Event Report

京都を歩いて歴史を学ぶフィールドワーク講座を開催!
中学生・高校生に「現地で学ぶ」魅力を

イベントレポート

2022.08.08

京都橘大学文学部では、長い歴史を持つ京都を舞台に、さまざまな実習やフィールドワークを展開しています。そんな文学部の学びの魅力を実際に体験してもらおうと、中学3年生から高校2年生を対象としたフィールドワーク講座「京都を歩いて学ぶ歴史」を2022年3月20日(日)に開催しました。
今もなお京都に数多く残されている歴史の出来事があった現場を、知識豊富な本学文学部の教員とともに巡りながら学ぶという内容で、「幕末コース」「戦国コース」「平安コース」の3コースを開催。今回は、幕末コースを担当した文学部歴史学科の後藤敦史准教授と、フィールドワークに同行した文学部歴史学科2回生の荒田美咲さんにインタビューしました。

文学部 歴史学科 後藤 敦史 准教授
<専門分野>
日本近代史(幕末維新史)

<研究テーマ>
・幕末維新期の日本の国際環境
・幕末の大阪湾の海防政策
・高大連携による歴史教育

荒田 美咲 さん
文学部 歴史学科2回生

※撮影時のみマスクを外しています

コースの概要

①幕末コース「伏見からみる幕末激動の時代」

寺田屋事件、鳥羽伏見の戦いなど、伏見は幕末の激動を象徴するさまざまな事件の舞台となった地域。なぜ、伏見が幕末激動の舞台のひとつとなったのか。江戸時代の史跡もまわりながら学べるコース。

案内:文学部歴史学科 後藤 敦史 准教授
伏見港公園・伏見長州藩邸跡 → 寺田屋見学 → 伏見の街並み散策 → 会津藩駐屯地跡 → 伏見奉行所跡 → 御香宮神社(伏見の戦跡)

②戦国コース「天下人の時代の伏見を歩く」

豊臣秀吉や徳川家康、秀忠の居城となった伏見城の遺構と、伊達政宗、細川忠興、福島正則、前田利常といった天下人の時代の大名たちの屋敷跡、伏見の城下町跡を見てまわり学ぶコース。

案内:文学部歴史学科 尾下成敏 教授
栄春寺(伝伏見城総門と都市伏見の惣構跡) → 海宝寺(伝伊達政宗邸跡) → 長岡児童公園(伝細川忠興邸の一帯) → 福島児童公園(伝福島正則邸の一帯) → 松平筑前公園(伝前田利常邸の一帯) → 御香宮神社(伝伏見城大手門) → 源空寺(山門は伏見城遺構) → 伏見銀座跡(伏見城下町跡の一つ)

➂平安コース「出土品から学ぶ平安時代」

千年を超えた人々の生活や文化が遺跡としてのこされている京都。その京都から出土した古代の考古資料を文化博物館などで見学し、平安時代の遺物を特別に手に取り、その観察の方法を学べるコース。

案内:文学部歴史遺産学科 中久保辰夫 准教授
烏丸御池駅構内展示見学(平安時代瓦) → 烏丸御池遺跡・平安京跡 → 京都文化博物館常設展示 → 京都文化博物館遺物収蔵庫

Q/フィールドワーク講座「京都を歩いて学ぶ歴史」とはどのようなイベントでしょうか?

後藤:歴史が好きな中学生や高校生に、歴史学のおもしろさと奥深さを知ってもらいたいという思いで企画しました。数多くの史跡や遺跡が残る京都のまちを実際に歩きながら歴史を体感してほしい、そして、歴史の舞台となった場所を訪れることで、興味関心をさらに深めてほしい、そんな思いで開催したイベントです。

中学生・高校生にとっては、歴史の研究者とはどのような人なのか、なかなかイメージが湧かないでしょうし、身近に大学生がいなければ、大学生と接する機会もあまりないかもしれません。そこで、このイベントでは、教員・学生と一緒にフィールドワークを行うことで、交流が生まれ、歴史を学ぶだけでなく本学のことも知ってもらえるような場になればと考えました。

Q/イベントを通して、中学生や高校生に伝えたいこと、感じてほしいことはどんなことでしょうか?

