Interview

大学で過ごす今を心地よく
響友館ラウンジのリニューアルを担当
空間デザインの企業で活躍する山下永さん(京都橘大学2020年3月卒業)

インタビュー

2024.05.31

2024年4月、学部学科を問わず多くの学生が利用する響友館1階がリニューアル。木のぬくもりにリラックスしながら、思い思いの時間が過ごせる明るいラウンジが誕生しました。この空間づくりに携わったのは、京都橘大学の卒業生でもある山下永さんです。現在は「株式会社船場」の営業職として活躍する彼女にお話を伺いました。

山下 永 さん
2020年3月、現代ビジネス学部都市環境デザイン学科※2卒業。
株式会社船場に入社し、関西営業企画チームの一員として様々なプロジェクトに携わる。

株式会社船場(以下、船場)
商業施設をはじめオフィスや教育、ヘルスケア、余暇施設等の様々な空間づくりにおいて、調査・企画・デザイン・設計・施工・メンテナンスまでをトータルでサポート。人や地域社会、自然環境へ“おもいやり”の視点を持ち、サプライチェーン全体で未来にやさしい空間の共創を目指すエシカルデザインを推進している。

※1 2024年4月にインタビューしたものです。
※2 経済学部、経営学部、工学部の開設に伴い、2021年4月より現代ビジネス学部は募集を停止しました。

Q/まずは 響友館のリニューアルを手がけることになった経緯から、教えてもらえますか。

もともとこの場所にあった大学生協のショップの設計・施工を担当していたのが偶然、私が勤務する船場だったんです。響友館1階をリニューアルするという話を大学生協の方からお聞きして、「ぜひうちで新しい空間を設計させていただきたい」と思い、大学のご担当者につないでいただきました。なんとその方が京都橘大学の卒業生で同じ学科出身の先輩でした(笑)。卒業生同士で学生のために新たな空間を創りあげるという経験も、自分にとって新たなチャレンジになったと思います。

2023年の12月あたりからプロジェクトが動きだして、2024年3月の中旬には工事を終えていましたから、比較的スピード感を要するお仕事でしたね。

Q/空間デザインのコンセプトは?

※工事計画時のパース(完成イメージ)

京都橘大学のキャンパスが立つ山科は、京都市の東に位置する自然豊かなエリアです。季節の移ろいを感じさせる山々に囲まれていて、どこかのんびりとした空気が流れています。そんな地域の特色に合わせたナチュラルな空間づくりを心がけました。窓からはたっぷり光が注ぎ、ソファにはベージュやモスグリーン、ブルーグレーなどやさしい色彩をセレクト。個人的には、ロケーションは山のそばですけど、どこか海辺の心地よさみたいな開放感が演出できたのではないかと思います。

Q/京都橘大学での学びが、今回の仕事に活かせていると思いますか?

現代ビジネス学部都市環境デザイン学科で学んだのは、主に住空間に関すること。暮らす人を想定し、その人にベストな空間を提供するには…と課題に向き合う機会が多かったと思います。勤務する会社で手がけているのは、商業施設、教育現場、オフィスなど人が賑わう空間なので、対象が違うといえば違うのですが、共通点もあると思っていて。個人のための空間でも、パブリックな空間でも、「使う人の立場に立って物事を考え抜いて、空間をデザインする」という点は同じです。今回も大学側のご要望を受け止めつつ、ラウンジを使う学生さんたちのことを想像しながら、要望+αのものを提案させていただきました。もしまた京都橘大学の施設に携わる機会をいただけた時は、後輩の学生さんも巻き込んで取り組みたいですね。

※経済学部、経営学部、工学部の開設に伴い、現代ビジネス学部は、2021年4月から学生募集を停止しました。

Q/船場を就職先に選んだ理由をお聞かせください。

実は私の両親も、建築関係の企業で内装を手がけていたので、いつしか自分もそんなものづくりの世界に憧れるようになりました。就職を視野に入れ業界内のジャンルを絞る時に、個人を相手にするハウスメーカーより、もっと多種多様な人が使う賑わいを生むような場所をデザインする仕事に携わりたいと考えるようになって。ここなら自分のやりたいことが実現できると感じて船場に入社しました。

