Interview

少数精鋭チームをマンツーマンで指導
陸上競技部女子短距離部門からオリンピック選手を!

インタビュー

2024.07.02

2023年4月、強化クラブとして新たに立ち上がった陸上競技部女子短距離部門。オリンピック出場選手を指導した経験を持つ敏腕指導者・島津勝己監督の就任は、大学で陸上を続けたい高校生たちの間で話題となりました。女子短距離部門のメンバー6名から絶大な信頼を得る島津監督に、指導の場を大学に求めた理由や強化クラブへの思いを伺いました。

陸上競技部 女子短距離部門監督 島津 勝己さん

中学校教員、そして陸上部の顧問として生徒の成長を見守り約35年。中学校体育連盟や日本陸上競技連盟にも携わり、若き競技者の育成・強化に尽力。2015年に発足した『OSAKA夢プログラム』ではゼネラルマネージャーを務め、100mの多田修平選手をはじめとするオリンピック選手を大阪から輩出。2023年春、未来の陸上界を担う逸材を育てるため、陸上競技部女子短距離部門の監督に就任。
※2024年5月にインタビューしたものです

島津/中学生の時にはすでに、将来は中学校の体育教師になるんや!と心に決めてましたね。中学時代は陸上ではなく、野球、剣道、水泳などいろんなスポーツを経験しました。高校で陸上を始めたのも、教師になるためのステップといいますか。「生徒の見本になるために、もう少し足が早くなっておきたい」という理由から。京都教育大学に入学してハードル種目を続けていましたが、全日本インカレにギリギリ出場できるくらいの実力でした。

Q/監督にとっては良い陸上選手になることより、良い教育者になることの優先順位が高かったんですね。

島津/陸上は努力すれば必ず結果が出る、非常に教育的なスポーツです。例えば野球やサッカーは、自分がどれだけ頑張ったとしても、相手がそれ以上に頑張って技術が上がっていたら負けてしまいます。陸上の大会にも順位がありますが、結果はそれだけじゃない。前回より良い記録だったかどうか、タイムで明確にわかるという点が陸上の魅力だと思います。

Q/有能な選手を次々と育て見送る中で、日本の陸上界の課題が見えてきたとか。

島津/多くの生徒を強豪校へと送り出し、さらに成長を遂げていく姿をたくさん見てきました。選手の能力を引き出してくださった素晴らしい高校の先生には、感謝しかありません。ただ、そんな充実した高校時代を終えて大学に進むと、有能な選手たちが行き場を失ってしまうと言ったらいいのでしょうか。中学や高校の強豪校と同じように、しっかり時間を割いて一人ひとりをサポートする環境を整えている大学は、全国的にも少ないのが現状。女子に関しては、高校での自己最高記録が生涯のベストになる子が大多数です。

Q/中学生の指導者から大学生の監督へ。その変化にはどのような理由が?

島津/2020年東京オリンピックに向け、大阪にゆかりある有能選手を発掘し、支援していこうと動き出した『OSAKA夢プログラム』。2015年からゼネラルマネージャーとして参加していたのですが、そこでの気づきが今の転身につながっています。100m の多田修平選手、100mハードルの田中佑美選手、走幅跳の秦澄美鈴選手らが、ベスト記録を伸ばしていくのを目の当たりにしたんですね。参加当初は多田選手もまだ大学生で、オリンピック出場なんて本人も想像していなかったと思います。大学生の記録はまだまだ伸びると実感していましたので、京都橘大学からお声がけいただいた時に監督の道を選びました。

Q/『OSAKA夢プログラム』では年間100日ほど海外へ。トップコーチやトップアスリートの練習に参加されたそうですね。海外に出てみて、今の指導につながる気づきはありましたか。

島津/指導の技術はもちろん、科学的な根拠やデータ活用にしても、日本が劣っていると感じませんでした。ただ100%日本と違ったのが、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、どの国のトップコーチもとにかく選手を誉めちぎっていたことです。日本に帰国して自分の指導を改めて分析すると、口にする90%以上が注意もしくは指導。今もまだ完全に褒め癖がついたと言えませんが、できるだけ褒めようと意識しています。女子短距離部門の選手たちは、それぞれに良さや光る部分がある、褒め甲斐がある選手ばかりですから。

カールルイス氏(左)、リロイバレル氏(右から2番目)とともに、ヒューストン大学の室内競技場での記念撮影の様子

Q/ゼロからのスタートをきった女子短距離部門。他大学にはない強みはどこだと思いますか?

