Special

無印良品と建築デザイン学科の特別ワークショップ
『みんなでつくる仮設建築 ~ 学生が生み出す、新しい学びのコミュニティ』 
<前編>プラン発表!!

特 集

2021.08.06

まもなくリノベーション完成予定の管理・特別教室棟。ここには、工学部建築デザイン学科の学生が使用するCAD教室や演習室ができるほか、学生が自由に集えるラーニングコモンズも配置されます。

このコモンズに学生たちの活動の道具となる仮設建築(移動できる家具など)を、学生の手によって生み出そうと立ち上がったのが、『みんなでつくる仮設建築 ~ 学生が生み出す、新しい学びのコミュニティ』です。

テーマは「つづく場・つなぐ場 ~活動から考える仮設建築~」。無印良品 京都山科にファシリテーションを企画・運営いただくことで、実現しました! 建築やインテリアを学ぶ河野良平ゼミの学生が3つのグループに分かれ、班ごとにアイディアを出し合いながら約4カ月かけてプランを練っていきました。また、京都橘大学建築研究会[TAP(Tachibana Architecture Project)]も飛び入り参加。そして7月3日、各グループからの最終プランの発表の場が設けられました。当日は、河野ゼミの1~3班とTAPに加え、無印良品からこのために結成された「チームMUJI」の皆さんも、プレゼンを披露。学生たちは大きな刺激を受けていました。

【1班】コモンズにおけるロッカーの提案

トップバッターの1班は、「学生専用の無料ロッカーがない」「荷物を置く場所がなく床に置いている」「コンセントが少なくスマートフォンの充電ができず不便」などの現状の課題に着目し、ロッカーの配置を提案しました。

<Point>

  • コモンズの中央に、空間を分けるように木枠の棚を配置。固定のロッカーではなく、カゴを入れて置き、出し入れできるように。
  • カゴは学生たちが必要に応じて自由に持ち出して使えるようにする。大きいカゴはカバンを入れる収納ボックスとして使用でき、小さいカゴの中には、モバイル充電器や鞄フック、傘フックなどの便利アイテムが入っている。
  • コモンズを使う人が増えるほど棚に置かれたカゴが減り、空間に“つながり”が生まれる。一種のインスタレーションのような要素も含まれている。
  • 動線の確保のため、棚には人が通れるゲートも用意。通路の内側には身だしなみを気にする学生のために、鏡を貼り付ける。

※ある特定の室内や屋外などにオブジェを置いて、場所や空間全体を作品として観客に体験させる表現手法のこと。

<無印良品の皆さんからのコメント>
「無意識に過ごしてたら見つけられない、実際に使ってる学生だからこそ気づけた課題。ここを抽出できた点は抜群だった」
「収納が最適だったかどうかは別にして、使う人が増えることで風景が変わるという点はおもしろく、魅力を感じた」 

 

【2班】つなげる屋台

2班は「知識と技術をつなぐ」をコンセプトに、移動式屋台を提案。建築デザイン学科生ならではの視点で、模型製作で余った資材や教科書をリユースし、屋台で配布することで学年間のつながりを生み出すプランを発表しました。

<Point>

  • 学祭のようなつい寄りたくなる屋台を、コモンズの軒下に設置。キャスターを着けて可動式に。
  • 上回生は余った資材を屋台に置き、伝言板に模型の写真や資材の使い方を紹介する。資材をもらった人も掲示板にメッセージを残すことで、情報交換の場として活性化させる。
  • ゆくゆくは学祭やオープンキャンパスで使うことで学内のつながりを生んだり、地域の方にも活用してもらうなどして広がっていくことも想定。
  • 「不用品置き場」にならないように、無料会員登録と掲示板への書き込みをルール化。

<無印良品の皆さんからのコメント>
「リユースを通じて、人とモノ・人と人がつながるという考え方、資材の知識を増やす、後輩に伝承するという考え方がすごくいい」
「伝言板のルールもおもしろく、よく考えられていると感心した。プレゼンも全体的によくまとまっているなと思った」

 

【3班】タチキヲ(=タチバナキヲスク)

3班は、入学したばかりの新入生が履修登録時に「どれがおもしろい授業かわからない」と困っていることから、先輩の意見を知ることができる場を企画。上回生は不要になった教科書のリユースができ、メッセージを通じて学年間で交流できる仕組みを提案しました。

