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文系だっていい、一念発起して情報工学科へ。
「ゲームをつくりたい」の夢を実現するために!

特 集

2024.07.10

京都橘大学工学部情報工学科は2021年に開設されました。その1期生として入学した清家悠吾さんは、実は高校時代は数学が苦手で文系コースを選択していたそうです。それでも彼を突き動かした「ゲームづくり」への想い。大学入学後に数学を学び直し、2024年3月に開かれた情報処理学会全国大会では学生奨励賞を受賞するまでになりました。大学やゼミを選んだ理由、将来の夢などについて、所属するゼミの吉田俊介教授と語り合っていただきました。

工学部 情報工学科 吉田俊介 教授
<専門分野>
バーチャルリアリティ、コンピュータグラフィックス、ヒューマンコンピュータインタラクション
<研究課題>
・裸眼立体映像技術
・力覚ディスプレイ
・バーチャル環境との対話技術

清家悠吾さん
工学部情報工学科4回生/吉田ゼミ
<研究テーマ>
「ゲーミフィケーションの手法を用いたゴミの分別を促すゴミ箱の設計」

※2024年5月取材

Q/清家さんが京都橘大学に入学した理由を教えてください

高校生の時は数学と物理、化学が苦手で、文理選択では逃げるように文系を選びました。でも、すごくゲームが好きで、高校3年生になって将来何をしたいかを考えた時に「ゲームをつくりたい」と思ったんです。それも、絵を描くとかではなくてプログラミングなどのゲーム開発に関わりたかった。

そこで文系でも入れる情報系の学部を探していた時に、たまたま電車の中で京都橘大学が情報工学科を新設するという広告を見ました。面白そうだなと思って調べたら文系でもチャレンジできることを知り、受験を決めました。数学の勉強など含めて、入学後の学習サポート環境が整っていることも大きな決め手になりました。ここでなら、文系出身の僕でもやっていけるんじゃないかと。

Q/不安はありましたか?

清家:最初は不安しかなかったです(笑)。1回生の授業では自分が習っていない分野があって不安が的中したのですが、友人に教えてもらったり、先生に何回も質問しながら乗り切りきることができました。

吉田:ゲームが好きだと聞いていたし、プログラムも結構好きだったので、てっきり理系なのかなと思っていました。入試の数学は大丈夫だったの?

清家:そうですね、数学はⅠA・ⅡBだけで、あとは国語と英語でした。

※試験科目は2021年度入試当時。入学試験の最新情報については入試サイトをご確認ください。

吉田:入学後も文系ならではの苦労もあったかもしれないけど。ゲームの世界って数学がいっぱい出てくるんですよ。 三角関数のsin(サイン)、cos(コサイン)とか、ベクトルとか出てくるんですけど、文系の人は高校であまり深く勉強をやっていないと思う。それはどうしたの?

清家:ゲームづくりで使いそうなところを特にピックアップしながら頑張って学びました。周りには理系出身者も多いので、教えてくれる友人はたくさんいたんです。人にも環境にも恵まれて、本当に感謝しかありません。

Q/文系でも工学部を受験できるようにした背景を教えてください

吉田:工学って固いイメージがあって、学生さんにも敬遠されがちなところがあります。でも、世の中で勉強していくにあたっては工学的な知識が必要になることも多いですし、 文系の学生さんでもトレーニングさえすれば工学的な素養は身につけられる。だから門戸は広げておいて、大学でしっかり勉強して工学の学位を持って卒業してもらいたいと考えました。工学というワードだけで敬遠されてしまうのはもったいないので、文系でもチャレンジできる環境を作りたかったんです。清家くんは、まさにそのモデルになってくれている学生の1人ですね。

Q/高校時代に理系ではなかった学生に対してのサポート体制を整えておられるのですか?

吉田: 学んでおいた方がいい部分は1回生のうちに教えます。高校で数学に苦手意識を持ってしまい、難しいと思っている人がいるかもしれませんが、研究分野によって使う数学も絞られます。 進みたい分野が決まったら高校の教科書を引っ張り出してきて、もう一度学び直すという形でもキャッチアップはできると思います。

清家: 僕も、高校の時は数学を何に使うかがわからなかったけれど、ゲームのプログラミングに必要だと思ったら学ぶ意欲が変わりました。

吉田:何に使うのかがわからない状態で学ぶと辛いと思います。私は、よく「ゲームのレベル上げ」と言っていますが、レベル上げって地道であまり面白くないんですよ。でも大学に入って、実際に「こういうところに使うんだ」という目的がわかると、そこで初めて重要性がわかる。「あの時、レベル上げしといてよかった」と思うようになります。

