Interview

「社会に貢献し、人生を豊かに生きる力を育んでほしい」
日比野英子学長インタビュー

インタビュー

2020.05.15

高校生にとって大学の学長や教授と聞くと、遠い存在のように感じてしまうことが多いのではないでしょうか。京都橘大学の日比野学長は、大学院生時代から心理相談に関わるなど、多くの人の心の健康に携わってきた心の専門家です。「学長でこころの専門家」と聞くと興味津々になる人もいることでしょう。そこで、日比野学長の大学生時代のことや、どのような子ども時代を過ごしていたのかなどについてインタビューしました。

京都橘大学学長 日比野英子
<専門分野>
心理学/臨床心理学
<研究テーマ>
・化粧についての臨床心理学的考察
・外見と心の関係
・障害者・高齢者へのよそおいの援助
<学長就任年>
2019年4月1日

Q/日比野学長の大学生時代に学ばれた学部のことや、
どのような学生だったのかを教えてください。

大学では文学部文化学科心理学専攻(以下、心理学専攻)で学んでおり、勉強だけでなく山登りやスキーにも取り組む活動的な学生でした。心理学専攻を選んだのは、私が大学選びをした1970年代は、「女の子は文系」という風潮が強く、両親も私に文系に進んでほしいという希望を持っていたからです。このようなことは、今の時代からは想像するのは難しいかもしれませんね。でも、もともと私は理系が得意で、大学では工学系を学びたいと考えていました。世間の風潮や両親の思いを考えて文系学部を選ばざるを得ない状況でしたが、理系への思いを断ち切ることは難しく、文系の中でもサイエンスの分野になるのは何だろうと考えて心理学専攻を選びました。このような流れで選んだ分野でしたが、授業が始まるとおもしろくてのめり込みました。その後、大学院に進み、「私と同じ時代に生きている人達の役に立ちたい」、その一心で研究に熱中していました。入学時にはこのようになるとは予想外のことですから、人生とはおもしろいものだなと感じています。

Q/高校時代は、どのような生徒だったのですか?

高校時代もとても活動的でした。女子校に進学し、親友ができて、年の近いお姉さんのような先生もいて、その先生のことが大好きでした。その先生とは、今でもときどき会って、いろんなお話をしているほどです。また、高校時代の本音で話し合える人間関係を礎として、その後もよき友人に恵まれました。学長になってからも他学の女性学長と親しくさせていただき、教育に関する情報を交換したり、休日には楽しい催しをしたりしています。これまで、お香を焚いて香りを楽しむ香道の会を開催するなど、交流を深めています。今、思うと、高校時代に人生の土台といいますか、生きるうえで大切なことが培われたと思います。

それから、高校時代は勉強に真剣に取り組みました。勉強を頑張ったのは中学時代もそうかな。こういうと学校が大好きな生徒のように聞こえますね。でも私は、もともと学校が苦手な子どもでした。

Q/学校が苦手だったというのは意外ですが。

先ほど、高校、大学生時代は活動的だったといいましたが、もともとは内向的なタイプでした。内向的というと、多くの方が「おしゃべりは得意ではなく、おとなしいタイプだったのだな」と受け取ることが多いようですが、内向的というのは、現実の世界よりも心の内の世界にひたることが好きなタイプをいいます。だからといって、おしゃべりが苦手とか、おとなしいということではないのです。何をしていても、何を見ても、物語が浮かんでくるというか、自分の空想の世界が好きといえばわかりやすいかもしれませんね。

このようなタイプは、周りの人からの評価にはあまり興味がなく、自分の気持ちや思いがすべてになる傾向が強いのです。自分が描きたいものを描く、つくりたいものをつくる芸術家や職人タイプといえます。だから集団が苦手。皆と一緒に時間通りに行動しなさいといわれるのも苦痛ですから、学校生活に違和感があるのです。ですので、私も幼稚園から小学校低学年まで学校に馴染めない感じを抱いていました。ところが、学校に対する苦手意識は、あるできごとで転換しました。