<Point>

  • 教科書の多くは1年間使い終えると不要に。上回生が使わなくなった教科書を回収して展示し、必要な下回生が持ち帰れるようにする。
  • 活動に関心をもってもらえるよう、不要になった教科書はブックタワーやブックチェアに集め、回収の過程も楽しめる仕掛けに。
  • 授業のおすすめポイントを書き込んで教科書に挟めるよう、POPを用意。評価が一目で伝わる表情のデザインも施しておく。
  • 教科書をもらった人もお礼のコメントを残すことで、つながりを生む。

<無印良品の皆さんからのコメント>
「学生らしい上回生・下回生の関係を意識している点に魅力を感じた。ワクワクする企画だと思った」
「回を重ねるごとにチームワークがよくなっていき、今日は細かいところまで考えて、プレゼンできていた。一番進化を感じたチーム」

 

【京都橘大学建築研究会TAP】ワークショップと変形はしご掲示板

TAPは、リニューアルする製図室が1・2回生と3回生で分かれることから、先輩と後輩の交流が希薄になることを懸念し、気軽に話せるきっかけづくりとしてワークショップを提案。イベントの告示や成果物の展示を行う掲示板のデザインには、 “見てもらえる仕掛け”が盛り込まれていました。

<Point>

  • コモンズで年4回コンペを開催!ワークショップをきっかけに学年の垣根を越えて交流しよう!
  • コンペの開催期間告示やイベント結果の報告は、『変形はしご掲示板』で行う。
  • 掲示内容が変わるたびに気づいてもらえるよう、掲示板は何段階か変形する。
  • 【通常】天井にはしごがぶら下がっている状態 ➡【イベント告示】はしごにフライヤーが垂れ下がっていることで目に留まる ➡【イベント後】はしごがブラインドのように折り畳まれ、姿を消す。そこにイベントのレポートや成果物が展示される。

<無印良品の皆さんからのコメント>
「すぐに風景が浮かんだ。何よりも本当に楽しそうで、実現したら長く使われていくんだろうなということまで想像が働いた」
「これだけの人数をマネジメントして、短期間でここまで提案をまとめてきたのはすごい」

 

【チームMUJI】移動販売 ~動く無印良品~

プレゼンのラストを飾ったのは、今回特別に結成された「チームMUJI」。メンバーの皆さんは、普段は無印良品 京都山科などの店舗にインテリアアドバイザーや販売スタッフとして勤務しています。「みんなでつくる仮設建築」を企画していただいた無印良品 京都山科の松枝展弘さんから「学生たちに、社会人のプレゼンを見てさまざまなことを感じてもらいたい」という思いを託され参加してくれました。

聞き馴染みのあるケルト音楽がBGMとして会場に流れ、そろいのワークジャケットを羽織って登場したチームMUJI。冒頭から一気に無印良品の世界へと引き込みます。

プレゼンのテーマは「移動販売 ~動く無印良品~」。「移動販売で店舗販売以上のワクワクを」というコンセプトの下、「移動販売における無印良品らしさ」を検討。京都橘大学のいろんな場所にいろんなサイズで出店でき、車での持ち運びや店舗での保管を簡単にするため、軽さと強度を兼ね備えたMDF素材の箱什器を選定。ダブルクリップで簡単に連結でき、重ねて持ち運びも簡単。座ることもできる優れモノです。

※※ Medium Density Fiberboard(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)の略。日本語では、中質繊維板と訳され、木材の原料チップを蒸煮・解繊したものに合成樹脂を加えて成形した板のこと。

<CONCEPT>

  • 移動販売で店舗販売以上のワクワクを ➡ そこで生活している人を無印良品で楽しませる
  • 「無印良品」という名のテーマパークである ➡ 空間のデザインの没入感
  • 地域とのつながりを意識し、テーマパーク性を活かした企てを

また、「学生の思い出作りや体験の場になってほしい」という思いから、事前にtwitterを通じて学生へのアンケートを実施。「楽しいこと」「やりたいこと」「大学にあったらうれしいもの」を聞いたところ、538件の回答がありました。そこから見えてきたのは、学生たちが「友人との会話、交流、つながり」などを求めていること。これをもとに考えられた、複数のプランが発表されました。

