Interview

実社会とつながる経済学部が2専攻制に!
新しいライフスタイルをデザインする現代社会専攻が2026年4月スタート

インタビュー

2025.09.22

経済同友会や海外でのインターンシップ、企業・自治体とのプロジェクトやフィールドワークなど、実社会と直結した実践的な学びが特色の経済学部は2026年4月、2専攻制として新しく生まれ変わります。多様な視点から現代経済社会にアプローチする経済学専攻に加え、「アースダイブ」をキーコンセプトに掲げる現代社会専攻を新たに開設します。
社会の変化に対応し、新たな未来を切り拓く経済学部の進化に迫ります。

経済学部長
吉川 英治教授

※2025年8月にインタビューしたものです

専門は経済倫理学、経済哲学、経済学史です。「人のしあわせや福祉って何なのか」「どうやって物を分かち合えば正義が実現できるのか」を考えることが学問の原点にあり、アリストテレスの時代から続く、経済学について考えた人々のヒストリーを探検しています。現代社会で忘れ去られてはいけないアイデアを発掘し伝えていきたいと思っています。

経済学を探求するきっかけとなったのは、インド出身の経済学者で、ハーバード大学の名誉教授でもあるアマルティア・センという研究者に興味を持ったことです。彼の本を読んで、これまでの経済学とは違う、なんて面白い考え方なんだ!と思ったんですよね。

例えば、人の福祉やしあわせの指標について考えてみましょう。今は市場経済が主流ですからお金がないとモノを買えないですよね。だから所得がどれだけあるか、増やせるかというのが福祉やしあわせの1番の指標だと思われがちです。所得が増えれば、思うように消費ができて、その結果しあわせを感じるという考え方です。しかしアマルティア・センは所得そのものではなく、所得を使って具体的に何が実現できているか、どういう行為や存在が実現できているのか、ということが最も大切なのだと提唱しました。その考え方の起源を辿ると、やはりアリストテレスの言葉の中にちゃんとあって。そういう根源的な考え方を丹念に拾い上げたくて経済学の道に進みました。

京都橘大学の経済学部は、他大学と一線を画するところがあると思います。経済学部の母体は、2001年4月に設置された文化政策学部です。ちょうど2000年代初頭は、企業が経済的な見返りを求めず文化・芸術活動を支援する企業メセナが広まり、社会課題への意識やアートへの関心が深まったころでした。文化・芸術の振興にまつわる経済のあり方を学ぶ文化政策学部は2008年4月に現代ビジネス学部へと改称。さらに2021年4月に再構築され、経済学部と経営学部が誕生。時代に寄り添った学びであるよう改組を重ねてきた結果、文化、芸術、食、観光をテーマにするなど、学びの領域が広がりました。

そうですね。実際に現場に出てみると、机上で学んだ知識が通用せず目の前の課題の解決の道筋が見えないことがあります。実社会はいろんな要素が関わり合っていますからね。そういう場面では、きっと他学部の多様な学びが役に立つ。ならば学内のカリキュラムもそれに沿った科目群にすべきだと、分野を越えて他学科の専門科目を履修できる「クロスオーバー教育」を行っています。

企業や行政などから提示された課題に対して、複数学科の学生30人程度が混ざり合い、各分野の専門知識を持ち寄って課題解決に取り組んでいきます。2025年は、無印良品 京都山科との提携プロジェクト『無印さん、〇〇してくれませんか?』提案会を実施。実際に無印良品の方からお聞きした課題を受けて、「あなたが考える素敵な未来の社会に向けて、無印良品が変えるべきこと・守るべきこと」をテーマに学生が提案を行いました。
多様な学科の学生が集まり、チームを作って、共通の課題に取り組むことで、社会に出た時に役立つ実行力やコミュニケーション力が身に付きます。

経済学専攻では、現代経済社会において重要性が高まりつつある分野である、「金融・産業」「地域・国際」「公共経済・政策」「医療・社会保障」「観光・文化」という5つのラーニングコースを設定し、将来の進路も見据えて体系的に学ぶとともに、多角的な視点から現代経済社会にアプローチし、社会の課題を解決する力を養います。

現代社会専攻では、「地域社会デザイン領域」、「メディア文化デザイン領域」、「ライフデザイン領域」という3領域を設置し、広く社会について学び、新たな社会や暮らしをデザインする力を養います。フィールドワークを通じて現代社会に深くアプローチすることで、さまざまな問題に多角的な視点から迫り、従来とは異なる発想で課題解決に取り組みます。