後藤:中学校や高校では、自分が歴史好きでも、同じように歴史好きな人がクラスにいるとは限りません。イベントに参加して、同世代で同じ関心を持つ人たちがいることを知れるだけでも、きっと良い経験になるはずです。大学に来れば、まさに興味関心を同じくする仲間たちとたくさん出会えるわけですから、その一端を体験していただいて、京都で歴史を学びたいと思う人が一人でも増えてくれたらいいなというのが、私たち教員一同の願いです。

Q/後藤先生が担当した幕末コースでは、どんなルートを巡りましたか?

後藤:幕末コースでは、京都市内の伏見エリアを巡りました。伏見は、1862年の寺田屋事件、1868年の鳥羽伏見の戦いなど、幕末動乱の舞台の一つとなった場所です。そうした歴史の痕跡をたどりながら、幕末動乱の息吹を感じてもらえるコースになっています。

また、今回はただ漫然と歩くのではなく、「なぜ、幕末の時代に伏見が歴史の舞台の一つになったのか、解き明かそう」というテーマを設けました。江戸時代のさまざまな史跡を巡りながら、伏見が幕末動乱の舞台になっていく歴史的な背景を、参加者の皆さんと一緒に考えながら歩きました。

鳥羽伏見の戦いについて、手描きの地図で説明をする後藤先生

Q/なぜ伏見が幕末動乱の舞台になったのでしょう?

後藤:来年度以降も同じコースを設定する可能性がありますので、ネタバレは避けますが…。少しだけお話すると、伏見は酒どころとして有名ですが、おいしいお酒をつくることができるのは、豊かな水系が関係しています。この水系があったからこそ、伏見は大阪と京都を結ぶ重要な拠点となりました。ここに大きな手掛かりがあります。コースの最後には、参加者の方から「なぜあの時代に坂本龍馬が伏見にいたのか、よくわかりました」という感想もいただきました。坂本龍馬をはじめ、幕末の名だたる著名人の足跡を体感できるのが、今回の幕末コースの魅力だったのではないかと思います。このコースが気になる方は、ぜひイベントに参加してください(笑)

Q/学生スタッフとして当日参加してみてどうでしたか?

荒田:私はもともと江戸時代に興味があって、1回生の研究入門ゼミでも忠臣蔵について調べて発表しました。今回はサポートスタッフとしての参加でしたが、江戸時代への理解も深まりましたし、楽しかったです。それに、伏見にはまだ行ったことがなかったので、今回フィールドワークとして訪れることができてうれしかったですね。

当日は、参加者の方から、まだまだコロナ禍にあるので、歴史学科の授業はどの程度オンラインになるのかや、普段の大学生活についての質問があり、自分なりに考えて答えることも良い経験になりました。京都橘大学に所属している私たちがお話をすることで、大学や歴史学科のことをより身近に感じていただけたら嬉しいなと思いました。

荒田さん

Q/歴史を学ぶ上で現地を訪れることは大切なのでしょうか?

後藤:歴史学の研究では、古文書と呼ばれる古い史料を読み解く必要があるのですが、その古文書に出てくる地名がどこなのか、古文書に書かれている出来事がどこでどうやって起きたのかを知るためには、現地でのフィールドワークが重要です。

例えば、「1862年に寺田屋事件が起きた」と教科書で読んで覚えただけでは、この事件の歴史的な意義や重要性を理解したことにはなりません。なぜ伏見なのか、なぜ伏見の宿に薩摩藩士たちがいたのか。それは、伏見を訪れ、伏見の特徴を知ることで、初めて理解できます。

Q/後藤先生の授業では、普段からフィールドワークを多く取り入れていますか?

後藤:今回の幕末コースで訪れた伏見や、平安神宮周辺の岡崎エリアなどは、ゼミの課外活動として、学生と一緒によく訪れています。また、学生が卒業論文に取り組む際には、研究テーマに関連する場所にできる限り足を運ぶようにアドバイスしています。

現地の博物館や資料館には、その場所にしかない資料も充実していますし、古い町並みを歩けば、著名な歴史上の人物だけでなく、その時代を生きたさまざまな人たちの足跡が見えてきます。

Q/荒田さんはこれまでどんなフィールドワークを経験しましたか?

荒田:入学してから今まで、たくさんのフィールドワークを経験しました。実はこの幕末コースで伏見をまわったあとも、後藤先生の日本史基礎ゼミで伏見のフィールドワークをしましたが、その時は、幕末ではなく、明治以降の近代の史跡をたくさんまわりました。また、歴史遺産学科の先生が担当されている「考古学概説」という授業で、平城宮跡に行ったときは歴史の息吹を感じられました。高校時代は現地に出向いて学ぶ機会はなかったので、歴史の舞台となった場所に足を運んで学べるのは、やっぱり京都ならではの利点だなと思います。本や資料だけで見るよりも、実際に現地で見たほうが、より理解も深まると感じますね。

1回生の4月に行った愛知県の明治村では、本物の明治建築をたくさん見られたのはもちろん、入学して間もない時期にみんなでフィールドワークに出かけることで、友人づくりの良いきっかけになりました。

Q/各学科ではどんな実習やフィールドワークが行われていますか?

