2026年4月工学部ロボティクス学科※新設!AIロボティクスが切り拓く、新しい共創社会の担い手になろう!
インタビュー
2025.05.29

最近話題のAIロボティクスとは、AIや情報技術を駆使してロボットを運用し、人間の暮らしを豊かにする未来を創造していく学問です。産業を発展させることはもちろん、私たちの日常にも寄り添うロボットとは?!ロボットと人間の関わりについて考えるHAI(ヒューマンエージェントインタラクション)の第一人者であり、2026年4月から工学部ロボティクス学科※長に就任予定の小野哲雄教授に京都橘大学だからこそ学べる、AIロボティクスの未来についてお聞きしました。
工学部情報工学科 小野 哲雄教授
(2026年4月から工学部ロボティクス学科長就任予定※)
※2025年5月にインタビューしたものです
Q/現代社会においてすでに自動車、医療、農業、製造など幅広い分野で活用されているAIロボティクス(ロボット工学)の技術。機械の設計や製造の技術を学ぶ学問である機械工学との違いは何なのでしょうか。
機械工学に基づくロボット、いわゆる工場型ロボットに求められるのは、工場の組み立てラインなど変わらない環境で、決められた動作を正確に行うことです。一方で、AIロボティクスがめざしているのは、人間とロボットが共生する社会の実現です。活用される社会参加型ロボットは変化する環境に適応し、時にはロボット自身で判断もします。そして最も大きな違いは、コミュニケーションの有無ですね。最近では、生成AIが話題ではありますが、AIが登場してからのロボットは、コミュニケーション力が急速に高まっています。人間とのコミュニケーションが不要な工場型ロボットに対して、社会参加型ロボットは人間とのコミュニケーションが必要です。これらのコミュニケーションにどう向き合うか、生成AIに次ぐトレンドとしてAIロボティクスが注目されていくのだと思います。



Q/小野先生のご専門分野、HRI(ヒューマンロボットインタラクション)、HAI(ヒューマンエージェントインタラクションとはなんでしょうか?
HRIは人間とロボットの相互作用、HAIは人間とエージェントの相互作用を意味します。どちらも対人間についての研究になりますが、エージェントの方が広い概念でありAIもロボットもエージェントに含まれます。私が研究を始めたのは1998〜1999年あたり、世界的に見ても先駆けだったと思います。大阪・関西万博でシグネーチャーパビリオン「いのちの未来」をプロデュースされた大阪大学の石黒浩教授、そして慶應義塾大学にいらっしゃる今井倫太教授らと研究交流し始めたのもその頃です。


Q/ HAIにはソフトウェアも含まれるのですね。
そうですね。ソフトウェアの研究として20年以上前から関わっている、魂を自らに憑依させるイタコに由来して命名したITACOプロジェクトというのがありまして。簡単にいえば、エージェントがさまざまなメディアに乗り移って、ユーザーと行動を共にして情報を集め、その傾向を記憶することでユーザーに特化した支援を行ってくれます。例えば、外出する時はユーザーの服に装着したウェアラブルPCに乗り移り(動画参照)、日常生活における様々な助言を行ったり、ホテルの部屋に到着したらランプに乗り移って好みの明るさを調整してくれたりと。いつもそばにいるエージェントは、漫画『ど根性ガエル』 のピョン吉をイメージしてもらえれば、わかりやすいかもしれません。
Q/『ど根性ガエル』が現実のものに!それは面白そうですね!ITACOプロジェクトのキャラクターづくりで意識されたことはありますか。
これからの高齢化社会、介護で自動化できる部分はロボットに頼らざるを得ない状況がやってくるでしょう。どれだけ人を支えられる優秀な機能が備わっていても、見知らぬ冷酷そうな見た目のロボットでは一般の人は恐怖を感じてしまうだけです。社会参加型ロボットの中でも癒し系として有名なのが、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルにした『PARO』。可愛い、触り心地がいいといった人の主観的評価を重視してつくられていて、人に楽しみや安らぎなど精神的な働きかけを行うことを目的としています。研究室にあるペットロボの『aibo』、私が開発に携わったコミュニケーションロボットの『Robovie』もそうですが、人から親しまれる要素も社会参加型ロボットに大切な要素になっています。



