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アシックス商事と共同開発したシューズがグッドデザイン賞を受賞
商品プロモーションは、京都橘大学OBが担当!

特 集

2021.01.22

京都橘大学健康科学部理学療法学科の村田伸先生と、アシックス商事株式会社(以下/アシックス商事)との共同開発で誕生したヘルスケアウォーキングシューズが、2020年グッドデザイン賞を受賞し注目されています。同社で販売促進に携わっている鈴木景太さんは京都橘大学の卒業生です。村田先生と卒業生の鈴木さんにシューズの開発と健康づくりについてインタビューしました。
※インタビューおよび撮影時のみマスクを外しています

健康科学部 理学療法学科 村田 伸 教授
<専門分野>
ヘルスプロモーション理学療法学/健康心理学/老年看護学
<研究テーマ>
・高齢者の転倒予防に関する研究
・高齢者の簡易機能評価法の開発
・高齢者の主観的健康感に関する研究

鈴木 景太さん
アシックス商事株式会社 販売創造本部 マーケティング部
2017年3月、京都橘大学健康科学部理学療法学科卒業。卒業後、岐阜県の病院で理学療法士として3年間勤務。2020年3月、アシックス商事株式会社入社。

Q/2020年度グッドデザイン賞を受賞した「ヘルスケアウォーキングシューズ」の機能性や特徴について教えてください。

村田:グッドデザイン賞を受賞したヘルスケアウォーキングシューズは「ひざケア」に特化したシューズを展開する「KNEES UP(ニーズアップ)」シリーズの商品です。ひざの負担を軽減するひざに優しいシューズの開発を産学医で共同して取り組みました。

日本では、高齢者を中心に、O脚やひざに負担を掛ける仕事をしている人、筋力低下、肥満、ケガなどが要因となって変形性ひざ関節症で悩む人が多くいます。現在、40歳以上でこの症状を抱えている人は約3000万人いるとされています。歩くことは健康づくりに良いとされていますが、変形性ひざ関節症の人は、ひざが開いているために、歩くたびにひざが外に傾いてしまい、痛みを感じるだけでなく症状が悪化し、歩くことを控えるようになってしまいます。

このウォーキングシューズは、ひざの悩みを抱えていても安心して歩くことができるように、足が地面に着地した時にかかとを内側に傾かせ、ひざ関節のバランスを調整する機能を持っています。具体的には、足が地面に着地して荷重がかかると内側にたわむ特殊なクッション機能を取り入れた靴底と、着地した時のかかとの内倒れをサポートし、安定性を高める内と外が非対称のかかとカウンター(かかと部分を包む芯となるパーツ)などを組み込んでいます。このシューズが誕生したことで、中高年の方やO脚で悩む人も安心して歩いていただくことができます。

Q/「ヘルスケアウォーキングシューズ」の開発で、最も苦労したことを教えてください。

村田:機能性商品を開発する際は、ひざの症状で悩んでいる人を対象に調査や検証実験をしなければなりません。ところが変形ひざ関節症は無症状の人も多いことに加えて、「歳をとったから仕方がない」と考えている人も多いからでしょうか、通院をしている人が少ないのです。このような事情で、ターゲットとなるひざの悩みを抱えている人を探し出すことが難しかったです。 そこで、私が勤務していた九州の整形外科に協力を依頼して、21人の方を対象に「ひざの内反動揺の抑制」「歩行機能の向上」「ひざの痛みの軽減」「活動性の向上」などについて検証実験を行いました。開発した試作品を、約1年間、被験者に使用していただき、ひざの状態を検証したところ、なかには杖を使わなくても歩けるようになった人もいました。

Q/杖を使わなくても歩けるようになった方がいると伺うと、シューズと健康づくりには深い関係があると改めて感じます。村田先生が、アシックス商事との連携で研究開発に取り組んだきっかけを教えてください。

村田:私は、高齢者の足指に関する研究に取り組んでいるのですが、約5年前にアシックス商事の方が私の研究室に訪ねて来られました。「高齢者の方に喜んでいただける機能性シューズを開発したい」という考えに賛同し、共同開発が始まりました。最初に取り組んだのは、歩くたびに足指の筋力が付くという機能を持ったウォーキングシューズ、その後、働く女性に向けたむくみをケアができるパンプス(2020年度グッドデザイン賞受賞)も開発しました。この商品は大手航空会社にも採用されています。