私が専門にしているのはコンピュータグラフィックスやバーチャルリアリティという分野なのですが、どうしても数学的な知識が必要になってくるんですよね。 実は数学が使われていると気づいてから、大学で一生懸命勉強するということでもいいのかなと思います。

Q/情報処理学会全国大会に参加された経緯を教えてください

吉田:京都橘大学では3回生からゼミが始まります。清家くんたちは最初のゼミ生でしたので、4回生ぐらいで学会発表してくれる子が出てくればいいかなと考えていました。でも清家くんや、ほかの学生も面白いものを考えてくれたので、 「これなら3回生のうちに学会発表ができるかな」と思ったんです。

清家:いろいろな論文を読んでいた時に目に留まったのがゲーミフィケーションでした。ゲームを社会課題の解決に役立てるというものなのですが、僕はゲームが大好きなので、すごく心に刺さったんです。 その中で何をしようかなと考え、ゴミ問題と結びつけることにしました。ゴミ問題は社会的な課題ですが、市町村によってゴミの捨て方や分別などのルールが違うので、アプリを使ってゴミの捨て方やリサイクル方法を楽しく学べたらいいのでは、と考えました。

吉田:問題をゲーミフィケーションで楽しく解決しようという話をしていたんですけど、 最初に彼が提案したものは「それ本当に使いたいと思う?」というようなアイデアでした。自分が楽しいと思えないとダメだし、友人にも薦めたいと思えるようなものでなくてはいけないよね、というディスカッションを繰り返して、最後にはちゃんと形になるものを出してくれました。

清家:アイディアを出すのがすごく難しかったです。1人で考え込んでしまっていたので、いま思えば、もっといろんな人に聞くべきだったかなと思います。

吉田:ゼミ活動って、そういうことに気づいてもらうための場所でもあるんです。3回生の段階だとアイディアを出そうと思ってもすごく難しいんですよね。そこで、教員や同年代のゼミ生とディスカッションすることで引き出しを広げていくのがゼミ活動なんです。

清家:ゼミでは、気づきがとても多かったです。誰かの意見を聞いて、「それは自分のアイディアにはなかったな」と思うことがあり、対面でディスカッションすることの大切さを感じました。実験については、どう見せるかというところですごく苦労しました。自分では良い見せ方だと思っても、別の観点や第三者から見ると良くないこともある。そういうことに自分で気づくのが大変でした。今回作ったものは、LINEで使えるミニアプリです。レベルアップしたらスタンプがもらえる仕組みにしました。

Q/学会発表はいかがでしたか?

清家:僕のセッションには10人ぐらいいたんですけど、僕の発表は最後だったので「みんなすごい」と思いながら見ていたんです。発表はうまくできたけど、内容の深さでは、他の人の方がすごそうだと感じていました。

吉田:清家くんはテーマ的にもいいものを設定していましたし、プレゼンも頑張って、導入部分でしっかりと「こういうものを作りたい」とみせていた。最初のころはゲームなのに面白くないという話をしていましたけど、最後には本当に面白いものを作り、友人にアピールしたくなるものを作り込んでいました。

清家:受賞したと聞いても最初は全然実感がなくて、吉田先生から声をかけていただいた時に「やったんや!」と嬉しさがこみ上げてきました。

吉田:学会の中には、プロの研究者ばかりが発表するものもあります。情報処理学会の全国大会はどちらかというとエントリーレベルで、初めて学会に参加する人も多いんです。 だから、発表を応援するという目的もあって、発表のセッションごとに奨励賞という形で2名ずつ選出するというスタイルをとっているんですね。

もちろん、だからといって簡単に受賞できるわけではありません。エントリーレベルだからこそ参加人数も多いですし、4回生や大学院生たちの参加も多い。その中で、3回生で受賞できたことは本当に素晴らしいことだと思います。しっかりと発表ができれば受賞できると思っていましたので、私からすると期待通りでした。

Q/今回の受賞の意味合いについて教えてください

清家:就職活動を控えた3回生のタイミングで取れたというのはすごく大きいと思っています。受賞した日の午後にたまたまゲーム会社の面接があり、実績として「学会で受賞をしました」と自分のやってきたことを、自信を持って伝えることができました。その会社からは内定をいただくことができ、これで高校生の頃から抱いていた「ゲームづくり」の夢を叶える第一歩を踏み出すことができます。

吉田:3回生からゼミに所属することにした背景として、学生のサポートをしっかりしていきたいということと、勉強の面白さや、継続していくための気づきを早めに与えられるようにと考えていました。さらに、就活が3回生の後半ぐらいから始まるので、そこまでに何か1つトロフィーを持っておけたらという理由もありました。ゼミでも「3回生の半ばぐらいまでにコンテストや学会で受賞できたら就活などで役に立つよ」という話をしていたんですけど、まさにその通りになりましたね。大学院に進む学生なら、受賞をきっかけにさらに上の学会に出すということもできます。

