TOP

NEWS

人間発達学部開設記念フォーラム 「21世紀の人間発達学 今、考えよう―子どもからだ・感情・ことば」を開催

 本学では、10月17日(日)にキャンパスプラザ京都にて、2010年4月の人間発達学部開設を記念し、同学部主催のフォーラム「21世紀の人間発達学 今、考えよう-子どものからだ・感情・ことば」を開催しました。当日は、3名の講師による講演の後、人間発達学部長である八木英二教授をコーディネーターとして、パネルディスカッションを実施。教育関係者のほか一般市民合わせて150名が出席しました。

 講演では、まず竹下秀子氏(滋賀県立大学人間文化学部教授)が「チンパンジーと進化と人間発達-ピアジェのまなざしを」と題して、チンパンジーと人間の幼児期における心理と行動について報告。「ピアジェが残した『後成的発生』『環境との絶えざる相互作用』『主体の重視』という発達心理における重要なキーワードを今後も検討していく必要がある」と述べました。

.

 次に、川田学氏(北海道大学大学院教育学研究院准教授)が「発達における〈他者〉の意味-ワロンのまなざしを」というテーマで講演。ワロンの理論を援用しながら「乳児は自らの欲求を、感情表現によって他者に伝え、外界とつながり、実行する。本来、乳児は受動的な立場にあるが、すでにここには能動性が胚胎している。大人は日常の子どもとの関わりにおいて、その点を考えながら接する必要がある」と指摘しました。最後に登壇した本学人間発達学部児童教育学科の神谷栄司教授は「内的言語の働きと情動 ― ヴィゴツキーのまなざしを」として、子どもの成長過程における内在する言語の働きなどについて、ヴィゴツキーの理論にふれながら説明しました。

.

 その後のパネルディスカッションは、出席者の質問に答える形式で進行。竹下氏は、人間と他の動物の発達スピードの違いや、人間の発達を考える上でチンパンジーを研究することの意義などについて言及。川田氏は、子どもをどう見守っていくべきかなどの質問について、「まずは、子どもの成長に欠かせない、さまざまな環境の下で多くの人との関わりを経験させることが重要。その上で、一面的ではなく、多面的な理解が必要だ」と答えていました。また、神谷教授は、「幼児期の『ごっこ遊び』は、イメージの遊びであり、イメージを介して他者と関わることが、ヴィゴツキーの指摘する発達の最近接領域を形成する」と指摘するなど、終了間際まで受講者の質問に応答。最後に、コーディネーターの八木教授は、「複雑な環境下にある現代の子どもたちを含め、21世紀において人間の発達に関わる問題を考える上で、ピアジェ・ワロン・ヴィゴツキーの3人の成果を改めて検討する必要があるのではないか」と結びました。

.

2010年度NEWS一覧へ