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無印良品と建築デザイン学科の特別ワークショップ
『みんなでつくる仮設建築 ~ 学生が生み出す、新しい学びのコミュニティ』 
<後編>仕掛け人 & チームMUJIにインタビュー!

特 集

2021.09.16

まもなくリノベーション完成予定の管理・特別教室棟。ここには、工学部建築デザイン学科の学生が使用するCAD教室や演習室ができるほか、学生が自由に集えるラーニングコモンズも配置されます。

このコモンズに学生たちの活動の道具となる仮設建築(移動できる家具など)を、学生の手によって生み出そうと立ち上がった『みんなでつくる仮設建築 ~ 学生が生み出す、新しい学びのコミュニティ』。学生グループのプラン発表を終え、実際の製作に向けて動き出しました。(プラン発表の様子は前編で公開中!)

無印良品 京都山科との協業で立ち上がったこのワークショップ。指導に当たってくださったコミュニティマネージャーの松枝展弘さん(2021年9月より株式会社良品計画 京都・奈良・南大阪事業部長)、インテリアアドバイザーの白水香苗さん、株式会社良品計画 企画デザイン室 デザイナー/株式会社torinoko代表の小山裕介さんに、プロジェクトへの思いや最終プラン発表の感想を語ってもらいました。(写真左から白水さん、松枝さん、小山さん)

また発表の場で、学生のお手本となるプレゼンテーションを披露してくださった「チームMUJI」の皆さんにもお話を伺いました。

※インタビューおよび撮影時のみマスクを外しています

ワークショップの仕掛け人に聞く!

「最終発表での学生の皆さんの成長ぶりに、手応えを感じました」

はじめに簡単に自己紹介をお願いします

白水/私は、無印良品 京都山科でインテリアアドバイザーとして、お客様からご相談を承っています。また、山科とイオンモール堺北花田のインテリアアドバイザーのリーダーも務めています。

松枝/私は、コミュニティマネージャーとして、地域との協業をテーマにした新形態の店舗開発を担当しており、2018年の無印良品 イオンモール堺北花田と2019年京都山科の立ち上げに携わりました。

小山/私は長年、無印良品でプロダクトデザインを手がけてきました。日本や世界中のいろんな工場を回ってものづくりをした経験から、現在は地方の林業や中小企業の方々とのものづくりをテーマにした活動もしています。

ワークショップのきっかけを教えてください

松枝/京都山科店がオープンしてすぐの頃に、大学の企画部の方から「何か一緒にできれば」とお声掛けいただいたのがお付き合いのきっかけですね。その後まもなくコロナ禍になって。緊急事態宣言で経済的に影響を受ける一人暮らしの学生さんのために、大学が特別価格でお弁当を販売するという取り組みをされたのですが、私たちはCafé&Meal MUJIのお弁当の提供という形で協力させていただきました。

その後、校舎の改修では、無印良品 東京有明の空間設計部門が関わらせていただくことになって。良品計画はこれまでもさまざまな施設を手掛けてきましたが、常にそこに住まう生活者や利用者の視点を大切にした空間づくりをしています。なので、今回も空間づくりの過程で、大学の主役である学生さんが主体的に取り組めるような活動ができないかと思って。それで立ち上がったのが、このワークショップです。

白水/京都山科店をオープンして、この地域のことを考えているときに、京都橘大学の職員の方々に出会ったんですよね。お話していると本当に情熱をもっておられることを感じて。どうにかその思いに応えたいと思ってこのワークショップに取り組みました。でも最初の頃は学生の皆さんの反応が全然よくなくて。誰も、一言もしゃべらなかったんですよね。「無印良品が、何か難しいこといってるぞ」みたいな感じで。だけど回を重ねて話していく中で段々距離が縮まっていったというか。

小山/本当にそうでしたよね。グループワークをやったのが結果的によかったと思いますね。学生の各班に先生や職員さんたち大人が数人加わるという環境を作ったことで議論が盛り上がりました。

「チームMUJI」の参加にはどういった狙いがあったのですか?

松枝/学生の皆さんには最初から、「社会に出るということを意識してほしい」ということは伝えてたんです。できるだけ社会に出てからの本番のプレゼンだと思って挑んでほしいと思って。なので、チームMUJIのメンバーには「君たちは本番を見せるのが使命だよ」と結構プレッシャーかけてましたね。

白水/普段インテリアアドバイザーをしていても、なかなかこういう機会って稀なんですよ。私自身、これまでいろいろな経験をさせてもらったことが人生の糧になっているので、できるだけ参加してもらいたいなと思って何人かに声をかけたら「やってみたい」っていってくれて。販売員としてアルバイトに来ている学生さんも2人参加してくれたんですけど、いい経験になったんじゃないかなと思います。

最終プラン発表を見た感想を教えてください

小山/実は私はプレゼンテーションの数日前にチェックをさせてもらってたんですよ。その時点ではどの班も正直まだまだ完成度が低くて。修正した方がいいところを伝えてもらったんですけど、何せ直前だったので厳しいかなぁと思ってたんですよね。でも本番を見て、「よくぞ、ここまで仕上げたな」と驚きました。みんな、細かいところまで詰められていたと思います。

