2026年4月健康科学部臨床工学科※新設!
テクノロジーと医療で命をつなぐ
医療機器のエンジニア、臨床工学技士の魅力とは?!
インタビュー
2025.06.06

2026年4月、いよいよ新設される健康科学部臨床工学科※では、免許取得はもちろん、臨床工学技士としての可能性を押し上げる発展科目が充実。
「情報につよい臨床工学技士」「機器開発ができる臨床工学技士」「病院管理者をめざす臨床工学技士」という、医療技術で未来を拓く次世代の臨床工学技士を養成します。
健康科学部 臨床工学科※
髙橋 純子教授
(2026年4月から健康科学部臨床工学科長就任予定※)
※2025年5月にインタビューしたものです
Q/看護師や理学療法士などと比べ、普段の生活の中で関わることが少ない臨床工学技士。医療現場でどのような役割を担っているのか。臨床工学技士のリアルを教えてください。
臨床工学技士の主たる仕事は、人工呼吸器や人工心肺装置、血液透析装置、コロナ禍で話題になったECMO(体外式膜型人工肺)といった、生命維持管理装置を操作・保守・点検することです。集中治療室、手術室、人工透析をおこなっている施設で患者さんの命を見守っています。600床規模の病院であれば1万点を扱うと言われている医療機器を一括管理し、中には1cc単位の薬液を1時間かけて体内に入れる機器もあります。高度化する医療機器を管理して精度を常に保こと、いつでも安全に使用できることは非常に重要です。


Q/髙橋先生はもともと看護師だったそうですが、なぜ臨床工学技士に?
看護師として働いていた時、心臓専門の集中治療室に勤めたことがありました。そこで治療を受けているのは生死の境にいて、命を維持するために医療機器が不可欠な方々。医療機器が稼働中に予期せぬアラームがなれば、その都度、臨床工学技士を呼ばなければなりません。患者さんの生命をつなぎとめる医療機器についてもっと理解したいと現場で感じたことが、臨床工学を学び始めたきっかけです。臨床工学技士は、治療を支える仕事。ここに介入したかったのです。そこから専門学校に通って資格を取得し、臨床工学技士として病院勤めを経験。大学院でさらに学びを深めてから、看護師と臨床工学技士、2つの資格を活かせる環境として、教育現場に飛び込みました。

Q/近年のAIやIoT、ロボティクスなどの技術革新、働き方改革に伴って、臨床工学技士の業務内容も変化しているのでしょうか。
手術支援ロボットといえば、テレビドラマ『ブラックペアン』で二宮和也さんが演じた天才外科医のオペシーンで目にした人も多いのではないでしょうか。医師が患者に触れず、患部の画像を見ながら遠隔操作でアームを動かす「ダヴィンチ」や「hinotori」といった手術支援ロボットの保守管理は、臨床工学技士が担っている病院が多いと思います。
さらに2021年には臨床工学技士法の改正があり、臨床工学技士としてできる業務が拡大。集中治療において輸液管理が必要な際に、静脈へ穿刺すること、内視鏡外科手術のビデオカメラの操作、人工透析における表在化動脈への穿刺針(せんししん)など、これまで医師などが行っていた医療行為を臨床工学技士が行えるようになりました。また、過疎などの地域においては医療機関に通うことが困難な方もいます。そのような方には遠隔医療など医療サービスを提供することも徐々に増加しており、教育課程でシステム工学や情報工学を学んでいる臨床工学技士はこれらの部門にも参入することが可能です。「医療知識」だけでなく、「新たなテクノロジー」を活用し、医療機器を通じて医療現場を常にアップデートしています。
医療機器のスペシャリストである臨床工学技士は、今後、これまで以上に大きなフィールドで活躍できる未来が広がっていると思います。



Q/これからますます必要とされる場面が増えるであろう、臨床工学技士をめざす人へ。京都橘大学に誕生する臨床工学科※の魅力を教えてください。
Q/京都橘大学がめざす臨床工学技士のイメージは、3つあります。1つ目は「情報に強い臨床工学技士」。AIやIT化が進み、医療機器データの情報分析が必須の時代となりました。ご着任いただく先生に情報分析が専門の方もいらっしゃいますし、情報系の学科ともクロスオーバー教育をしながら情報に強い人材を養成したいと思います。

