Interview

トップリーグ昇格は目前!
京都橘大学サッカー部の「勝つ力」の源はピッチ外にあった!?

インタビュー

2020.09.29

京都橘大学サッカー部が、2019年度、2部Aリーグ昇格を果たしました。トップリーグ昇格をめざして頑張る同部は、「地域に愛され、応援してもらえる部に」と、ピッチを飛び出して地域貢献活動にも積極的に取り組んでいます。2017年度から関西学生サッカーリーグ3部から2部Bへと順調に昇格し、さらに高みをめざす同部主将の矢野(かい)()さんに、コロナ禍でのサッカー部の活動の様子をはじめ、リーグを勝ち上がる力の源や今後の目標などを伺いました。

矢野 (かい)()さん
現代ビジネス学部経営学科4回生
(※)この記事は、2020年8月にオンラインでインタビューしたものです。

サッカー部プロフィール
創部/2005年
【主な戦績】
2017年度/
関西学生サッカーリーグ前期3部Aブロック1位
関西学生サッカーリーグ後期3部チャレンジリーグ1位優勝
2018年度/
関西学生サッカーリーグ2部B昇格
関西学生サッカーリーグ2部B8位
2019年度/
関西学生サッカーリーグ2部B優勝
関西学生サッカーリーグ2部A昇格

Q/京都橘大学サッカー部のモットーを教えてください。

モットーは「すべての人に感動と勇気を与え、誰からも愛され、応援されるチームづくり」です。このモットーとは別に、今年は4つの柱を新たに考えました。その4つの柱は「関西トップリーグ昇格を勝ち取る」「インディペンデンスリーグ(トップチーム以外のセカンドチーム以下の選手のためのリーグ戦)全国大会出場」「社会で活躍できる人材になろう」「地域に根付いたチームになろう」です。この柱を僕と幹部選手10人で決めました。今年、部員が99人になり、部としての方向性を見直して共有する必要性があると考えたからです。

Q/サッカー部員は、どのような経歴の人が集っているのですか?

サッカー部は、弓道部、女子バレーボール部、吹奏楽部と並ぶ京都橘大学の強化クラブのひとつです。そのため、毎年、全国のサッカー強豪校から、実績を挙げている人が入部しています。僕は、徳島県出身で、中学時代にJリーグチーム「徳島ヴォルティス」の下部組織に所属し、熊本県のサッカー強豪校として知られる大津高等学校に進学した後、京都橘大学に進学しました。

Q/高校サッカーと大学サッカーの違いを教えてください。また、京都橘大学サッカー部のプレースタイルも教えてください。

一番の違いはスピードです。技術や戦術、フィジカルなど、どこから見ても高校サッカーと大学サッカーは格段に違うため、どんな人でも最初は戸惑うかもしれません。僕はその戸惑いを、自分を見つめ直す機会ととらえて、弱点を克服し、強みを高めるためのトレーニングに粘り強く取り組むことで、格段に力がついたと感じる瞬間があります。その達成感は言葉で現すことができないほどです。

また、京都橘大学サッカー部のプレースタイルは、攻撃も守備も主導権を握ることを大切にしています。ボールを支配して相手チームを動かし、イニシアチブを取って攻撃につなぐスタイルというとわかりやすいかもしれません。そして、戦術の理解や考える力、判断する力が他大学のチームに比べて高いという特長がありますが、現在の課題はフィジカル面の強化です。

Q/ピッチ外の活動を始めたきっかけや内容を教えてください。

この活動は、監督が、地域に根付いたチームづくりと部員の結束を高めることを目的として、2016年頃から始めた取り組みです。これまで、小学生対象のサッカースクールや児童館でのボランティア活動、大学周辺の清掃活動などを行いました。

これまでの活動で特に印象に残っているのは、児童館でのボランティア活動です。子どもたちを大学のキャンパスに招いて、食堂で一緒にご飯を食べたり、遊んだりしたのですが、子どもたちが元気に走り回って楽しそうにしているのを見て、こちらまでうれしくなりました。児童館の館長さんから「ありがとう! またこのような企画をしてください」といっていただき、実施して良かったと思いました。

ところがコロナ禍の影響で、今年はこれらの活動はもちろん、練習さえもできなくなりました。主将としてこのまま放っておくわけにはいかないと考えて言語化したのが、先ほどの「関西トップリーグ昇格を勝ち取る」「インディペンデンスリーグ全国大会出場」「社会で活躍できる人材になろう」「地域に根付いたチームになろう」の4つの柱で、コロナ禍でもできる活動を考えて実行しました。

Q/コロナ禍で行ったピッチ外の活動について教えてください。

最初に行ったのは、医療従事者への感謝のメッセージ動画を届けることです。サッカー部だけでなく、弓道部、女子バレーボール部、吹奏楽部の京都橘大学の強化クラブにも声を掛けて、「医療従事者にエールを!」と題した動画を制作して、SNSで発信しました。

Twitterでの「医療従事者にエールを!」企画の投稿

次に、サッカー部員のモチベーションを高めるために、プロのサッカー選手に連絡を取り、コロナ禍での練習内容や生活などに関するインタビューをオンラインで行い、その様子を動画にして部員に発信しました。このインタビューで、プロ選手が「今、試合はないけれど、いつも通りに日曜日に試合があると想定して、10km走るなどトレーニングをしている。食事は、身体を第一に考えて、バランスの良いものをきちんと食べるように心がけている」とおっしゃるのを聞き、プロはどんな状況にあっても自分のすべきことをする。すごいと思いました。

