Interview

京都愛が生んだデビュー作「京都府警あやかし課の事件簿」が「京都本大賞」受賞!
「京都の魅力に触れ、京都愛が深まった」大学生活と、創作活動の舞台裏
小説家 天花寺 さやかさん(京都橘大学2013年3月卒業)

インタビュー

2020.11.12

「京都本大賞」(京都本大賞実行委員会主催)とは、京都を舞台にした小説の中から、京都の人に最も読んでもらいたい作品を選ぶ賞。2019年、第7回の大賞に、京都橘大学OGの天花寺(てんげいじ)さやかさんのデビュー作『京都府警あやかし課の事件簿』が選ばれました。同小説を世に送り出した天花寺さんに、受賞作品にまつわるエピソードや京都への思いをはじめ、京都橘大学の魅力や在学中の思い出などについてお話しを伺いました。

天花寺(てんげいじ)さやか さん
2013年3月、京都橘大学文学部文化財学科(現・文学部歴史遺産学科)卒業。京都生まれ、京都育ち。小学2年生の頃から小説を書き始め、大学卒業後は京都の企業に勤務しながら執筆に取り組む。小説投稿サイト「エブリスタ」で「京都しんぶつ幻想記」を発表し、「神様×現代ファンタジー」部門で1位を獲得。2018年、「京都しんぶつ幻想記」を加筆、改題した『京都府警あやかし課の事件簿』(2018年、PHP研究所)で小説家デビュー。同作品は、化け物から神様まで人間以外の存在「あやかし」が絡む奇想天外な事件を解決する「あやかし課」隊員の活躍を描いた大人気ライトノベル。続編も発売され、PHP文庫の人気シリーズに。
(※)この記事は、2020年8月にオンラインでインタビューしたものです。

Q/天花寺さんが、小説家を書き始めたのはいつですか? また、小説家になりたいと考え始めたのはいつですか?

私が初めて小説を書いたのは小学2年生のときです。当時、書いていたのはファンタジックな世界観の作品でした。その後も書き続け、小学6年生になった頃には、主人公の女の子が戦国時代にタイムスリップするという設定で、物語が展開する作品を書くようになりました。実は、このタイムスリップものがきっかけで歴史に興味をもつようになりました。小説家になりたいと考え始めたのは高校3年生の頃で、この頃から京都を舞台にした作品を書くようになりました。

Q/卒業後、一般企業に勤務した後、小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿したきっかけを教えてください。

私が高校生の頃、ネットの投稿サイトで注目された作品の書籍化がブームになっていました。ネットの投稿サイトは、読者にとってはさまざまな作品が気軽に読めて、作者に感想を送ることもできます。作者は、読者の感想をダイレクトに受け取って、創作の参考にできるため、作者と読者双方にメリットがあります。長年、文学賞に応募し続けていましたが、一度、投稿してみようと思ったのがきっかけでした。

「エブリスタ」には、さまざまな作品を投稿していて、その中のひとつ「京都しんぶつ幻想記」が注目され、『京都府警あやかし課の事件簿』として書籍化されて作家デビューにつながりました。小説家をめざしていた私にとって、とてもうれしい展開となりました。

Q/「京都しんぶつ幻想記」を出版社からはどのような加筆、修正依頼があったのでしょうか。

構成やキャラクター設定などを大幅に修正しました。まず、新人女性隊員の古賀 (まさる)というヒロインの設定を変えました。このヒロインは、かんざしを抜くと男の子になり、霊力を使ってあやかしと戦います。この設定そのものは変えずに、霊力を授かった由来を修正しました。以前は、あくまでも私の空想でのイメージに頼っていましたが、編集者のアドバイスで史実を参考にしてリアリティのある設定に変更しました。

編集者から指摘されても修正していないところもあります。例えば、京都が舞台になっているため、登場人物は全員、京都弁を話しています。「広く受け入れられるように京都弁を標準語に変更してはどうか」といわれましたが、ここは譲れないと考えました。結果的に、読者の皆さんから「京都弁がリアルでおもしろい」と好評で、変更しなくて良かったと思いました。

