Interview

大盛況だった定期演奏会!
コロナ禍でもリアル開催を諦めなかった、吹奏楽部の強い思い

インタビュー

2021.03.25

毎年数々のコンサートやコンクールなど、地域や学校行事で美しい音色を奏でている京都橘大学吹奏楽部。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため練習時間が限られる中でも、工夫を重ねて準備を進め、2020年12月23日(水)には京都コンサートホールにて「第19回定期演奏会」を成功させました。部を率いて演奏会開催を実現した、部長の伊勢友里菜さん(現代ビジネス学部2回生)と学生指揮者を務める本多倖恵さん(発達教育学部2回生)に、吹奏楽部の魅力や演奏会開催までの工夫や道のりなどをインタビューしました。

伊勢 友里菜 さん
現代ビジネス学部経営学科2回生。吹奏楽部部長を務める。
本多 倖恵 さん
発達教育学部児童教育学科2回生。吹奏楽部学生指揮者を務める。
※この記事は、2021年1月にオンラインでインタビューしたものです
※インタビューおよび撮影時のみマスクを外しています

京都橘大学吹奏楽部プロフィール
【創部】1990年(平成2年)
【主な成績・活動】
2018年度
・ハンス・ペーター・シュー氏(ウィーンフィルハーモニー・トランペット首席奏者)とのジョイントコンサートを実施
・京都府吹奏楽コンクール金賞受賞
・オータムコンサート2018を開催
・第17回定期演奏会を開催(ピアニスト・児嶋一江氏と協演)
・スプリングコンサート2019を開催
・入学式、卒業式での式典演奏など大学行事での演奏のほか地域イベントにも多数出演
2019年度
・京都府吹奏楽コンクール金賞受賞
・オータムコンサート2019を開催
・第18回定期演奏会を開催(ソプラノ・黒田恵美氏、メゾソプラノ・八木寿子氏、テノール・古屋彰久氏、バリトン・迎肇聡氏と協演
・入学式での式典演奏など大学行事での演奏のほか地域イベントにも多数出演
2020年度
・「縁奏会2020~絆の証」に参加
・第19回定期演奏会を開催(サキソフォーン奏者・須川展也氏と協演)
・スプリングコンサート2021を開催
・地域イベントにも出演

京都橘大学吹奏楽部WEBサイト
http://cai5.tachibana-u.ac.jp/brass_band/

Q/お二人の吹奏楽歴について教えてください。

伊勢:小学5年生から吹奏楽を始めました。ぬくもりのある音に感動して、ずっとクラリネットを担当しています。高校の吹奏楽部では練習が厳しくて、楽しみながら演奏できなくなってしまったため、大学では別のことに挑戦しようと思っていました。「憧れの京都で、教員免許を取得できる大学に進学したい」と大学を探していたときに、京都橘大学に学校推薦型選抜の入試制度があることを高校の顧問の先生に教えていただき、夢に近づくためにも、一生懸命やってきた吹奏楽をもう少しだけ頑張ってみようと思い入学し、入部しました。

本多:中学から吹奏楽部に入部しました。人とかぶらない楽器がしたいと思っていたときに出合ったのが木管楽器のファゴットです。1バンドに1人いるかいないかの珍しい楽器であることと、「ファゴットは人の声に一番近い楽器なんだよ」という先輩の言葉にひかれて選びました。高校では音楽科でソロ・コンチェルト中心にやってきたのですが、「より楽器が引き立ち、輝くのはどんな瞬間だろう」と考えたときにもう一度吹奏楽をしたいと思ったので、大学で吹奏楽部に入りました。

Q/京都橘大学吹奏楽部の活動について教えてください。

伊勢:部員は、昨年12月の定期演奏会で卒部した4回生を含めて89人(3回生以下は74人)で、大学の吹奏楽部としては人数が多い方だと思います。通常練習は週4日で、演奏会本番前は毎日練習します(※コロナ禍以前の2019年度まで)。中には、「学部の勉強が忙しくて部活に時間が割けない」という部員や学部・学科によっては実習や国家資格の受験などで上回生になると休部になる部員もいますが、無理なく参加できるときにだけ参加してもらうなど、部員に合ったスケジュール調整もしています。「一緒に音楽を奏でたい」と少しでも思っているなら、どんな形でも部活動に参加してもらいたいからです。