松枝/始まる前の緊張感がすごくて、みんな相当頑張ったんだろうなって思いましたね。発表を聞いているときの顔も最初の頃と全然ちがった真剣なものだったし、ほかの班の発表への質問もたくさん出ていて。

白水/大きな変化を感じましたよね。一番票を集めたプランは、学生さんからの支持が多かったですね。今日、みんなが発表した“つなぐ”プランがどんな風に実現できるのか、私もすごくワクワクします。例えば5年後の新入生が「2021年にこんなことがあったらしいよ」って話題になってたり、輪が広がってたりしてたら楽しいだろうなって。

小山/この先は実現へ向けて私がメインでサポートしていくことになるので、今はそれで頭いっぱいです(笑)。プレゼンテーションして終わりじゃなくて、実際に作って検証するまでがこの企画で重要なことなので、しっかりフォローしていきたいと思います。きっと実現したら愛着がわくと思うので、自分たちでメンテナンスして、つなげていってくれるんじゃないかと期待しています。

チームMUJIのメンバーにインタビュー!

「移動販売で、いつまでも思い出に残る体験を」

はじめに簡単にメンバー紹介をお願いします

安達/私は京都山科でインテリアアドバイザーをしています。森本さんと長谷川さんは大学生で、アルバイトに来てくれています。イオンモール堺北花田から参加してくれたのが、販売担当の高橋さんとインテリアアドバイザーの北島さんです。

今日発表したプランは、みんなでZOOM会議やLIINEで話し合って固めていきました。

森本さんは京都橘大学の学生なので「食堂のほかにも食事できる場所が欲しい」といった、通っているからこそわかる視点で意見を出してくれました。長谷川さんは、今の学生が感じていることをすごく案の中に滑り込ませるのがすごく上手なんです。「みんな本当は人と交流したい」という意見は新鮮でしたね。

ワークショップを通して学生から教わったことはありますか

北島/今日の発表で「荷物の置き場に困る」という課題の抽出がありましたが、やっぱり実際にそこで過ごさなければわからないことがいっぱいあるんだなと実感しました。

高橋/私も同じですね。普段、お客様の収納相談でもお困りごとを細かく聞いているのですが、収納に限らず、今回のような空間づくりにも課題の洗い出しは重要なことなんだなと勉強になりましたね。

学生のお二人は、社会人チームに参加してどうでしたか?

森本/目線が違うなと感じました。学生の場合は普段生活する上で何があれば便利かという発想になるんですが、皆さんは「どうしたら思い出をつくれるか」という着眼点で考えられていて。

長谷川/私は他大学の映像学部でゲームを作っているのですが、ゲームのデザインを考えるときの思考法がほかのプランニングに通用するのか試してみたかったんです。結構類似点があったのは発見でしたね。「移動販売で何を体験させるのか」ということを機軸に考えました。

プランに込めた思いを教えてください

安達/無印良品が京都橘大学に通う学生さんの思い出に残ってくれたらいいなっていうことをとにかくずっと考えてて。まるで親になったみたいな気持ちで。何年も先になってから「あのとき楽しかったな」と思ってもらえるなら、こんなにうれしいことはないなとか思いながら資料を作ってましたね。

プレゼンテーションを終えた感想を教えてください

長谷川/京都山科のお店がオープンしてから1年が過ぎて。今回のプレゼンテーションでは自分の中で積みあがった無印良品をアウトプットできる場になりましたね。いい経験ができて参加してよかったです。

森本/自分だけでは全然アイデアが出ないけど、誰かの何気ない言葉から、「こういうのはどう?」「それもいいじゃん」といった会話が生まれて。チームで考えることって大事だなと実感しました。

この後、学生による仮設建築だけでなく、チームMUJIから提案された「移動するMUJI」も、実現に向けて動き出すことが決定しました! 移動する無印良品を京都橘大学で体験できる日も遠くない!? お楽しみに!

<ここがDISCOVERY!>

【協力してくださった皆さま】

株式会社良品計画

 無印良品 京都山科

  コミュニティマネージャー 松枝展弘さん (2021年9月より京都・奈良・南大阪事業部長)

  インテリアアドバイザーマネージャー 白水香苗さん

 無印良品 東京有明 

  住空間(商品企画・法人)担当 部門マネージャー 林高平さん

  住空間(商品企画・法人)担当 野元あゆみさん

 企画デザイン室 デザイナー/株式会社torinoko代表 小山裕介さん

 チームMUJIの皆さん

【無印良品 京都山科】 

 無印良品 京都山科は、2019年11月に地域との協業をコンセプトにした店舗です。近郊地域の食材を取り扱う食の専門フロアを展開して、地元の人々と密接に連携した各種の取り組みを展開されています。本学と無印良品 京都山科は、これまでコロナ禍における学生への食生活支援の協力を行うなど連携事業を進めています。

 無印良品 京都山科 HP https://shop.muji.com/jp/kyoto-yamasina/

【無印良品 東京有明】

 コロナ禍によりさらに加速する地域課題、暮らし方の変化に対し、当事者となる地域や企業、自治体とともに「感じよいくらし」を目指す空間サービスを提供されています。「家」「商業施設」「オフィス」「公共」の4つのサービスを展開されており、本学とは新たなキャンパス空間創出についての連携をすすめています。

 無印良品 東京有明 HP https://shop.muji.com/jp/tokyo-ariake/



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