 京都弁を残したことが作品の世界観の醸成につながり、主人公の霊力の由来を史実に参考にしたことでリアリティが生まれ、物語を深める役割を果たしていると思います。修正するか否かは、作品にどのような影響があるのかを見極めることが大切だとわかりました。

Q/京都弁だけでなく、祇園や八坂神社、堀川御池など、京都人にとって馴染みのある場所が舞台になっているため、読んでいると本当の出来事なのでは? と思う瞬間がありました。この臨場感は、どのようにして生まれていると思いますか?

物語の舞台が決まったら必ず現地へ行きます。その場所に立って、空気を吸い、見渡して、感じることを大切にしているからではないでしょうか。現地に行く前から、「ここで、こんな事が起きて、誰がどうなって…」と具体的に考えていても、現地で取材をして、「この場所に、こんな建物や木があるんだ」と知った瞬間、物語の流れが変わることもあるほどで、それが臨場感につながっているのだと思います。

例えば、9月に発刊された第4巻は、滋賀県の日吉大社を舞台にしています。主人公の(まさる)が神様と対面するシーンがあり、どこで対面をするのかを決めずに日吉大社へ現地取材に行きました。日吉大社の山の上の奥宮に行ってみると琵琶湖が見渡せて、その美しさは神々しいほどでした。そして「この場所こそ、大が神様と対面する場所に相応しい」と心が決まりました。このようなことは全作品にあります。

取材で訪れた円山公園

Q/作品を読みながら、舞台になっているエリアを登場人物になった気分で歩いてみるのも楽しそうですね。そもそも京都を舞台にしようと思った理由を教えてください。

京都で生まれて育った私は京都が大好きで、京都の魅力を、小説を通じてたくさんの人に知ってもらいたいという思いが動機になっています。というのも、私が高校生のときに、全国都道府県ランキングをテーマにしたテレビ番組を見ていると、「食べ物が美味しい」など、あらゆるランキングで京都が1位になっていました。「そらそうやわ、京都やもん」と思いながら見ていたら、唯一、京都が全国最下位にランキングされた項目がありました。それは「人に優しい都道府県」という項目でした。「京都人はいけず(意地悪)」というイメージが要因になっているのだとは思いますが、そんな間違ったイメージが拡がっていることにショックを受けて、「これはあかん! ほんまは、京都人はいけずと違う! 京都の魅力を伝えたい!」と一念発起したのです。

私が伝えたいと思っている京都の魅力とは、千年の都である京都の歴史や文化と、それらを支えてきた京都の人です。京都の歴史や文化の素晴らしさは多くの人が知っていることですが、受け継いできた京都の人の存在があるからだと思うのです。京都で代々にわたり伝統的な事業に携わる人たちと話していると「どんなことでも長く続けて、次へバトンタッチをするのが当たり前。途中で辞めることなど考えたこともない」という気概を感じます。しかも気負うのではなく、極めて当たり前のように。このことは大学時代から感じていましたが、作家になった今も、祇園の囃子方(はやしかた)や和菓子や織物の職人などの取材を通じて感じています。さまざまな事情で一時的に中断しても、続けるのが当たり前という京都人の気概に触れて、京都の歴史や文化は、京都人の粘り強さが守ってきたのだと思います。

そして、いつも思うのは「京都の人は、親切やなぁ」ということ。このことは、以前から感じていましたが、大学時代の授業でフィールドワークに行っていた頃に確信を持ちました。どんなに忙しくても、京都の人たちは、私たち学生の「学びたい」「知りたい」という意欲に快く対応してくださるのです。こうした授業を通じて、京都の魅力に触れ、私の京都愛がますます深まりました。そんな気持ちを込めた作品が京都本大賞を受賞して、「私の京都を愛する思いが京都に伝わった」と感じています。

