくりに一生懸命すぎる樋口さんに強烈な印象を抱いた杉浦教授が気になり声をかけたことが最初の出会い
- まだ研究室配属されていない2回生の樋口さんを杉浦教授がサポート
- 苦しい先に楽しみがある。チャレンジすることがモノづくりの本質
- 「いつかこんなことができたら」を追い求め探求心を持つ気持ちが大切
- 学内有志メンバーとバス発車案内システムを制作するプロジェクトを結成し、学内の声「あったらいいな」をシステムで実現
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