Q/研究交流を続けてこられた大阪大学の石黒浩教授といえば、ご本人と見間違いそうなアンドロイドが有名ですね。
人間とよりよい関係を持てる、人間らしいロボット研究のひとつとして、彼は分身のようにそっくりなアンドロイドをつくり出しました。彼がロボットをつくる理由は、自分と「人間について知りたいからだ」と語っています。AIロボティクスは、「人間とは?」「自分とは?」という哲学的な問いと、深く関係していると思います。実際にロボットをつくってみると、なぜ人間の腕はこんなに柔軟に動くのか、なぜ瞬時に空間を認識することができるのか。人間がどれだけ精巧で賢い生物なのかが改めてわかる。ロボットは人間の鏡になってくれる存在だと感じます。

Q/2026年に完成予定の新棟「ACADEMIC TERRACE」に学びの場を置く、工学部ロボティクス学科※。そんな新しく開設される学科の学びの特徴を教えてください。
ロボティクス学科※は、機械、電気電子、計測・制御、AI・情報、さらに心理まで、様々な専門分野をバランスよく学べる環境になると思います。各分野の中でもやはり注目されているのが、さきほどからお話しているHRIやHAIの分野が充実している点。単なる機械工学だけではなく、ロボットをつくれる、動かせる、そして人のために活用できる力を身につけられるカリキュラムを数多く準備しています。AI研究の第一人者である松原仁先生をはじめとする、著名な教員から学べることも大きな魅力です。
また、2026年に完成予定の新棟「ACADEMIC TERRACE」で学べる点も非常に大きな要素であると考えます。工学部ロボティクス学科※に加え、デジタルメディア学部デジタルメディア学科※、健康科学部臨床工学科※も同時に新設され、10学部18学科がワンキャンパスに集まる総合大学になります。新棟を中心として学部の垣根を超えた出会いとイノベーションが生まれる学びのコミュニティへ発展していきます。実は、新設される臨床工学科長就任予定の髙橋純子教授※とも話をしていて…。「人が入れない、ネットワークも通じない、そんな場所で作業したり、人を救助したりするロボットの研究ができないか」など、他学部との連携も検討しています。まさにワンキャンパスだからこそ、領域を超えて研究できることが京都橘大学の魅力ですね。

Q/小野先生がお考えになる、人間とロボットが共生する未来とは?
生化学者でありSF作家のアイザック・アシモフが提示し、大きな影響を与えたロボット三原則には「ロボットは人間に危害を加えてはならない」「ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない」と記されていて、それは現代のAIロボティクスにも言えること。社会参加型ロボットの役割はあくまでも人間のサポートで、最後の決断は人間がするべきだと考えています。ただある程度の自律性がないと、さきほど話した災害時の救助などでロボットが人間をサポートすることが難しいかもしれません。ですので、すごく困った時は自律性を持って助けてくれる、人間にとって控えめな隣人のような存在になることが、ロボットの理想かもしれませんね。ロボットに違和感を感じとれることが、私たち人間が未来社会においても担うべき役割だと思います。

Q/最後に、ロボティクス学科※に興味を抱く若者にメッセージをお願いします。
以前、教授をしていた北海道の公立はこだて未来大学でもそうだったのですが、新設される学科の1期生、2期生というのは非常に面白くて頑張る人が集まるんです。モチベーションが飛び抜けていて、学力だけでは測りきれない熱意を持っている人が多かった。京都橘大学の工学部ロボティクス学科※もそういう人材が来てくださると予感しています。ロボットにAIを活用して、まだこの世にない新しいことにチャレンジしたいモチベーションを持っているのであれば、実現する環境は整っていますので、ぜひいろんな興味を持った学生に学びにきてほしいと思います。AIとロボットをどう活用していくのか、京都橘大学で学ぶからこそ可能性の幅が広がる・・・そんな学生生活を送って欲しいと思います。
〈ここがDISCOVERY!〉
- 2026年4月工学部に、『ロボティクス学科』を新設!
- HAIやAI研究の第一人者、日本のロボティクスをけん引してきた教授陣から直接AIロボティクスを学べる!
- 新棟「ACADEMIC TERRACE」で最新の設備を使った実験や研究に触れる!
- AIロボティクスの研究には、「人間とは?」「自分とは?」という哲学的な問いと深く関係している!
※仮称。2026年4月開設予定(設置構想中)。計画は予定であり変更することがあります。
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