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先端情報技術で変わる人の暮らし。
超スマート社会に向けた情報工学とは?

特 集

2020.12.23

AI(人工知能)などの活用による「超スマート社会」の実現に向け、それを支える分野の学びはこれからどうなっていくのか。2021年4月、工学部情報工学科が開設され、学部長に就任予定の東野輝夫先生に、超スマート社会について、またITの技術革新や未来への展望も含めて、健康科学部心理学科の松尾涼香さんとともにお話を伺いました。

工学部 情報工学科 東野 輝夫 教授(工学部長就任予定
<研究テーマ>
・IoTやAIを活用した状況確認技術やスマート社会構築技術
・モバイルコンピューティング技術           など

松尾 涼香さん 健康科学部心理学科2回生


※この記事は、2020年12月にインタビューしたものです。

※写真は撮影時のみマスクを外しています。

Q.超スマート社会とはどのようなものなのでしょうか?

東野:そもそも超スマート社会という言葉を聞いてどのようなものかイメージがつきますか?

松尾:いえ、実はあまりよくわからなくて。どういうものですか?

東野:新たな未来のコンセプトとのことで、AI、IoT、ロボティクス、ビッグデータなどの技術を産業や人々の暮らしに取り入れ、経済の発展と社会におけるさまざまな課題を解決することをめざすものです。超スマート社会になるとどうなるか。簡単に言うと、例えば音楽を聴きたいとき、今だと「この曲をかけて」とコンピュータに話すと音楽をかけてくれますよね。でも、今はこちらから声をかけないと音楽をかけられないのです。そうではなく、「今日は疲れたな〜」と思ったときに、その疲れをコンピュータが察知して、元気が出るような音楽を自らかけてくれたら便利ではないですか? そのような仕組みを作り、実現していく未来が、超スマート社会というものです。

松尾:人の健康状態をコンピュータが察知してくれる、ということですか?

東野:そうです。健康をきちんと管理してくれる、なんてことももちろんありますが、ほかにも例をあげると、知りたい映画や音楽をパッと出してくれるといった、もっと自分の生活が楽しくなるようなことも超スマート社会には含まれていますね。

松尾:ITやコンピュータって、堅いイメージがありましたが、先生のお話しを聞くと、そんなに難しいことでもないと思いました。超スマート社会が楽しさや暮らしやすさにつながるのは、いいなと思います。先日も化粧品を買いに行ったときに、鏡に映る自分の顔をコンピュータが認識して、ボタンを押すとリップの色が変わる体験をしました。すごく驚きましたし、自分が似合う色もすぐにわかり、これはすごいと思いました。

東野:目、鼻、口の位置を認識して、鏡に映った人の唇に色を映す技術ですね。そこまで難しい技術ではないのですが、楽しいでしょう?

松尾:すごく楽しかったです!

東野:そう、楽しいんです。楽しくないと技術は進んでいきません。でも、単にすでにある技術を利用するのみで、その仕組みが全く分かっていないと、さらにこんなこともできるんじゃない?というアイデアは浮かびにくいのです。ちょうど、手品も種明かしを知ると、ちょっと違った手品を思いつくようになる、というようなイメージです。なので、プログラムがどう動いているのか、その仕組みをきちんと勉強することはすごく大事です。専門家である必要はないのですが、超スマート社会を生きていく上で、少し仕掛けがわかっていたら新たな使い方のアイデアが出てきます。世の中にはスマートフォンやコンピュータを使う機会がたくさんあるので、系統立てて学ぶことで新しい技術を作っていけると思います。

Q.ITの発展について教えてください。

東野:例えば10年前に発売された車も、今の新車の値段に比べて特段に安いという訳ではないですね。でも、ITの世界はそうではありません。スマートフォンも今は第五世代(移動通信システム(以下/5G))が出てきていますが、第一世代の頃に比べて10万倍ほどスピードが速くなっています。でも値段はあまり変わっていません。そういう世界はIT以外にはないと思います。それくらい進歩が大きいのです。ITを学ぶ人は好奇心をもち、どんどん新しいことに挑戦しなきゃいけない。

松尾:私も、5Gはぜひ実感してみたいです。今でも速いのに、どんな風に速くなるのかワクワクしています。先生は、ITの世界でどんなものに注目されていますか?

東野:SNSはひと昔前はありませんでした。でも、今やSNSで話題になったことが社会を動かすこともあります。一生懸命にテレビのCMで宣伝しても、インスタグラムでその商品が不評だともう全然流行らなかったりします。つまり、“次はこれが流行る”と鶴の一声で流れをつくるのではなく、本当にみんながいいと思うことがSNSなどの情報として集約され、流行する仕掛けが世の中に出てきたことはすごく大きいと思います。

松尾:私も洋服が好きでインスタグラムでもよくチェックしていますが、インスタグラムが流行の発信になっている感覚はすごくあります。SNS上で流行ったアイテムが、お店でも多く売られています。私は心理学を学んでいるのですが、心理の面からもITの発展に貢献できることはあるのでしょうか?