本多:京都橘大学吹奏楽部の特徴の一つは、「木管低音」というパートがとても素敵なことです。ファゴット、バリトンサックス、バスクラリネットなどが集まったパートで、奏でる楽器はそれぞれ違いますが、ほかに負けない団結力をもっています。

第56回京都府吹奏楽コンクールで金賞を受賞(2019年)

Q/伊勢さんや本多さんは部長や学生指揮者として、どんなことを意識していますか? また、ほかにも役職があれば教えてください。

伊勢:私は部長をしているので、部員の前に立って話すときをはじめ、指導者や外部の方と話すときも、部の顔となる存在として恥じない姿を見せられるように意識しています。その他の役職は、副部長、学生指揮、インスペクター(練習スケジュールの検討や指導者との日程調整などを担う役割)、総務の幹部に加えて、会計、楽器管理、企画など多くの係があって、部員はそれぞれ何らかの役割を担っています。

本多:私は学生指揮者として、ただ演奏の指揮をするだけではなく、部員の楽器に対する悩みや思いに寄り添い、演奏するうえでの思いを一つにまとめていくことを目標としています。

Q/京都橘大学吹奏楽部の強みや魅力を教えてください。

伊勢:あたたかい音楽を奏でられることです。外部の方からもよく「優しい音を出すね」と褒めていただくことがあります。山本一宏音楽監督(元京都市交響楽団首席奏者)や学生指揮者の本多さんが、そういった音を出せるように導いてくれています。

本多:音楽には、そのバンドの関係性や空気感がそのまま表れます。部のいい雰囲気がそのまま音に出ているから、優しくてあたたかいサウンドになっているのだと思います。私個人としても、部員全員と話すことや、1回生と上回生をつなぐ架け橋になれるように意識しています。

地域イベントにも多数出演(写真は2021年2月「醍醐味eets」出演時)

Q/コロナ禍で吹奏楽部を取り巻く環境も大きく変わったと思います。部活動や練習にどのような影響がありましたか。

本多:新型コロナウイルスが感染拡大し始めた頃は、3回生の先輩がオンライン練習の仕組みを一から作って整えてくださったおかげで、練習を続けることができました。全体練習ができない期間も、自主練習をするなど各自で工夫しました。

伊勢:2020年の緊急事態宣言解除後は、コロナ禍において何とか練習ができるよう、部員同士や先生だけではなく、大学の学生支援課の方とも相談を重ねました。吹奏楽は、通常は三密状態で練習することや、楽器を吹くときに飛沫が飛びやすいことから、感染拡大リスクが高く怖いイメージを持たれがちです。だからこそ、楽器から出る飛沫の量を正確に伝えたり、部屋の換気、1メートル間隔での演奏、楽器にベルマスク(管楽器用のマスク)やセーフティーガード(歌口付近に装着する楽器用マスク)を着用するなど感染対策について細かく確認したりしました。

Zoomで先生からレッスンを受けるなど、練習方法を工夫した

Q/昨年、2020年12月23日は定期演奏会を開催されました。コロナ禍での開催は大変なことも多かったと思いますが、準備はどのように進めていきましたか。

伊勢:私たちが幹部になって初の定期演奏会、かつコロナ禍での開催ということで、不安はたくさんありましたが、4回生を中心とした先輩方がたくさんサポートしてくださいました。初めての事態に戸惑う部員も多かったのです。先輩からアドバイスされた「部員を不安にさせないためにも、なるべく決まったことだけをはっきり言おうね」という言葉を、私は部長として部員に指示を出すうえで意識していました。

本多:定期演奏会前は、少しコロナの感染拡大が落ち着いていたので、万全な対策のうえで全体練習もできていたのですが、「感染防止対策をとって、完全に自宅で自粛します」という部員もいました。そういった意見が出るのは当たり前なので、「個人の意見を全員で尊重しよう。そして、その人たちが部活動に戻ってきたときに、いつも通り参加できるようなあたたかい空気をつくろう」と幹部で話し合いました。