Q/学校に対する苦手意識が転換したきっかけを教えてください。

10歳のときに、世の中との折り合いをつける術を発見したのです。その術とは、勉強なら予習、復習をするということなのです。当たり前のことなのですが、やってみたらうまくいくのがうれしくて「なんだ、こうすれば良いのか」と目覚めたわけです。これは、内向性の人が外向性を取り入れたということなのですが、外向性を取り入れてみるとだんだん楽しくなってきて、もっといろいろ経験したい。やってみたいと次第に活動的になったのです。ところが頑張りすぎて、小学5年生で体調を崩して、3か月間、自宅で療養をしました。でもその間、大好きな本を読むことができたので大満足。元気になって小学6年生に進級したのです。

Q/心理学を学んできたからこその自己分析ですね。
それでは日比野学長の研究テーマについて教えてください。

私の研究テーマの一つに「外見と心の関係」があります。このテーマは、大学院生時代に所属していた研究室のテーマでもありました。今では、外見と心は密接に関わっていることは広く知られており、作業療法の分野では高齢者の方にメイクアップを施したり、外見を整えることが療法の一つになっています。作業療法というと難しく聞こえるかも知れませんが、高校生なら制服を着ると学校へ行く気分になるでしょうし、休日にカジュアルな服装をするとリラックスするものです。このように聞くと、その意味はよくわかるのではないでしょうか。

研究は、高齢者や精神的な病を患っている女性が外見を整えることで起きる心の変化などを観察して効果測定を行ったのですが、私の大学院生時代(1980年代後半)、当時は、この分野は手つかずで、いち早くこのテーマに着手したといえます。目に見えない「心」と目に見える「外見」との関係を扱う研究は、今でも興味が尽きることはありません。

学生と交流する日比野学長
学生と交流する日比野学長

Q/「外見と心の関係」を研究してこられた日比野学長が考える、
健康な心や心と外見について教えてください。

生きていると予想外のことが起こったり、とんでもないことに巻き込まれたりと、楽しいことばかりではありません。いろんなことがあり不安になったりイライラしたりしても、自分の気持ちを自分の中にしっかり抱えていられる状態が、心が健康な状態といえます。

また、不安になっても、外見をきちんと整えることでネガティブな感情を外へもらすことなく、内側に保つ支えになることも多いのです。それは、外見が人間関係をつくる上で重要な要素だからです。だからといって、外見にとらわれ過ぎると内面を閉じ込めることになってしまい、能面のような人と受け止められてしまいます。このバランスはとても大事です。「私はこう見られたい」と自己表現として装うということもありますが、これは社会心理学という分野でよく扱われています。

Q/京都橘大学の学生の印象は?

素直で熱心な学生が多いと感じています。学部で教えていたときは、彼らを一人前に育てるというミッションがありますから厳しくしていましたが、心の中では「みんなカワイイ」と思っていました。学長に就任してからは、ひたすらカワイイと思います。ですから、バレー部やサッカー部などの運動部の試合があると聞けば、応援に駆けつけたり、吹奏楽部の定期演奏会に行くこともあります。学生が部活で見せてくれる真剣な顔は、教室での真剣さとはまた違って本当にステキです。その姿に感動して心の底から元気になっています。

イオンタウン山科椥辻の植樹祭での教職員・サッカー部との1枚
イオンタウン山科椥辻の植樹祭での教職員・サッカー部との1枚

Q/最後に、高校生の皆さんにメッセージをお願いします。

京都橘大学は、どの学部もキャンパスを飛び出してフィールドワークに取り組んだり地域の方々と連携するなど、地域社会とのつながりを大切にしています。さらに来年度は、経済学部(経済学科)、経営学部(経営学科)、工学部(情報工学科・建築デザイン科)も新設します。文理8学部15学科という多様な学部学科が連携して学びを深めて、社会に貢献し、自分自身の人生を豊かに生きる力を持った人を育てます。

また、京都橘大学のように、一つのキャンパスに全学部が集まっているのは実はとても珍しいのです。ぜひ、この刺激的な空気を肌で感じてください。皆さんと会えることを楽しみにしています。

ここがDISCOVERY!

・日比野学長は、心理学の研究者で「外見と心の関係」分野研究の第一人者!
・子どもの頃は学校が苦手だったが、外向性を取り入れて10歳で苦手意識を克服!
・学生が大好きでカワイイと思っている!
・運動部の試合や吹奏楽部の演奏会などに行き、学生の頑張っている姿から元気をもらっている!

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