このインタビューをきっかけに、「一緒にコロナを乗り切ろう」という思いで、スポーツ業界のマネジメントに携わっている方や電子機器メーカーの方にオンラインでインタビューを行い、編集をして動画サイトに発信しようということになりました。(※)これらの動画制作を通じて、一流の人は皆、自分の仕事に誇りと情熱を持っていること。コロナ禍で大変な事態になってもブレることなくプラスに考えて、今、できることに取り組んでいると知りました。このことを部員だけでなく、ほかの皆さんにも伝えられたらと思っています。

インタビュー後からは、コロナ禍で練習ができないことを理由に立ち止まらずに、主将として、今、できることをしようと考えました、そして、学年ごとで集まって「4つの柱を実現するために、今、できることは何か」をテーマに話し合う時間をつくりました。時間をかけて真剣に話し合うことができ、「こんなときだからこそ皆で力を合わせて乗り越えよう」という思いで結束することができました。

Q/コロナに負けずにプラスの方向へ踏み出したのですね。では、サッカー部としてSNSで情報を発信する際、どのようなことに気をつけていますか?

動画発信だけでなく、担当を決めて定期的にツイッターやブログで情報発信をしています。先ほどの企業の方のインタビュー動画は、インタビュー対象者に「この内容で発信してもいいですか?」と最終確認を徹底しました。ブログやツイッターは、更新する際に誤解を生むような表現はないかなどを確認して、少しでも気になることがあれば取り下げるようにしています。もちろん、SNSでの情報発信は、誰が、どこで、どのように見るかがわからないため注意が必要ということは知っていましたが、今回、学外の方を対象とした動画を制作したことで、その重要性を体験的に理解できたと思います。

Q/ピッチ外の活動とサッカーを通じて、何が学べたと思いますか? また、今後、取り組んでみたいピッチ外の活動についても教えてください。

ピッチ外の活動とサッカーを通じて、状況を見極める力と考える力、対応力が付いたと思います。この力は、生きていくために必要な力だと思います。

今後、取り組んでみたいピッチ外の活動としては、京都橘大学サッカー部のスポンサーを募ってみてはどうかと考えています。Jリーグの企業サポーター制度のようなシステムで、大学のある山科地区の企業や商店を対象としてスポンサーを募り、地域の皆さんの思いを背負って戦うことで部員のモチベーションも、さらに高まるのではないかと思います。応援してくださる地域の皆さんの思いや恩に報いるには、理屈ではなく勝つことだと思いますから。現在、関東圏の大学にはスポンサーを募っているサッカー部があると聞いているので、不可能ではないと考えています。僕がサッカー部主将として活動できる時間は数か月なので、5年後、10年後に実現できているよう、僕の思いを後輩に伝えたいと思います。

Q/部員数が多くなると、自分の思いや考えを伝える大変さも経験されていると思います。これについてはどのように感じていますか?

思いや考えをストレートに伝えるために、常に相手に合わせて言葉を選ぶように心がけています。そして、いつもトップチーム以下、各カテゴリーチームにキャプテンがいてくれることのありがたさを実感しています。各キャプテンに僕の思いを伝えて、各カテゴリーチームのメンバーに伝えてもらっているのですが、この連携がなければ、99人をまとめることはできないと思います。

部員の成長ということでは、4回生が就活を終えて部に戻って来るたびに3回生が変わります。その理由は、就活を終えた4回生は、就活前と格段に成長しているからです。成長した姿を見て3回生が変わり、それを見た2回生が変わるというように、毎年、良い連鎖があります。そして、4回生はピッチ外の活動で、「地域の人たちとの触れ合いや対応から学べることが多いだけでなく、この活動で得た体験を自分の言葉で語るたびに誇らしい気持ちになる。就活のときに面接官に堂々と話すことができた」と下回生にいいます。下回生は、先輩の体験談を聴き、ピッチ外の活動の真の意味を理解します。

Q/京都橘大学サッカー部の目標と、今後、どのようなチームに成長してほしいと考えていますか?

目標は、1部リーグ昇格です。そして、5年後、10年後には、日本1のチームになっていてほしいです。そのためには、今、組織の基礎をつくらなければと思います。先日、皆に「ロウソクの火は分けても減らない」という話をしました。自分の火(力)を惜しまず、他者に分け与えていける人が集う組織は強いと思います。そんな組織をめざして、今、僕にできることをしたいと思っています。

Q/京都橘大学サッカー部に憧れている高校生にメッセージをお願いします。

コロナ禍で、高校選手権大会の開催が危ぶまれていますが、開催ができる、できないではなく、大きな視野に立ってサッカーを続けるために、今、できることを全力でやってください。大学サッカーは、本当におもしろいので、京都橘大学サッカー部で、そのおもしろさを体験してほしいと思っています。

また、京都橘大学サッカー部は、これから自分たちの手で歴史をつくる喜びがあります。これは、若い選手が起用されるチャンスがあるということです。ぜひ、京都橘大学サッカー部に来てください。待っています!

<ここがDISCOVERY!>

・京都橘大学サッカー部は、イニシアチブを取って攻撃につなぐプレースタイル! 
・京都橘大学サッカー部は、戦術の理解や考える力、判断する力が他大学のチームに比べて高い!
・ピッチ外の活動では、部員の考える力や判断力、対応力を鍛え、チームの結束力を高めることにつながり、それが「勝つ力」の源になっている!
・矢野さんは、5年後、10年後、その先を見据えたチームづくりのために、自分に何ができるかを考えて行動ができる、仲間思いの頼れる主将!

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