科学技術の進展により社会が複雑化し、人類の未来が不透明な様相を呈する中で、人類が営んできた歴史の歩みを振り返ることが現在の緊要な課題となっています。ことに、国際社会における日本のあり方が問われる現在、日本の歴史と伝統文化に対する深い認識を持つとともに、それを基礎にして、日本・アジア・欧米という比較史的視点から、自国史への認識と異文化を客観的に評価できる能力を獲得した人材を養成することが不可欠の課題であるといえるでしょう。そうしたことを背景として、大学等の高等研究教育機関のみならず、博物館や文書館等の学芸員など専門職業人についても、歴史学に対する、より高度な研究能力が求められるようになっているのも近年の動向です。
近年の歴史学が高度に専門化・細分化している中で、こうした課題に応えるため、歴史文化専攻(博士後期課程)は、政治や経済なども含めて人間の諸活動や社会のあり方を広い意味での文化としてとらえ、人類の社会と歴史を総合的・多面的に認識し、研究を蓄積していくことを目的とし、以下のような科目を配置しています。
広い意味での人間社会の文化を、政治・経済・社会・文化といった人間の諸活動領域の総体として、一方で古代から近現代までの時間の流れの中で歴史的にとらえるとともに、他方で国際世界の空間的広がりの中において、比較史的に日本文化の特質を考えるといった、多面的なアプローチを通して総合的な認識へと発展させることを目的としています。
そのために、日本史分野においては、古代から近代までの「社会文化論特殊演習」科目を配置することにより、政治史・社会経済史と文化との相関を視野におさめた教育・研究を行います。また、比較史的な視野を獲得するため、アジアおよびヨーロッパの「社会文化論特殊演習」科目を同様に開設しています。
本学はこれまでの歴史学研究に、女性史・女性文化という比較的新しい分野に先行的な蓄積をはかってきています。女性史研究は、歴史文化専攻(博士前期課程)にも講義科目として位置づけられていますが、これをさらに発展させる形で、歴史文化専攻博士後期課程では、研究方法の修得に力点を置いた「女性史特殊演習」科目を設け、日本・アジア・ヨーロッパにわたる女性史研究を包括的に行う教育研究体制をとっています。
従来から歴史研究の基礎とされてきた古文書・古記録などの文献資料に加え、考古資料・美術工芸資料なども歴史資料としてとらえ、そのあり方をより深く認識することで、文化や社会のあり方を考えることができるよう「歴史資料学特殊演習」科目も履修可能になっています。特に、この点は、今日私たちが有している歴史資料でもある文化遺産や歴史的伝統を、どのように次代に継承していくかという課題にも資するものとなります。
文学研究科歴史文化専攻(博士後期課程)は、「特別研究」における大学院生の発表と、それに対する担当教員の指導が中心となります。これに加え、随時、小論文を課し、学内学会での発表や大学院生合同の発表会を開催します。また、自主的な研究会活動や学内外の学術雑誌への積極的な投稿も奨励しています。
大学院生は、こうした活動を通して、自らの研究をまとめ上げていきます。大学院生には、研究の点検と包括的な指導を行うため、研究経過の発表が義務づけられており、2年次6月には中間報告会を実施します。また、各年度の1月には「研究成果報告書」の提出が求められ、この報告書は次年度以降の研究指導資料として活用されます。
「特別研究」の指導にあたっては、大学院生の研究内容に従い、1名の研究指導主担当教員を決定するとともに、研究分野の異なる教員も含めた2名の副担当を置きます。また、中間報告会や予備論文審査は、主副担当教員だけでなく、専攻の教員が参加して行われ、大学院生の研究の広がりを支援しています。
博士後期課程の大学院生は、「特別研究」以外に「特殊演習」1科目を履修する必要がありますが、研究の広がりやさらなる飛躍のために必要と考えられる場合は、複数の「特殊演習」の履修を指導します。
本学では、きめ細かな指導を行い教育・研究水準の向上をめざすため、大学院生が担当教員の指導に基づき、学部科目の授業補助を行うティーチング・アシスタント(TA)制度を設けています。また、学内だけでなく、本学の海外提携大学である淡江大学(台湾)へ日本語TAを派遣する制度も設けています。どちらも、将来、教育職や研究職をめざす大学院生にとっては、貴重な体験を積むことができる機会です。
本学の海外提携校である淡江大学(台湾新北市淡水区)大学院へ本学大学院生(科目等履修生も含む)を派遣し、同大学院における日本語授業のTA をしながら学ぶ制度です(派遣期間は9月から1年間)。大学院入学後に応募することができます。詳しくは、本学国際系事務課(TEL.075-574-4365)までお問い合わせください。
共用机・ロッカー・パソコンを備えた大学院生研究室が設置されています。
また、図書館および情報メディアデスクが大学院生・学部学生の支援を行っています。全大学院生・学部学生にはメールアドレスとアカウントが配布され、学修・研究目的でのみ本学のインターネット環境を自由に利用することができます。
本学大学院は研究および教育に支障のない範囲で、研究生の受け入れを行っています。研究生は、特定の研究テーマについて、本学大学院の指導教員のもとで研究を行います。研究期間は、4月からの1年間、または前期か後期の半期となります。所定の研究を終了したときには、願い出によって研究事項や研究期間などについて、証明書を交付します。
なお、研究生としての期間満了後、引き続き研究生を希望する場合は、次年度の募集要項に従い、あらためて選考を受けなければなりません。
対象者は下記の通りです。