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児童教育フォーラム「現代こども理解から学校のあり方を考える」開催

 本学では、11月1日(日)に京都市国際交流会館にて文学部児童教育学科(2010年度より人間発達学部児童教育学科に改組)主催の児童教育フォーラム「現代こども理解から学校のあり方を考える」を開催。学内外から3名の講師を迎え、報告とシンポジウムにより「地域」「社会」「家庭」「教師間」といった現在の教師を取り巻く環境とその変化を見据えながら、現代のこどもや学校について考えました。当日は、現役教師や教師をめざす学生など約110名が参加しました。

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 奈良教育大学の生田周二副学長(奈良教育大学附属教育実践総合センター教授)は、2007年10月に実施した「奈良県の子どものストレスと学校・家庭生活との相関に関する調査研究」とベネッセコーポレーションの各種調査を比較・参照しながら、保護者の意識、こどもの勉強観と社会観、こどもの友だち関係、こどものストレスなどについて分析結果を報告。このなかで生田教授は、「こどもの成績アップを望む親が増え、楽しければ学力はあまり関係ないという親の減少」「こどもが成長していると感じている親や、こどもとともに成長していると感じる親の減少」など、保護者の意識の変化に関する興味深いデータを示されています。  本学児童教育学科の倉持祐二准教授は、1986年から21年間の奈良教育大学附属小学校での教師経験をもとに、教師とこどもとの関係、教師と保護者との関係について「対立関係」という視点からとらえ、その「つくりかえ」の必要性を訴えました。倉持准教授は、臨教審答申や学習指導要領の改定という政策を通して新しい学力観やゆとり教育、新自由主義教育が推し進められる一方で、現場では受験競争が激化し、こどもたちの間に敵対的競争が巻き起こったことを指摘。また、「いじめ」問題への対処を通して、「子育てがうまくいかないのは家庭の責任と悩む親」「無理に周りにあわせようとして重圧に苦しむ親」の姿を浮き彫りにしていきました。

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 東京大学大学院教育学研究科の勝野正章准教授は、教師の同僚性の視点から現代の学校にアプローチ。まず日本の学校の特色として職員室の存在をあげ、教師が共有できる時間と空間をもち、そのなかで教師が共同でこどもへの理解を深めてきたことに着目。しかし、現状は若い教師が同僚性よりもむしろ、自らへの評価を気にし、他の教師との競争を過剰に感じ取って、競争を内面化している点を指摘されました。また、職員室におけるパソコンへのデータ入力システムの整備が進んだことで、教師同士が語り合う時間が減少したことや、数値目標が学校に蔓延し、こどもの本当の姿・実態が語られなくなっているといった学校の変化にも言及されました。
 この後のシンポジウムでは本学児童教育学科・八木英二教授のコーディネートにより、会場からの質問に各パネリストが回答する形で進行。八木教授はフォーラムのまとめにおいて、こどもたちを真ん中におきながら教師と親の立場を相互に尊重しあえるような関係を現代の学校において構築していくことが課題となっていると指摘しました。

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