コロナ禍のため、会場でも「舞台上に上れる人数の制限」や「一定以上の間隔の確保」などの決まりがあって、例年の定期演奏会通りにできないことがたくさんありました。前例や正解が無い状態で、自分たちで最適解を考えていくことは大変でしたが、先輩方に助けていただきながら一緒に新しいアイデアを考えていくことができたと思います。

学生自治会企画「新型コロナウイルス感染症対策啓発キャンペーン」にて演奏

Q/「本当に開催できるのか?」という不安とも隣り合わせだったと思うのですが、どのようにしてモチベーションを維持しましたか。

伊勢:いろいろな理由を加味して「無理だ」と諦めることは簡単でした。けれど、部員だけではなく、毎年の定期演奏会を楽しみにしてくださっている方がたくさんいらっしゃいます。しっかり対策をとったうえで、直接音の響きを感じてもらいたいと思い、諦めず開催するための方法を考えながら準備を進めました。

本多:オンラインで開催する案も出ていました。でも、「1年間の集大成であり、応援してくださっている方への恩返しになる場」だからこそ、やはり「生で音楽を届けること」にこだわりたいと思いました。

第19回定期演奏会の様子

Q/定期演奏会は、入場制限をかけた中でも、来場者数数991名と大盛況だったようですね。無事に開催できて、どのように感じましたか。

伊勢:「お客さまは来てくださるだろうか?」と不安でしたが、開幕すると想像以上にたくさんの方が来てくださり感動しました。お客さまの前に立って部長挨拶をしたときも、「とても愛されているバンドなんだなあ」と実感できましたし、たくさんの方の支えのおかげで活動できていることを改めて感じました。演奏会後2週間経った今年の1月5日に、お客様にもスタッフにも出演者にも感染者がいなかったことも確認でき、ホッとしたと同時に演奏会が大成功だったと確信しました。

本多:うれしかったのは、4回生の先輩に「今までで一番いい演奏会だったよ」と言っていただけたことです。例年どおりの演出ができず、終演後の4回生からお客さまへの挨拶の場がもてないなど、たくさんのことを我慢していただいたのですが、それ以上に楽しく演奏ができたと思ってもらえたことがうれしかったです。

定期演奏会の準備期間では、日々の大切さを感じました。みんなと集まって練習できることが当たり前じゃないと気づいたからこそ、何気ないことも愛おしく感じられるようになったし、いろんなことに感謝できるようになったと思います。

Q/今後の活動に向けた意気込みや抱負を聞かせてください。

伊勢:今は全員での活動ができない状況ですが、過去の定期演奏会のオンライン鑑賞会やオンラインでの楽典勉強会の機会を作るなど、今できることをやっていきたいです。どうすればいいかわからず、止まってしまいそうになることもありますが、この状況の中でも、吹奏楽部として少しでも前に進んでいきたいと思います。

本多:今は、希望者だけでゆっくりとでもいいから活動を続けて、全員が揃ったときにまた円滑に部活動が進むための土台を作っておきたいと思います。レベルアップして再開することよりも、これまでと同じように部活動ができることをまず目標にして活動していきたいです。

Q/京都橘大学吹奏楽部にあこがれる高校生に向けてメッセージをお願いします。

伊勢:私自身、吹奏楽を高校で辞めるつもりでしたが、いろいろなきっかけや出会いに恵まれて、今楽しく吹奏楽をしています。京都橘大学の吹奏楽部は、これまでに知らなかった吹奏楽、やってこなかった吹奏楽など、吹奏楽の違う一面や新しい魅力に出合える場だと思います!

本多:初心者で入部したメンバーや新しい楽器に挑戦しているメンバーもいるので、「楽器を演奏してみたいな」「友達を増やしたいな」と思ったら、気軽に見学に来てもらいたいです。楽しさは私たちが保証します!

<ここがDISCOVERY!>

京都橘大学の吹奏楽部は、部の雰囲気そのままに優しくてあたたかいサウンドが魅力!

京都橘大学の吹奏楽部は、コロナ禍でも、入念な感染対策を取りながら活動を止めない一方で、部員一人ひとりの意思も尊重している!

コロナ禍の定期演奏会は、リアル開催の意味を見つめ直して、諦めず開催するにはどうすればいいかを考えて準備した結果、実現できた!

Relative