髙木美帆さんが所属する「team GOLD」。オリンピック選手の挑戦を支える理学療法士「天鷲 翔太さん(2016年3月卒業)、村上 咲弥さん(2023年3月卒業)」
インタビュー
2025.01.22

スポーツ・健康・脳・神経分野など、さまざまなフィールドで活躍する理学療法の専門家を数多く輩出してきた、健康科学部理学療法学科。同学科のスポーツ・運動器障害コースで学び、京都下鴨病院(本部所在地:京都市左京区 理事長:船越登氏)に就職した天鷲さんと村上さん。病院でのリハビリテーション業務に励む一方、2026ミラノ・コルティナオリンピックで世界の頂点をめざすスピードスケートチーム・「teamGOLD」にも帯同しています。理学療法士の日々の活動や世界に挑戦するトップアスリートをサポートするその想いについて伺いました。
天鷲 翔太さん 京都下鴨病院勤務
2016年3月 健康科学部理学療法学科卒業(第1期生)
村上 咲弥さん 京都下鴨病院勤務
2023年3月 健康科学部理学療法学科卒業(第8期生)
※2024年11月にインタビューした内容です
Q/理学療法士をめざした思いと、京都橘大学を選んだ理由を教えてください。
天鷲/高校まで陸上を続けていたこともあり、進路を考えた時にスポーツに関する仕事に就きたいなと漠然と思い始めました。実はその時期まで理学療法士という職業を知らなかったんです。専門学校に通って柔道整復師になるという道もありましたが、大学生活を送りながら国家資格が取得できることに魅力を感じ、京都橘大学の理学療法学科への進学を決めました。
村上/進学先を決めたのは高校3年生の春。2年生の冬にバスケットボールの部活で怪我をするまで教員志望だったのですが、お世話になったスポーツトレーナーのような仕事もいいなと思い始めて。ライフステージが変わっても病院で働き続けていきたいと思い、理学療法士に辿り着きました。京都橘大学では3回生になると、ヘルスプロモーションコース、スポーツ・運動器障害コース、脳・神経障害コースのいずれかを選択できます。そういった専門教育も魅力的でした。

Q/大学時代で印象に残っている出来事といえば?
天鷲/僕はちょうど理学療法学科の1期生だったこともあり、教授の協力を得てスポーツリハビリテーションサークルを立ち上げました。京都橘大学の強化クラブに女子バレーボール部があったので、サークル活動の一環として練習に参加させてもらいました。テーピングを巻いたり、リハビリメニューを考えたり、学生の立場で大変な思いもありましたが、貴重な経験だったと実感しています。
村上/最初のクリニックでの実習では、午前中は高齢者の方を中心に、午後は小学生から高校生といった若い世代のケアを経験しました。様々な年齢層の患者さんに携わる機会が多く、とても楽しい実習でした。また、当時はコロナ禍でもあり、実習先が見つかりづらい状況が続いていました。困難な状況の中でも実習を受け入れてくださったクリニックでは、多くのことを学び、理学療法士に「なりたい!」から「絶対になる!」という確信に変わりました。

Q/一日の仕事の流れを教えてください。
村上/私は毎日8時20分くらいに病院に着きます。患者さんがお越しになる9時までの間に、前日の状態やカルテを読み込みます。新規の患者さんには、オペの記録に目を通し、担当の割り振りを考えながら連絡事項を確認します。理学療法としての業務は9時からスタートします。
天鷲/曜日によって少し異なりますが、基本的には担当の患者さん、それに加えて休みのスタッフの代診を午前と午後、1日に2回ずつ行っています。午前に診療させていただいた方が、午後にもう一度いらっしゃるということです。
Q/午前と午後の2回、一人ひとりにしっかり時間をかけて診療されているのですね。
天鷲/以前よりも出勤人数を増やし、患者さん一人ひとりにかけられる時間を長く取るよう努めています。入院されている患者さんが体を動かす時間を長く取ることで、できるだけ早く、良い状態で、ご自宅に帰っていただきたいと思っているからです。環境から整備し、患者さんには質の高いリハビリテーションを提供することを常に心がけています。