Q/大学院への進学についても教えてください

吉田:理系だと大学院まで進学する人が多いですし、 教員の立場でいうと大学院まで行ってほしいという思いもあります。京都橘大学で大学院情報学研究科への飛び入学制度を用意していまして、 この制度を使うと、1年早く修士号を得た上で就活ができるんです。清家くんも就職した上で、もう少し学びたいとか、修士号を得ておいた方がいいという場面が出てきたら、ぜひうちに戻ってきて勉強してほしいですね。

清家:そうですね。どんどん知らないことも出てくると思うので、その時はここに戻ってきたいですね。

吉田: 会社で何年か仕事をした上で「この技術は世の中にもっと広めた方がいい」というものを見つけるかもしれない。それを広めるための学問として研究をするという方法もありますので。

Q/吉田先生が学科開設時に思い描いていたものは形になってきましたか?

吉田:学生たちはすごく頑張ってくれる子が多いです。教員側も積極的にいろんな授業を展開してきた結果、清家くんのような学生が出てきてくれました。1期生で先輩がいない分、教員が1年次、2年次に手厚いサポートができたというのは大きかったんじゃないかなと思います。

制度や施設のところでもさらに環境を充実させました。学生にとって、「VRゲームをつくりたい」と思っても、高価なデバイスにはなかなか手が出せません。同じように最先端の機器でものづくりをしたいという学生の希望を叶えるため、自由に最新機器にふれプログラミングができる場所「プログラミングパーク」を開設しました。アカデミックリンクス2Fにあるクリエーションラボが学生発案のプログラミングパークで自由にものづくりや研究に没頭できる場所になりました。開室中にはLA(ラーニングアシスタント)が常駐し、後輩たちの授業や勉強の相談にも乗っています。清家くんもLAとして活躍してくれています。教員だけでなく、学生が学生をサポートすることで継続的に手厚いサポートが実現しています。

清家:後輩たちには積極的に頼ってほしいですね。VRの使い方とか、パソコンの使い方とかも細かいところまで余さず伝えていきたいです。

Q/今後の夢を教えてください

清家:自分が作ったゲームに自分の名を残すことが夢です。ゲームをクリアした後に自分の名前が流れてくる、というのに憧れますね。

吉田:学生が大学で学んだことを社会に役立てるようになってほしいなと思います。 ゲームにたとえると、高校は「レベル上げ」で地道な部分。大学に入って「ボスバトル」が始まって、いろんな武器を駆使して問題を解決していくのですが、 ボスもいっぱいいるので、ボスに応じて武器を使い分けないといけないんですよね。世の中には様々な課題があるので、それを解くための自分だけの武器を大学で身につけてほしいです。

Q/高校生へのメッセージをお願いします

清家:京都橘大学の情報工学科は、自分から手を伸ばす人、積極的に動いていく人に全力で応えてくれる大学だと思うので、ゲーム制作やデザイナー、VRの道を進みたい……など夢がある人に向いていると思います。

当時の自分のように「文系だから」と迷っている方もいらっしゃると思うんですけど、文系の人たちにもどんどんチャレンジしてほしいです。文系理系関係なく学べる環境がここにはあると、実体験から僕自身がそれを一番感じました。数学が苦手でも、頑張れば大丈夫です。これから情報工学科を目指す高校生たちにとっては、先輩もたくさんいるので、どんどん学びやすくなっていると思います。

吉田:高校の勉強は基礎的な部分を学ぶので「何に使うかわからない」ということが多いと思いますが、大学に入ると「高校で学んでいたことが、こういう風に使えるんだ」ということがわかるので、ぜひいろいろな授業を受けて気づきをたくさん得てほしいし、やってみたいことを見つけてほしい。

そして「こういうことをしたい」と積極的にアピールしてほしいなと思います。大学には、アピールした人に手を差しのべるシステムはたくさんありますが、アピールしてくれないとなかなか手を差しのべることが難しいんですよ。受け身にならずに何事にも積極的にチャレンジしてほしいと思います。また、教員は何十人もいますから、自分の相性に合った先生を早い段階で見つけられるといいかなと思いますね。

<ここがDISCOVERY!>

・京都橘大学の情報工学科は、文系出身者も大歓迎!
・数学は研究分野に応じて使う範囲が絞られ、「何に」使われているのかに気づくと楽しい!
・3回生からゼミに参加でき、教員やゼミ生と密にディスカッションして成長できる!
・3回生で学会発表をして実績をつくり、就職活動に活かせる可能性がある!
・京都橘大学には大学院情報学研究科への飛び入学制度がある!

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