Interview

大学生として、ミュージシャンとして
目にしたもの、沸いてきた感情が
誰かの心を満たす音楽になっていく

インタビュー

2023.07.11

京都橘大学に通いながら、兵庫県淡路島育ちの5人組バンド・HATAKEのメンバーとして活動している池澤寛太さん。YouTubeのカバー動画は最多で47万回再生(5月15日時点)を突破、楽曲『漣』がフジテレビ系「めざまし8」2022年8月度のエンディングに流れるなど、人気も期待も高まっています。そんな池澤さんに、キャンパスライフや音楽、そして気になる将来について聞いてみました。

池澤 寛太さん
文学部歴史学科3回生
フォークソング部
淡路島産バンド“HATAKE”/作詞作曲、Vo.Gt
※2023年5月にインタビューしたものです。

Q/淡路島での高校時代にバンドを始めたきっかけは?

高校1年生の時、文化祭に出るために結成したのがきっかけでした。その時のメンバー5人が現在のメンバーで、“HATAKE”という名前もその時につけたままです。バンド活動も、作曲をしたこともなかったけれど、文化祭のために用意したオリジナル曲を演奏したら、会場がウワーッと沸いて。その雰囲気にしびれて、その感じが忘れられなくて今に至っています。

Q/YouTubeにアップした名曲のカバー動画が話題になったのはいつ頃ですか。

実家の部屋で撮影した動画をアップし始めたのが、高校3年生の時でした。YouTube上に残しておいたら一生消えないし、という軽い気持ちでした。それが、あれよあれよと再生回数が増えて。メッセージに大手エージェントから連絡が来た時も信じられなくて、返信できずにいたんです。でも、何度もメッセージが届くので連絡してみたら、それが本当にエイベックスの系列会社で。「一度、レコーディングしましょう」とお話をいただいたのも、高校3年生の時でした。

Q/音楽活動を続けながら、京都橘大学に進学した理由を聞かせてください。

プロになれるかも、という淡い気持ちはありましたが、高校3年生の時点では「音楽業界に片足を突っ込んだ」くらいの感覚でしたし、進学しない選択肢はありませんでした。もともと京都という場所が好きで、歴史に興味があったので、指定校推薦枠で文学部歴史学科を希望しました。1回生は基礎的な授業が中心、2回生以降はだんだん卒業研究に向けて古文書などの資料を読むことが増えましたね。古今のいろんな言葉に触れることができるのが歴史学科の魅力の一つです。

Q/これからより深く学びたい分野はありますか。

専門的に研究したいのは近現代史、特に戦争について深く知りたいと思っています。数年前に、戦時中の赤紙を手にした夫とその妻の心情を書いた『月下美人』という曲を作ったんです。実は、淡路島にいる僕の祖母が生まれた日が、広島に原爆を落とされた日で。そこから太平洋戦争について知りたい気持ちが芽生えて、資料や映像を見ながら曲にしました。そんな経験もあって今一度、近現代の歴史を深掘りしたいと考えています。

Q/京都橘大学の学生になって、予想外だったことは?

フレンドリーな先生がいらっしゃったことです。高校の先生は生徒の名前や性格を把握していて距離が近かった。けれど、大学にそういう関係性はあまりないのかなと思っていたんです。学生の数も多いですし。でも、社会人として必要になる教養やコミュニケーション能力などを身につける、キャリアゼミ担当の先生は、そうじゃなかった。学生との関係をすごく大事にしてくれる先生で、僕のアルバイト先にきてくれたこともありました。会うのが楽しみになる先生と出会えたのは予想外だったかも。僕が音楽活動をしていることも知ってくれているので、いつかライブにご招待したいと思っています。

Q/学内のフォークソング部にも所属しているそうですね。

HATAKEでは主にギターを演奏しているんですけど、フォークソング部ではベースを弾いてみたり、いろんな楽器に挑戦できたりして、楽しいです。部員は今のところ70〜80人くらいいるかな。経験者も、ほんの少し楽器をかじっただけの人も、みんな刺激し合って上達していきます。クラブやサークルの先輩は全員仲間を大切にして寛容です。みんな、後輩が入部するととても喜んでいます!

写真:フォークソング部ライブ

Q/大学生活と両立しているバンド活動では、2023年4月に初ミニアルバム『Boys』をリリース。ワンマンライブも実現したとか。

一般的に、このタイミングでワンマンライブさせてもらえたのは、珍しいことだと思います。最初のうちは対バンといって、複数のバンドが出演するライブが多いんです。新しいファンに知ってもらえる機会にもなりますが、それだとほかのバンドがしていることと同じになってしまう。どうせなら一発目から、ワンマンで思いっきりやりたいと主張して実現しました。

Q/4月23日の大阪と29日の東京、ワンマンライブの手応えは?

大阪でのライブには、フォークソング部のみんなも来てくれて嬉しかったです。しばらくコロナ禍だったこともあり、あんなに客席からパワーをもらうライブは初めてだったかもしれません。こんなに自分たちの音楽を聞いてくれる人がいるんだと、ステージに出た瞬間の会場からの熱気にグッときました。ミニアルバムの収録曲や新曲、かなり前に作った曲も演奏したんですが、お客さんがちゃんと覚えてくれていて、一緒に歌ってもらえてすごくよかったです。

Q/ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を担当されていますが、どんなふうに曲づくりを?

かっこいいこと言っていいですか(笑)。言葉に合うメロディが必ずあると思っているんです。だから詩を先に作ります。「これから書くぞ!」と絞り出すというより、それが、大学ですれ違った人でも、電車の椅子に横たわって寝ている人でも、誰かを見て感じたことを曲に書くのが楽しい。見た瞬間にいつもと違う感情を抱いたら、それはもう曲の原型です。

Q/卒業後のビジョンを聞かせてもらえますか。

僕らはもう、ありえないくらい地元・淡路島を推しているバンドでして。メジャーデビューして、武道館とか大きな会場でのライブもめざしますが、最終的には淡路島で自分たち主催の音楽フェスをやりたいです。恩返し、なんて言うとカッコよすぎますけど、生まれ育った淡路島のためになることがしたいです。

写真:GoKuma Base 2023

Q/高校生に向けてメッセージをお願いします。

同じ顔ぶれで育ってきた淡路島を出て、京都での生活は友達ゼロからのスタートでした。このインタビューのポートレート写真を撮影してくれた廣里くん※は、今はなんでも話せる友達ですが、フォークソング部で知り合ってから、うちとけるまでに4ヶ月ほどかかりました。今思えば、入学当初、どうやって人とつながればいいか、仲良くなれるか考えた時間そのものも、大学時代ならではの経験だったんだと思えます。急いで焦って友達を作ろうとしなくても大丈夫。時間はたっぷりあるんで、気の合う人とは徐々に距離を縮めていけるから。ファイト!!

※廣里武蔵さん(撮影者/学生広報スタッフ)

<ここがDISCOVERY!>

・池澤さんは高校時代に結成したバンドと学業を両立!
・古今の言葉を読み解くのが歴史学科の魅力
・いつしかフォークソング部も自分の居場所に
・池澤さんの将来の夢は淡路島での音楽フェス開催!

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