Q/昨年2023年秋、約50年ぶりに全面リニューアルした京都大丸店8階のレストランフロア。その改修に参加されたそうですね。

これまで携わった中でも、特殊な案件でした。通常は、クライアントから与件(=前提として存在する条件)をいただいて、それをクリアした提案をしていく、という流れが多いんですね。今回のリニューアルに関しては、初期段階の与件を定めていくところから一緒に参加させていただけたのが、貴重な経験でした。

共通意識を持つために、大丸京都店、協力会社と弊社の3社のプロジェクトメンバーでワークショップを開催。第一回目は「そもそも大丸京都店とは?屋上広場とは?」を考えました。第二回目は、老若男女が通う親和性がある、という観点から京都市内のお寺で実施。いろんな立場からアイデアを出し合い、「三世代の思い出をつないでいける空間にしたい」というイメージが、チームの中で固まっていきました。

空間デザインの仕事は幅広くいろんな人と関わり、いろんなことにチャレンジできる仕事、飽きることのない面白い仕事だな、とつくづく思います。

Q/理想の仕事に就くために、どんな大学生活を過ごしましたか?

京都橘大学を選んだ大きな理由が、就職のサポートが手厚いことでした。大学に入学する時点で、将来は空間デザインに関わりたいという気持ちがすでにありましたから、1回生からキャリアに関連する授業を積極的に受講していましたね。早い段階で準備ができることは、とてもありがたかったです。

金武創教授(専門分野/文化経済学、財政学)のゼミを選んだのも、興味がある分野だったのはもちろんのこと、就活にも活かせるゼミ活動ができると思ったからです。エントリーシートの書き方を学び、書いた内容をチェックしていただき、模擬面談も何度もしていただきました。もともと面接は苦手だったのですが、授業内でダメ出しをもらって、何度も修正を重ねて、本番の面接では自分の考えを伝えることができました。金武先生のサポートがなかったら、希望する企業に就職できていなかったと思います。本当に感謝しています。

学生時代のゼミ旅行での一枚(金沢21世紀美術館にて)

Q/学生生活を振り返ってみて、京都橘大学の魅力とは?

先生と学生との距離がとても近かったと思いますね。あと、キャリアセンターの職員の方々も親身に話を聞いてくださいましたし、アットホームな雰囲気は京都橘大学の個性の一つだと思います。

ゼミで就職活動に関わる質問をして回答をいただいても、「もう少し違う意見も聞いてみたい」と思うこともあるんですよね。そんな時は、キャリアセンターで、異なる視点の回答をもらったことも。サポートをフル活用できる環境のおかげで、疑問やモヤモヤを放置することなく、自分が望むキャリアの方向性を見極めることができました。

Q/今後の目標があれば聞かせてください。

昨今は、エシカルであること、社会貢献できることが、空間デザインに求められる案件が増えてきました。例えば、大丸京都店の屋上に配置した家具には、京北町のくまはぎ材という木材が使われているんです。近年、京北町ではクマが食糧を求めて山から降りてきてしまう事例が増加。蜜を吸うために木の幹を剥がれて、流通できない木材が増えて問題になっています。くまはぎ材を使うことで屋上の利用者に自然の風合いを楽しんでいただけるし、林業に携わる人や地域に貢献もできる、進歩的な選択ができました。

今後は京都に関わらず、地方を元気にするような、地方創生に関わるプロジェクトに携わっていけたらと思っています。

Q/高校生に向けてメッセージをお願いします

大学生の本分は勉学ではあり、キャンパスは学びの場所ですが、新しい友人や新たなコミュニティを発掘できる、人生において貴重な場所でもあると思うんです。これだけ多くの同世代と交わって、豊かな人間関係を築いていくことは、大学時代にしかできません。新しくなった響友館1階ラウンジで、友人と一緒に課題に取り組むのもいいし、何気ない会話をするだけでもいい。フル活用して楽しいキャンパスライフに役立ててもらえれば嬉しいです。

<ここがDISCOVERY!>

・山下さんには、入学時点から空間デザインに携わるという夢があった!
・山下さんは、就職活動においてゼミとキャリアセンターをフル活用した!
・山下さんは、使う人の立場に立って空間デザインする大切さを大学で学んだ!
・今後の目標は、空間デザインで社会課題を解決し地方創生に貢献すること!

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