京都橘大学の工学部情報工学科は、
これまでの理系学部のイメージを良い意味で裏切ります。
特 集
2020.05.29
2021年4月、工学部情報工学科が開設されます。学部長の東野輝夫先生(就任予定)に、情報社会の現状を踏まえて、同学科の学びの特長などについてインタビューしました。
工学部 情報工学科 東野 輝夫 教授(工学部長就任予定)
<研究テーマ>
・IoTやAIを活用した状況確認技術やスマート社会構築技術
・モバイルコンピューティング技術 など
Q/京都橘大学が情報工学科を開設する理由や、京都橘大学ならではの学びについて教えてください。
約10年前まで情報系の技術は、コンピュータを使って仕事を行う人など、限られた人のための技術でした。ところが今では、AI(人工知能)が社会の様々な分野で利用され、自動運転技術も進展し、新たなスマートシティ構想が世界中で打ち出されるなど、情報技術を使って数年前には考えられなかったようなことが社会のあちこちで実現されるようになってきています。京都橘大学が情報工学科を新設するのは、このような社会の変化に対応し、今、求められる情報技術・知識を身につけ、未来を切り拓く若者を育てる必要があると考えたからです。
ここで大切なのは、本学科ならではの「学び」とはどのようなものかということです。先ほどお話したように、これだけ情報技術に係わるモノがあふれてくると、プログラミングを例に挙げても、処理するデータ量のスケールはますます大きくなって複雑化します。さらに、優れた技術を駆使してソフトウェアを開発しても、これからはユーザーに選ばれる魅力のあるデザインや見せ方をしなければ、競争に勝つことは難しくなってきます。このような現状から、本学科では、ますます台頭してくる新技術に無理なく対応するための基礎力をしっかりと身につけ、本学ならではの「文理融合の学びの環境」を活かして、ユーザーの心をつかむデザイン力、感性を養うことを考えています。わかりやすく表現するなら、「これまでの理系学部の堅いイメージを飛び越える文理融合の新しい学科」という感じですね。
Q/大学で4年間、情報系の学びに取り組む意義について教えてください。
例えばプログラミングの仕組みを少し勉強すると、小学生でも簡単にプログラムを作ることはできます。ところが、小学生が作るプログラムと企業の課題を解決するためのプログラムは規模が違います。当たり前と思うかもしれませんが、実はここはとても大切なポイントなのです。企業の課題を解決するプログラムを「大きなサイズのプログラム」と称しましょう。大きなサイズのプログラムはチームで制作します。このときチーム全員が、基本がしっかり身についた技術者であれば、質の良いプログラムが比較的スピーディに完成します。ところがチームの中に、基本が身についてない技術者がいると、利用者が多くなると動きが変になるプログラムとかスピードが遅くなるプログラムといったトラブルが生じたり、なかなかプログラムが完成しなかったりすることがあります。
なぜ、そうなるのかということですが、この分野が好きで独学や見よう見まねでプログラムを作ってきた人達は、とりあえず動くプログラムを作ることは得意でも、多数の人が同時利用するプログラムを効率よく動かす方法(アルゴリズム)や巨大なデータを効率よく収集・分析する手法を知らない場合があり、ある程度までは対応できても、いろいろな問題にしっかり対応するのが難しくなります。どのような分野でも同じだと思いますが、基本がしっかり身についていれば、どれだけ新しいことに遭遇しても、崩れることはありません。4年間、じっくりと座学で情報に関する基礎的な知識を学びながら、演習を何度も繰り返して実践的に技術を鍛えて知識を高めることは、社会で活躍し続ける力を養うことになるのです。
情報技術分野の基礎は、アルゴリズム(効率的な計算方法)とプログラミング(その計算方法を計算機の上で動くプログラムにすること)です。4年間の授業と演習でその力を身につけてみませんか。
Q/東野先生が、情報技術の分野に興味をもったのはいつですか? また、何がきっかけですか?
興味をもったのは高校時代です。JRのチケット予約システムを見たのがきっかけで興味をもちました。そのため高校時代は、将来はJRの予約システムのような巨大な社会システムを設計してみたいと思っていました。
なぜ、チケットの予約システムに興味をもったのかということですが、チケット予約に使用するシステムは、1秒間に何千人もの人が同時アクセスします。これはJRだけでなく航空会社の予約システムなども同じですが、多数の人からの同時アクセスをどんな仕組みで処理しているのだろうと漠然と考えていました。振り返ると、高校時代にこの仕組みに興味をもち、以来約40年間、アルゴリズムやプログラミングの教育・研究に携わってきました。この分野は本当におもしろくて興味が尽きません。例えば、グーグルなどの検索エンジンを使うと、キーワードを打ち込むだけで知りたいことが検索できるのはなぜだろう、どんな仕組みになっているのだろうと考えたことはありませんか? これは、バックに大量のデータが蓄積されていて、入力されたキーワードで必要な情報を探すという極めてシンプルな仕組みですが、一度に何万人の人が同時にアクセスしてもパンクしないのは、約100万台のコンピュータをバックに配置し、パンクしないように知的に振り分けているからで、その振り分けの仕組みは英知の塊です。
Facebookも同じで、バックに何万台ものコンピュータがあり、利用者が少ないときは自動でコンピュータの一部をシャットダウンする仕組みになっています。パソコンの立ち上げには2分程かかりますが、利用者数の急な増加があっても、その間も性能低下なく作動し続けるように巧みに制御し、しかもトータルの消費電力も低い。このあたりに趣味のプログラミングとプロの仕事との違いがあるわけです。こんな話を聞くと、この分野に少しでも興味がある人は「もっと知りたい」「自分には何ができるだろう」「挑戦してみたい」と思うのではないでしょうか。
Q/最後に、情報系の分野に興味を持っている高校生の皆さんにメッセージをお願いします。
ゲームが大好きで、ゲームを自分の手でつくってみたいと考えている人はもちろん、アプリケーション開発に興味があると考えている人も大歓迎です。ゲームもアプリケーションも自分で作ってみたら本当に面白いし、感動しますよ。4年間、自分の手でものづくりをする喜びや感動を追求しながら、教員も学生も一緒にアイデアを出し合うような楽しい雰囲気を大切にしたいと考えています。学ぶなかで「こんなことにチャレンジしてみよう」と皆さんの背中を押して、視野を広げるきっかけをつくることが私たち教員の役割ですから、まっすぐ飛び込んで来てほしいですね。
この分野の技術革新は目覚ましく、私たちの予測をはるかに超えています。次世代携帯電話の規格5Gが浸透すると、スマホのデータ通信が劇的にスピードアップして映像は驚くほど高速に受信できるようになります。今、できないことでも、5年後には皆が当たり前に使っている、情報分野はそんな世界です。そして、技術とアイデアがあれば社会課題を解決することもできるし、どこにいても世界に向けて発信することもできる。こんな分野は他にありません。一緒に、誰も見たことのない世界へと続く扉を開けましょう。ここが、皆さんの夢や憧れを実現するスタート地点です。皆さんのチャレンジを待っています。
<ここがDISCOVERY!>
・4年で基礎をしっかり身につけると、何十年後でも活躍できる!
・工学部情報工学科では、文理融合の学びの環境を活かしたデザイン力、感性を磨くことができる!
・東野先生が情報技術に興味をもったのは高校時代。JRのチケット予約システムの仕組み(アルゴリズム)に興味をもったのがきっかけ!
・ゲームやアプリケーションをつくってみたい人も大歓迎!
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