東野:心理学は新しい技術を作る上で非常に大切だと思います。昔は技術者が「こんな新しい技術ができました!」と新商品を作って発表していましたが、今は、基本の方向性を決めるのは技術者ではなく、マーケティングであり、心理学の観点も重要です。例えば、企画開発や営業部門の人たちが、「このスマートフォンの重量は絶対これじゃなきゃ売れません!」「カメラにプリクラみたいなこんな機能を入れて!」と、重さや大きさ、売れそうな機能をまず決めて、次に技術者のところへ「このサイズのこんな機能のスマートフォンを作れますか?」ともってくるという世界です。みなさんが欲しいと思う商品をマーケティングや心理の面からアプローチしていく社会になっています。

松尾:みんなで技術を作り上げていく社会になっているのですね。あと、先生が研究していらっしゃる健康増進のための研究に興味があります。私も心理学の観点から健康増進について学んでいるのですが、ITと組み合わせてどういう研究をされているのですか?

東野:例えば学生の修学見守りの研究ですね。もし、スマートフォンで自宅のWi-Fiの信号しかキャッチしていなかったら、家にずっと引きこもっているとわかります。それから、スマートフォンの使い方や使っている時間などの情報から就寝や食事の時間、精神的に活発に活動しているかどうかなどを高い精度で推定できます。これらの研究が進めば、引きこもりの初期症状や心理的に圧迫を感じている状況を早く見つけることができます。心の病気はお医者さんに相談するまでの期間が長ければ長いほど治療が長くかかり、すぐ相談できれば比較的早く治せるといわれています。

松尾:スマートフォンの使い方で心の動きがわかるようになれば、引きこもる前に救い上げることができそうですね!

Q.新棟のサイバーメディア・ラボではどのようなことができるのでしょうか?

東野:インターネットが使えてテーブルがあって、いろいろな議論ができる、そんな場所を作りたいと思っていました。同じ学部の学生たちとばかり話していると、今みたいな心理学の話を私たちは聞く機会が少ないですが、オープンなスペースなら、隣でおもしろいことを話していると自分たちの刺激になってどんどん広がっていきます。そういった場所作りをしたいという想いと、もうひとつは、最新の技術を楽しんでもらいたいという想いがあります。ホロレンズ(3Dグラフィックなどで作られた映像や画像を、現実世界に重ね合わせて表示することで、目の前に実物があるかのように見たり、動かしたりできるヘッドマウントディスプレイ)のような最新の映像機器を置いて、その側ではロボットが走り回る、日常的に動画撮影や編集ができる機器がそろうスタジオがある、そんなテクノロジーを気軽に楽しんでもらえたらという想いがあります。

松尾:今は学部ごとによく使う建物がほぼ決まっていて、選択科目でほかの学科の学生が集まるような授業に出ないと交流があまりないと思っていたので、今のお話しを聞いてすごくいいなと思いました。新しい棟は教室や学習スペースがたくさんあるようなのでみんなきっと行くだろうし、もっと交流ができたらうれしいです。先ほど先生はITの世界は技術の進歩が早いとおっしゃっていましたが、新棟で取り入れる最新の技術もどんどん変わっていくのですか?

東野:どんどん変えていけるようにしたいです。入学してから卒業まで、その時の最新にいつでも触れることができたら楽しいでしょう。なので、可能な限り新しいものへ変えていきたいと思っています。また、ロボットはソフトで動いているものなので、ソフトのプログラムを変えれば好きに動かすことができるわけです。せっかくロボットが学内にあるので、自分の好きなプログラムでロボットを動かす、という課題があったらおもしろいなとも思っています。

Q.NECとの産学連携についても改めて教えてください。

東野:本学は2020年11月2日に、NEC(日本電気株式会社)と教育研究連携協定を締結しました。この連携では現在建設中の新棟や情報工学科を起点として、さまざまな連携を行っていきます。なぜ企業と連携するかというと、新しい技術は、企業が作っているところも多いからです。最新の技術トレンドを学びたいというときには、企業の人にお話しを伺い、体験できるというのがわかりやすいと思います。そういう意味では情報工学科では企業と連携することや、授業の中で話をしてもらうことがとても大切です。また、企業が出す課題を学生が解決するPBL(課題解決型学習)も充実させたいと考えています。実際にある問題を課題として出すことで、学生も「社会に出たらそういう考え方が必要になるのか」と具体的に実感できます。学生の未来を考えたときに、企業と連携をとりながら学ぶのは大切だと感じています。今後、さまざまな企業との連携も進めていく予定です。

松尾:私は発達障がいの人を支援するゼミに入ろうと考えているのですが、そういった企業からの課題があれば、より具体的に社会が見えると思いましたし、就職にもつながりそうですね。今後そのような課題の機会があれば、ぜひ積極的に取り組みたいです。

<ここがDISCOVERY!>

・超スマート社会は楽しさや暮らしやすさにつながる!
・みんなで技術を作り上げていく社会になっている今、心理学やさまざまな分野とITを掛け合わせることで新たな技術や価値を生み出すことができる!

・新棟のサイバーメディア・ラボでは最新の技術を体験できる!
・企業との産学連携により、将来を見据えた学びを深めることができる!

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