技術革新がめざましい現代社会は発展の可能性を秘めながら、一方で地球温暖化や、資源やエネルギー問題、国際的な争いなど、全人類史的な危機に直面しているとも言えます。こうした時代の節目は、学問も大きく変わってきた歴史があります。誰も取り残さず、次の時代へと歩みだすために今必要なのは、新しいライフスタイルや社会をデザインできる柔軟性と創造力。これまでの経済学を見直し、新たに構築する必要があると考えました。

データドリブン思考とは、蓄積された多様かつ膨大なデータを分析し、その結果を根拠に意思決定を行う手法です。経済や社会を学ぶ上でデータ分析は必須ですので、データサイエンスの入口のような両専攻共通科目「データドリブン思考」を設けています。経済学専攻では、「データドリブン思考」を発展させた、専門性の高いデータサイエンス系の科目が充実しています。

一つ目の「地域社会デザイン領域」では、京都の土地柄を生かした観光系の学びも取り入れつつ、人々の暮らしの基本単位である地域の発展や課題解決に挑んでいきます。京都と密着したテーマとしては、日本屈指の古都が直面しているオーバーツーリズムの問題は見過ごせないと思います。京都に興味を持つ留学生も混ざったチームで、実際に京都を歩き、さまざまな視点から解決を模索します。

二つ目の「メディア文化デザイン領域」では、インターネットやSNSなど私たちの暮らしを変容させてきたメディアとコンテンツの本質を学びます。経済学部では珍しいアニメやマンガ、ゲームなどに特化した科目も配置。フィールドワークの一例としては、音楽フェスや、ライブハウスに密着して、興行を成功させるための秘訣を探求するなど、暮らしに溶け込むメディア文化にフォーカスします。

三つ目の「ライフデザイン領域」では、誰もがその人らしく生きることや、それを支える社会制度について学び、人々のウェルビーイング向上のための課題解決に取り組みます。例えば過疎化が進む、高齢者の方が多い地域に潜り、お困りごとや本音を聞かせてもらい、地域の人々と一緒に解決策を考えていく、そんな活動をイメージしています。

現代社会専攻全体のキーコンセプト「アースダイブ」は、地球上のあらゆる現場に深く潜り、真理を探究する取り組みを広く表現した言葉です。社会学、歴史学、地理学、論理学、文化人類学といった学問も巻き込みつつ、フィールドワークを通じて現代社会に深くアプローチし、従来とは異なる発想で課題解決に取り組みます。

今までフィールドワークは、大学側がコーディネートした企業や自治体との連携がメインでした。現代社会専攻でもコーディネートをすることはあると思いますが、それだけではなく、学生たちが現場・課題を見つけて、潜りこみ、解決の道筋を自ら探り当てる。そんな自主的でアクティブな学びが待っています。

身近なものを例にすると、京都橘大学は現在、新たな学び舎の建設のため工事をしています。工事期間中、駐輪場が遠くなり不便だと感じているとする。ならば別の場所に駐輪場をつくることは可能かどうか、その現場に潜ってみるものいいでしょう。地権者、不動産業者、大学の担当者…周辺を調べて話を聞いていくうちに、解決のアプローチが見つかり、状況が変えられるかもしれない。その活動がすでに社会のデザインです。

所得が伸びれば何でもできるという成長至上主義の考え方は好きではありません。成長が大切という発想は経済以外でもみられますが、悩みの多い大学生たちに当てはめるなんてナンセンス。なかなか成長できなくたっていい。だけど「自分自身は何者なのか。自分を取り巻く社会とは何なのだろうか」と考え続けてほしい。考えることが経済学のはじまりです。最初から明確なテーマがなくても大丈夫。「好奇心はあるし、行動力もあって、何かを成し遂げたい。でもそれが何なのか、分からない」という人は、ぜひ経済学に飛び込んで欲しいですね。

〈ここがDISCOVERY!〉

  • 経済学部が2026年4月から2専攻制に!
  • 文理横断のクロスオーバー型教育は現場でいきる!
  • 現代社会専攻のキーコンセプトは「アースダイブ」!
  • 地域社会デザイン、メディア文化デザイン、ライフデザインの3領域を設置!

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