2つ目は「機器開発ができる臨床工学技士」。さきほどの手術支援ロボットもそうですけど、医工連携というトレンドはすでに医療業界に根付いています。臨床での「もっとこうしたら楽になるのに」というニーズに気づき、アイデアをいかに形にしていくか。自分の力だけではなく異なる分野の人々と連携しながら、4年間かけて身につけてほしいと考えています。私自身、災害時の避難先で円滑な医療支援を受けるためのアプリを2つ開発しました。1つは「災害時緊急医療手帳」というもので、薬の服用状況や医療機器の設定について記録することができます。もうひとつは、いつもと異なる医療機関で治療を受ける時に、今までの治療内容や条件を示すことができる「透析手帳」。普段から災害時を想定し、患者自ら備える必要性を感じています。
また食事制限のある透析患者さんに向けた「寄り添うデザート」も避難所での体験から生まれたもの。制限すべきカリウムなどの要素は排除して、果物本来のおいしさが楽しめると好評いただいています。


そして最後の3つ目は「病院管理者をめざす臨床工学技士」です。医療施設で使用される多種多様な医療機器、そのすべての管理を担当するのが臨床工学技士です。医療機器の性能はもちろん、コスト面についても詳しいことから、病院内の財政管理、資材管理を行う病院管理者に適任だと言われています。
Q/京都橘大学ならではといえば、たちばなチーム医療科目群も特徴的です。
医療現場で欠かせないのが専門職同士の連携やチームワーク。たちばなチーム医療科目群では、看護、理学療法、作業療法、救急救命、臨床検査、そして臨床工学の6つの学科が連携し、在学時代からチーム医療としての働き方を学ぶカリキュラムを設けています。連携や協働について学ぶIPW(InterProfessional Work)演習のほか、医療と生命の倫理、医療リスクマネジメントなど、異なる専門分野の学生同士が意見を交わしながら、幅広い知識を見つけることができます。医療の現場は互いが専門性を発揮しながら、患者さんの人生をいかに支えていくかを考えることができる人が真の医療者だと思うんです。例えば、常に患者さんの様子を見ている看護師さんの思いは「人工呼吸器をはずしてごはん食べさせてあげたい」。けれど医師の見解は「検査データが思わしくないから、はずせない」。臨床工学技士であれば「呼吸の設定を変えれば回復が見込めて、はずせるかもしれない」という提案ができるかもしれない。安全を確保しながら患者さんに寄り添う医療に貢献できる、貴重な立場だと思います。


Q/以前は北陸大学にいらして、能登半島方面の災害支援にも参加されたという髙橋先生。京都で挑戦したいことはありますか。
やはり京都でも地域の課題解決に貢献したいと考えています。私自身の研究のカテゴリーが、生命維持管理装置を装着された方の災害対策・支援となります。例えばこの広大なキャンパスを自治体の指定避難所に登録し、大学の設備を災害時に活用するなど、地域貢献につながる可能性が広がれば良いなと思います。臨床工学科※の実習室には医療ガスが入りますし、人工呼吸器をつなげる最新の設備が整います。療養に必要な電動ベッドや吸引装置なども使用できます。災害時、要配慮者がとりあえずここに逃げてくることさえできたら、医療を教える教員も、学ぶ学生もいます。家で人工呼吸器をつけて暮らす人たちが命をつなぐことができる、そんな地域に根ざした学びの場にしていきたいですね。
〈ここがDISCOVERY!〉
- 髙橋先生は、看護師時代の気づきから臨床工学の道を志すと決意!
- 医師だけが行っていた医療行為を臨床工学技士が担う場面も増加!
- 情報に強く、モノづくりができて、病院管理者をめざす人を育てる!
- 6つの医療系学科が連携して行うたちばなチーム医療科目群で視野を拡大!
※仮称。2026年4月開設予定(設置構想中)。計画は予定であり変更することがあります。
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