島津/初年度ですので頼る先輩もいないし、専用トラックも持たない中で入部してくれたことは、非常にありがたい。そして、彼女らの決意を後押ししてくださった保護者の方々にも感謝しています。「島津に預けてみよう」と納得してくださったのは、「週5、6回の練習にきっちり付き添います」とお約束したからでしょう。授業が始まる前に全員が揃う曜日もあれば、朝、昼、授業終わりに各2名を見ることもあります。今は全員で6名という少数精鋭チーム。毎年5人ずつ増えて4学年で20数名になっても、今のように時間帯を分ける練習スタイルであれば、目が行き届いた環境が保てると考えています。多田選手のように大学時代でめざましい成長を遂げれば、オリンピック選手の誕生も夢ではないでしょう。

(左から)居村 咲希さん、森 涼々香さん、有馬 夕莉奈さん、島津 勝己監督、小沢 有希乃さん、武田 悠亜さん、伊佐 乃亜さん

Q/最後に一緒に走り出した選手6名、それぞれの褒めポイントを教えてください。

島津/練習の時、必ず先頭でみんなを引っ張るのが部長の伊佐乃亜ですね。そんなに大柄ではありませんが、ハードルの選手に必要なパワーも技術もありますし、なにより笑顔がいい選手です。
400mハードルの武田悠亜は、陸上を続けるかどうか最後まで迷っていました。4月になってもまだ決めかねていたけれど、見学に走る気満々のジャージで来てすぐ入部(笑)。真面目な選手です。
6人の中で最も小柄ですが、最も早く動ける選手が森涼々香ですね。看護学部との両立は大変でしょうけれど、隙間時間で練習できる陸上の特性を活かして、どちらも頑張ってくれています。
去年6月、徳島の講習会に行った時に「良い選手がいますよ」と関係者から教えられたのが居村咲希でした。徳島県大会の100mハードルで大会新を出して優勝した走りは素晴らしかったです。
インターハイで総合優勝するような強豪高校でキャプテンを務めていた小沢有希乃。大学では理学療法士になるための学びを重ね、試合では仲間の足にテーピングをしてくれる頼もしい存在です。
スカウトに回っていた2023年、なかなか選手が増えず苦戦していたのですが「私ひとりでも京都橘大学に行きます」と言ってくれた有馬夕莉奈。心もハムストリングもむちゃくちゃ強い選手です。

(学生プロフィール)
居村 咲希さん
経済学部経済学科1回生 専門種目/100mハードル
「最後のインターハイで「こうすればもっと良くなる」と島津監督からもらった言葉が心に響き、全国大会で好成績を残すという目標を掲げ入学しました。将来の夢は、陸上競技に携わる中学校の教師です」

有馬 夕莉奈さん
発達教育学部児童教育学科1回生 専門種目/100m
「島津監督とは高校時代、大阪陸上競技協会の練習会で初めてお会いしました。直接指導から熱い思いが伝わってきましたし、なにより練習がすごく楽しくて。京都橘大学を選んだ理由は、まさに新監督の存在です」

小沢 有希乃さん
健康科学部理学療法学科1回生 専門種目/400mハードル
「中学時代からの陸上人生は怪我の連続。今まで続けてこられたのは、肉体面もメンタル面も理学療法士さんが支えてくださったおかげです。大学では陸上に打ち込みながら、理学療法士を目指します」

伊佐 乃亜さん
発達教育学部児童教育学科1回生 専門種目/100mハードル
「将来は子どもと関わる仕事がしたいこと、陸上を続けられること。その両方が叶う進学先を探していました。島津監督が指導してくださることになると聞いて、なおさら京都橘大学への思いが強くなりました」

森 涼々香さん
看護学部看護学科1回生 専門種目/100m
「高校では何度も怪我をしてしまい、やり残した感覚があった陸上競技。島津監督に声をかけていただいて、大学でその気持ちを回収しようと入部を決めました。看護の勉強と大好きな陸上を両立します!」

武田 悠亜さん
経営学部経営学科1回生 専門種目/400mハードル
「高校で陸上を辞めようと考えたのですが、思い返したら不完全燃焼。ある時に偶然、島津監督がインタビューを受けておられる動画を見つけて「この監督の元で、もう一回挑戦したい!」と思い直しました」

<ここがDISCOVERY!>

・海外遠征を通してトップコーチたちの褒める指導を体感
・東京オリンピックに出場した多田修平選手などトップアスリートの指導経験も豊富
・中学校教師から京都橘大学の強化クラブの監督へ転身
・しっかり目が行き届く全6名という少数精鋭チームで活動中

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