<PLAN>

  • 自転車販売…荷台に量り売り商品やバウムなどのお菓子を積んで、大学内のあちこちで販売する
  • フォトスポット…撮った写真を印刷し、オリジナル卒業アルバムも作れる空間
  • 仲間を集めておいしいバウムを食べよう…他学部の人と一緒に来るほどおいしいバウムが食べられます!
  • その他…ドリンクのタンブラー販売/オリジナル扇子づくり/私のエモスタグラム/テーブルとイスおいていきます

プランには移動販売の告知や集客、つながるための仕掛けとしてユニークなアイディアが随所に盛り込まれており、聞いていた学生からもたくさんの質問や「ぜひ実現してほしいです!」という期待の声があがりました。

興味を引くエピソードや聞く人への問いかけ、ときには笑いも交えて、聞く人を飽きさせないチームMUJIのプレゼンテーション。終始ひきつけられていた学生たちから、この日一番の拍手が起こりました。

プランが実現するのは…!? 投票結果、発表!!

すべてのプレゼンテーションが終了後、実際に新棟のコモンズに、どのファニチャーをつくるかを決めるための投票が行われました(チームMUJIは対象外)。果たして、実現するのはどのチームのプランでしょう?!

◆投票ルール◆
・学生は1人1票、自分のチーム以外に投票
・無印良品、京都橘大学関係者は1人3票をいずれかのチームに投票

◆結果発表!◆
投票結果は、1班(ロッカー)が10票、2班(屋台)が22票、3班(キオスク)が16票、TAP(掲示板)が15票となりました!2班の皆さん、おめでとうございます!!!

◆最終プランの発表を終えて◆
投票の集計時には、学生以外の関係者で今後の進め方が検討されました。票にバラつきはあったものの、「どれもよかった」という意見で一致し、できる限り実現できれば、という方向に。まずは一番多くの票を集めた2班の「屋台」の製作が確定。さらに3班の「タチキヲ」からは、ブックタワーやブックチェアといったアイテムを選定して製作。1班の「ロッカー」は、仮設建築という課題に対して固定して設置することは難しいという判断に。ただし「荷物を置く場所がない」などの課題解決には取り組めるよう、コモンズ内に何らかの要素が採用される予定です。TAPのプランに関しては、アウトプット以上にアイディアの本質にとても高い評価が集まりました。こちらも実現に向けて始動する予定です。

今後は、「みんなでつくる仮設建築」のファシリテーションを担当する株式会社torinoko 代表の小山裕介さんとともに制作が進んでいきます。学生の手による、学生たちの活動の道具となる仮設建築の実現まであと少し。一体、どんな空間ができるのでしょうか。どうぞお楽しみに!

後編では、この企画をけん引してくださった無印良品の皆さん、見事なプレゼンを見せてくれたチームMUJIの皆さんへのインタビュー記事を掲載します。>

<ここがDISCOVERY!>

【協力してくださった皆さま】
株式会社 良品計画
 無印良品 京都山科
  コミュニティマネージャー 松枝展弘さん (2021年9月より京都・奈良・南大阪事業部長)
  インテリアアドバイザーマネージャー 白水香苗さん

 無印良品 東京有明
  住空間(商品企画・法人)担当 部門マネージャー 林高平さん
  住空間(商品企画・法人)担当 野元あゆみさん

 企画デザイン室 デザイナー/株式会社torinoko代表 小山裕介さん

チームMUJIの皆さん

【無印良品 京都山科】 

 無印良品 京都山科は、2019年11月に地域との協業をコンセプトにした店舗です。近郊地域の食材を取り扱う食の専門フロアを展開して、地元の人々と密接に連携した各種の取り組みを展開されています。本学と無印良品 京都山科は、これまでコロナ禍における学生への食生活支援の協力を行うなど連携事業を進めています。

 無印良品 京都山科 HP https://shop.muji.com/jp/kyoto-yamasina/

【無印良品 東京有明】

 コロナ禍によりさらに加速する地域課題、暮らし方の変化に対し、当事者となる地域や企業、自治体とともに「感じよいくらし」を目指す空間サービスを提供されています。「家」「商業施設」「オフィス」「公共」の4つのサービスを展開されており、本学とは新たなキャンパス空間創出についての連携をすすめています。

 無印良品 東京有明 HP https://shop.muji.com/jp/tokyo-ariake/


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