後藤:例えば歴史学科では、各ゼミで行うフィールドワークのほかに、1回生の時には学科全員で、2回生では日本史コース全員で行く、日帰りのフィールドワークがあります。コロナ禍で、日本史コース全員でのフィールドワークができない時期もありましたが、今年の4月に、奈良県の飛鳥地域をみんなでまわることができました。また、歴史遺産学科では、遺跡の発掘調査や、博物館の収蔵庫での調査など、数多くの実習があります。

大学での学びの場は、教室の中だけではありません。本学は京都市山科区に位置しており、京都市内だけでなく、滋賀県へのアクセスも良いので、京都も滋賀も含めた広いフィールドが学びの場となっています。

日本語日本文学科:伊勢神宮周辺のフィールドワーク
歴史学科:飛鳥地域フィールドワーク
歴史遺産学科:学生たちによる発掘調査の実習

Q/京都橘大学文学部の特長について教えてください。

後藤:本学の文学部には、日本語日本文学科・歴史学科・歴史遺産学科の3つの学科があります。どの学科も、深く専門的に学べるカリキュラムを用意しており、それぞれの分野で最前線の研究に取り組んでいる教員が揃っています。

一方で、文学部というと、就職にどう結びつくのか見えにくいと言われがちですが、本学は「キャリアに強い文学部」という方針を掲げ、キャリア教育を重視しています。就職やキャリア形成を意識した独自の3つのプログラムがあり、社会人をとしての基礎的な力を身につけられます。

一つは「文学部キャリアゼミ」で専門教育とキャリアをつなぎます。先輩学生や卒業生、ゲストスピーカーを招き講演会を実施し、これからの学生生活や働くということを早い時期からイメージできるようにします。2年次には、海外研修やインターンシップ、課題解決型授業(PBL)などを体験します。そのなかには、文化財の保護に携わるインターンシップもあります。また、二つめは、「多読百遍」という多読プログラムで3回生前期までに100冊読破をめざすもの。独自のワークシートを使った振り返りを行います。三つめは、「京都プログラム」で京都の伝統文化や伝統産業の魅力や今後の展開を考えるプログラムです。こういった文学部ならではのキャリア教育で、社会で生かせるスキルの習得に力を注いでいます。

Q/受験生に向けてメッセージをお願いします。

荒田:大学には、歴史を専門とする研究者の先生がたくさんいらっしゃるので、自分の興味のある分野のお話を直接聞けたり、一緒にフィールドワークに行ったりできるのが楽しいです。私の場合は、オープンキャンパスで後藤先生の授業を受けたのが歴史学科に入学したきっかけです。もし歴史に興味があるなら、まずはオープンキャンパスやイベントに参加してみるのが良いと思います。

後藤:大学は、同じ興味関心を持っている仲間たちに出会える場所です。大学に入ってたくさんの仲間に出会うと、自分の世界が一気に広がっていきます。大学でともに学んだ仲間は、きっと卒業後もかけがえのない存在になるでしょう。

実は、今回のイベントの平安コースを担当した中久保辰夫先生と私は、大学時代の同級生です。大学院を卒業後、それぞれ別の道を歩んでいましたが、巡り巡って本学で一緒に働くことになりました。大学で出会った仲間が生涯の仲間にもなるという実例でもありますね。

歴史が好きで、歴史をもっと学びたいという方は、ぜひその思いを大切にして、自分が好きな道を選んでください。好きな道を選択し、熱中して学んだ経験は、その後のキャリアにおいてもきっと自信につながるはずだと思います。

<ここがDISCOVERY!>

・京都橘大学文学部の授業には、「現地で学べる」フィールドワークや実習がたくさん!
・フィールドワーク講座「京都を歩いて学ぶ歴史」では、教員や学生との交流を通じて、文学部での学びの魅力が体感できる!
・現地で学べるフィールドワーク講座は、今後も開催予定!
・京都橘大学文学部では独自の3つのプログラムを実施し、キャリアに強い!

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