Q/現在、アシックス商事でヘルスケアウォーキングシューズのプロモーションを担当している鈴木さんは京都橘大学のOBと伺っています。

鈴木:理学療法士を志して京都橘大学に進学しました。大学では、スポーツ・運動器障害について学び、理学療法士に必要な知識や実践的な学びで技術が身につけられました。村田先生の授業も多く受講しました。卒業後は、理学療法士として病院に勤務して約3年が経った頃、大学院で研究をしたいという思いになり、村田先生に連絡をとって相談しました。すると先生が「アシックス商事が健康のことを考えたシューズを開発していて、理学療法士の資格を持った人を求めている。面接を受けてみてはどうか」と勧めてくださいました。先生が産学医連携でアシックス商事と共同研究をされていることを在学中には知りませんでしたし、そんな話になるとは思っていなかったので驚きました。

村田:鈴木さんは理学療法学科の2期生です。すでに1期生の卒業生がアシックス商事で活躍していて、「京都橘大学の卒業生は優秀」という定評がありました。もちろん鈴木さんが採用試験で良い結果になったのは、彼自身が優秀で素直な人柄と、卒業後3年間、病院で理学療法士として経験を積んだ実績が大きく評価されたのだと思います。アシックス商事は将来性のある会社ですし、理学療法士としての専門知識と技術で健康支援を考えたシューズの開発や販売促進に携わることに、やりがいもあると考え勧めました。

鈴木:卒業後、何年経っても学生のことを覚えてくださっていることに胸がいっぱいになりました。それと同時に、精一杯、良い仕事をすることが村田先生への恩返しになると思っています。

Q/鈴木さんの担当業務について教えてください。

鈴木:ニーズアップシリーズの商品プロモーション活動として、各地の病院を訪問して商品機能をアピールしたり、展示会の企画、開催運営などを担当しています。ところが、入社時期はコロナ禍となり自粛が続いていたため、社外での活動はできない状況でした。そのため、展示会を急きょ、オンラインで実施するなどの対応をしました。2020年12月に、パナソニックと弊社で歩行と健康づくりをテーマに講演するイベントを開催し、私が講師を務めました。このイベントで手応えを感じ、理学療法士の活躍の場は幅広いと実感しました。

医療業界含めて大変厳しい世の中になっています。ですが、今もなお院内外限らずひざに困っている方々はたくさんいらっしゃいます。病院を訪問するという当初の方法を改めまして、少しでも多くの方々の手元に届きますように最善の方法を模索しています。

Q/開発したシューズがグッドデザイン賞を受賞したことについて感想をお願いします。

村田:グッドデザイン賞は、4000点の中から30%が選ばれると聞いています。テレビコマーシャルを見ていると、受賞商品には「グッドデザイン賞受賞」と表記しており、この賞が権威ある賞だということがわかり、とてもうれしく思っています。

鈴木:この賞を受賞したことで、ニーズアップシリーズの商品が多くの方の目に留まるようになったのではないでしょうか。これを機に、ひざの痛みに悩んでおられる人はもちろん、ひざの悩み予防に役立てていただければと思います。

Q/村田先生と鈴木さんとが連携して商品開発ができるようになる日が楽しみですね。京都橘大学で学ぶ魅力を教えてください。

鈴木:同じ目標を持った仲間と出会えて、ともに学び、一緒に理学療法士の資格を取得できたことで、皆で助け合いながら前に進む大切さを学びました。また、国際、人文、教育、社会、医療系の学部も同じキャンパスで学んでいるため、互いに学んでいることを話したり、教えあったりしたことが役に立っています。今、思うとキャンパスが社会の縮図のようで、このような環境そのものが京都橘大学の魅力だと思います。

村田:さまざまな学部・学科が同じ場所にあるから思わぬ出会いにつながって、刺激を受けますよね。いろいろな人と交流する経験が、社会に出たときに役に立ちます。また、鈴木さんの話を聞いて、鈴木さんは理学療法士として一般企業で活躍の場を広げるために何をすべきか。どうすれば理学療法士が一般企業で活躍できるのかを考えて実行する使命があると思いました。鈴木さんならできると思います。

鈴木:今後、さまざまな結果を出して、理学療法士の活躍の場は病院だけでないことを証明したいと思います。

<ここがDISCOVERY!>

・京都橘大学健康科学部理学療法学科とアシックス商事が産学連携で開発したシューズが2020年度グッドデザイン賞を受賞!
・「KNEES UP(ニーズアップ)」シリーズは、ひざの悩みを抱えていても安心して歩くことができるウォーキングシューズ!
・理学療法士の活躍の場は医療機関にとどまらない!

・京都橘大学の多種多様な学部が集うキャンパスでの経験は社会でも役に立つ!

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