Q/天花寺さんのお話を伺っていると新鮮な気持ちで京都をとらえることができますね。では、天花寺さんが京都橘大学に進学した理由を教えてください。

先ほど、小学2年生の頃から小説を書き始めて、小学6年生で歴史に興味を持ち、高校生の頃には歴史が大好きなり、小説家になりたいと決意したとお話しました。高校で大学進学について考える時期になり、歴史の中でも文化財、美術工芸のことを学びたいと考えて、出会ったのが京都橘大学の文化財学科(現・歴史遺産学科)でした。当時、この分野が学べる学部のある大学は珍しく、進学を決めました。

Q/京都橘大学在学中はどのような学生だったのでしょうか? また、学んだことが、今、どのように活きていると思いますか?

先生の紹介で考古学の発掘調査のアルバイトをしたり、美術館でのアルバイトをしたりと、自分の興味があることに熱中する学生で、忙しいけれど、楽しい4年間を過ごしました。卒業研究の論文のテーマも、大好きな美術工芸の分野の中から選び、今、振り返っても本当に充実していました。

では、学んだことがどのように活かされているのかということですが、第一にレポートの書き方が挙げられます。歴史系の授業では、さまざまな資料を読み込んで研究しました。また、フィールドワークで現地を訪れ、直接観察し、関係者に聞き取り調査をする機会が多くありました。この手法は小説を書く手法と同じなので、とても役に立っています。仮説を立てて、事実を調べ、現地で確認して情報をまとめる力は、小説家だから役に立っているのではなく、どのような職業に就いても求められるものだと思います。

また、印象に残っている授業は、「民俗学」です。先生が「民俗学のフィールドワークでは、現地の人が史実と異なることを語ったとしても、現地の人が語ることをそのまま傾聴することが絶対的な基本姿勢。話が史実と違っているとしたら、その違いが起きたのはなぜなのかを調べて、考察することが大切」とおっしゃいました。このことから、聴くことに徹する姿勢の大切さを学びました。そして、この姿勢こそ、小説を書くための取材の基本であり、物語の展開を考える際の軸になっています。

Q/改めて、京都橘大学の魅力をお願いします。

京都橘大学は、自由な環境があり、好きなことに熱中できる大学です。特に、私が学んだ学科は、考古学や美術工芸など専門分野で細分化されているため、興味のあることに熱中でき、掘り下げることができたのが本当に良かったと思います。大学の4年間、好きなことにとことん熱中することで、自分にしかできないことを見つけたり、自分を表現する方法を発見するチャンスになるのでは、と思います。

Q/作家として今、思うことや今後の展開などをお願いします。

今、子育てをしながら作家活動をしています。子どもは2歳の男の子で、やんちゃ盛りです。走り回る息子を追いかけ回してクタクタになることも多いのですが、育児から創作のヒントを得ることもあります。例えば、息子とお風呂に入っていたときに、息子がシャワーで遊び始めました。おもしろがってホースをうねらせるのでお湯が飛び散って大変な状況になりました。止めさせようとしているとき、そのシャワーホースが大蛇に見えてきて、「これは使える!」とひらめき、銀色の大蛇を作品に登場させました。ちなみに、その作品は、「あやかし課」第4巻に掲載されています。

日々の生活と作家の両立は大変なことが多いのですが、作品が世に出るたびに苦労が吹き飛び、新作への創作意欲が湧くことに喜びを感じます。この活き活きした感覚は、京都橘大学で体感した感覚に似ているなと思うこともあり、京都橘大学で過ごした4年間は、私にとってとても貴重な時間だったと改めて思います。

<ここがDISCOVERY!>

・『京都府警あやかし課の事件簿』は天花寺さんの京都愛が詰まった作品!
・京都橘大学は自由で、好きなことに熱中できる環境がある!
・京都橘大学の授業では、フィールドワークでさまざまな場所へ行ける! 企業で求められる力がつく!
・天花寺さんは育児からも創作のヒントを得ている!

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