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健康科学部開設記念フォーラム「こころとからだ-つながる・かかわる-」を開催 !

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 12月11日(日)、健康科学部の2012年4月の開設を記念して、「こころとからだ-つながる・かかわる-」をテーマにフォーラムを開催しました。当日は、心と体に関わる分野で活躍する多方面からの専門家が集い、基調講演と、羽下大信・甲南大学教授をコーディネーターとしてシンポジウムを実施。集まった約200人の聴講者の前で、時折ユーモアを交えながら、各専門家による経験と意見の交流が繰り広げられました。

 

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 最初に「現代社会と子どもたちの悩み~こころとからだ~」をテーマに基調講演に立った、九州大学大学院の田嶌誠一教授(臨床心理学・カウンセリング・心理療法)は、現代の子どもを取り巻く環境の変化に言及し、(1)イメージや視覚的なものが氾濫するなかで、心と体が切り離され、子どもに葛藤が少なくなってきた、(2)地域共同体の消失により孤立化と分業化が進み、家族がつまずくと問題が一気に深刻化する、(3)子どもの遊びが、屋外から家の中へ、異年齢間から同年齢間へ、組織的体験からゲームによる擬似的体験へと変化した、という3点を指摘。こうした変化を受け、子どもに対する援助について、自らの実体験を紹介しながら、これまでの「密室型援助」から、母親やカウンセラー、学校の先生、友達など、いろんな人が関わる「ネットワーク型援助」への移行の重要性を説きました。

 続いて行われたシンポジウムでは、まず情報科学芸術大学院大学の小林昌廣教授(医療人類学・身体表現研究・芸術情報論)が「表現の場としてのこころとからだ」と題し、言葉が私たちの認識や思考パターンを形成するという「サピア=ウォーフの仮説(言語相対説)」をベースに、日本人には馴染み深いが、海外には厳密な意味で存在しない「肩こり」に関する論を展開。医学的な「肩こり(頸肩腕症候群)」は僧帽筋(そうぼうきん)の静脈鬱血から生じると考えられているが、それとは別に「日本的な肩こり」が、日本人が自らを社会の制度や枠組みに当てはめようとすることによって起こる社会学的、心理学的な症状として発生しているメカニズムを指摘しました。
   西九州大学の村田伸教授(理学療法学・健康心理学)は、理学療法の立場から「リハビリからみたからだとこころ」をテーマに、看護師・臨床心理士・理学療法士や役場の職員らが共同して福岡県で行った、心と体の関係を調査した結果について報告。高齢者が運動を定期的に行うことは身体機能だけでなく、心理機能にもよい影響を与え、特に75歳以上の高齢者にはより高い効果があることを分析しました。また、加齢により体が健康でなくなっても、心が満たされていれば健康だと思うことがあり、心と体のつながりは強いが、離れることもあるのではないかという指摘を行いました。
 理化学研究所網膜再生医療研究チーム・チームリーダーの高橋政代氏は、「先端医療とこころ」をテーマに、遺伝病であり、夜盲や視野狭窄を引き起こし失明すると言われる「網膜色素変性」と、その患者の疾患に対する受容態度について医療現場からの報告を行いました。その受容態度を、病気への恐怖心だけでとどまっている「初級者」、治療法を求めて全国の病院を回る「中級者」、病気を受け入れ、環境を自分にあわせて変化させる「上級者」に分類し、上級者になるために補助具を使いこなせるようにする「ロービジョンケア」の重要性を指摘。また、自らも研究に携わるiPS細胞や人工網膜などの先端技術は発展途上にあり、マスコミ等の報道に翻弄される患者の心の揺れについても報告がなされました。
 3名の報告の後、基調講演や報告のなかにあったさまざまな話題やテーマをめぐって興味深い議論が交わされ、盛況のうちに終了しました。

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