Q/オリンピック金メダリスト・高木美帆さんら8名のトップアスリートが所属するスピードスケートチーム「team GOLD」のサポートをすることになったきっかけは?
天鷲/京都下鴨病院理学療法部のトップ、私たちの上司である佐伯武士(京都下鴨病院理学療法部技師長)はもともと日本スケート連盟専属トレーナーでした。平昌、北京オリンピックに帯同し、高木選手らのメダル獲得に貢献した専門性が認められ、高木選手からお声がけがあったそうです。2023年度は私を含めて3名が交代で帯同し、2024年度は村上ともう一人を加えた5名体制でサポートしています。
Q/理学療法士になって2年目の村上さん、メンバーに選ばれた時の気持ちはいかがでしたか。
村上/トップアスリートに関わる機会はなかなかないので、とても嬉しかったです。その中で、しっかり役目を果たしたいという気持ちがありました。一方で、自分自身は経験不足だと感じる部分も少なからずあり、不安が入り混じっていたことが正直なところです。
天鷲/村上はまだ経験は少ないですが、「team GOLD」の輪に入り、チームの一員としてやっていけると上司が判断したのだと思います。選手に帯同するには、コミュニケーションがうまく取れる人材かどうか、資質がとても大事になってきます。加えて、世界に挑む選手を支える技術レベルに達しているから選ばれたのだと思いますよ。


Q/「team GOLD」の遠征先では具体的にどのような業務をしているのですか。
天鷲/基本的には、コンディショニング業務です。直近では、長野県での強化練習、その後には北京で行われるワールドカップに数週間単位で帯同します。選手がどこの会場でも常に、一定のパフォーマンスを出せるような身体づくり、環境づくりが求められます。翌日以降の身体のために、一日の終わりに丁寧に調整します。選手からの要望があれば、身体の状態を診て、「こんな練習を入れましょうか」といったトレーニングに関するアドバイスをすることもあります。
村上/参加して気づいたことは、選手との関係性の構築がとても大切だということででした。最初は緊張もあって、黙々と無言でやってしまっていました。そんな私の様子を先輩が見て、「もっと選手に話しかけた方がいいね」とアドバイスをしてくれました。選手の身体に触れてみた私の感覚と、選手自身の思いが一致しているのかを確認しながら進めることで良いパフォーマンスにつながると実感しました。この時にコミュニケーションの重要性を改めて感じました。



Q/「team GOLD」での経験が日常業務にも活かされていますか?
天鷲/練習を終えた1日の締めくくりに、選手1人あたり少なくても1時間ほどかけてケアを行います。最後の人が次の日に支障のない時間に部屋に戻れるよう、施術のスピードが求められます。短時間で身体の状態を判別し、なすべきアプローチを導き出すことは、臨床の中でも特に時間に制約のある外来の業務で活かせると思います。「team GOLD」での経験は間違いなく自分の糧になっていますね。

Q/10年後、どんな理学療法士になっていたいですか。
天鷲/スポーツ選手を見るにしても、怪我をした患者さんを見るにしても、大事なのはその時、その人の状態を正確に把握して結果を出すことだと思っています。10年後どちらも担当できるよう知識をもっと増やし、技術も身につけておきたいと思っています。今の環境であればそれが実現可能だと思います。
村上/繰り返しになりますが、臨床現場でも自分の考えだけでリハビリを進めるのではなく、患者さんとコミュニケーションを取りながら一緒にリハビリできるのが理想です。自分の感覚に過信せず、「これどうですか?」と常に問いかけ、患者さんからも「さっきの方が…」と率直な言葉をもらい、互いに大切な身体を理解しあえる理学療法士になりたいです。

Q/最後に、理学療法士を目指す後輩に向けてメッセージをお願いします。
村上/自分たちの学生時代がコロナ禍でもあったからこその意見ですが、学生のうちに周囲の仲間とたくさん関わりをもってください!今も大学時代の友達と近況報告はしていますが、お互いに忙しくて、思っていたより会えなくなっているので・・・。学びでも遊びでも仲間との”今”を思い切り楽しんでほしいです。
天鷲/理学療法士として、活躍できるフィールドは広がっています。私たちのようにトップアスリートと携わる機会を持つこともあります。ただやはり、私自身は、腰痛や膝が痛くて病院やクリニックを訪れる患者さんとの接点の中で、大きな喜びを感じられます。登れなかった階段が登れるようになる、そんな小さな変化をやりがいに変えていける。そんな人は理学療法士として活躍できると思いますよ。

<ここがDISCOVERY!>
- 理学療法学科ではスポーツ中のケガや運動器の疾患に関する高度な専門的知識を身につけられる
- 自らキャンパスライフを充実させ理学療法士の国家資格を取得できる
- 天鷲さんと村上さんは高木美帆さんら「team GOLD」の選手に帯同し共に世界で戦っている
- 知識や技術だけでなく大切なことは選手や患者さんとのコミュニケーション
■team GOLD
https://team-gold.net/
■医療法人順和会京都下鴨病院
https://www.shimogamo.jp/news/important/20241114110635
■TACHIBANA TIMES (NEWS) 健康科学部10周年記念講演会を開催
https://www.tachibana-u.ac.jp/news/2022/11/10-334.html
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