2025.08.25
「函館アントレツアー」を実施-地域課題と起業のリアルに触れる、2日間の実践型学習-
2025年7月31日(木)から8月1日(金)にかけて、経営学科および情報工学科の学生15名が北海道函館市を訪問する「函館アントレツアー」に参加しました。本ツアーは、現場で地域が抱える課題に直接ふれながら、アントレプレナーシップ(起業家精神)を実践的に学ぶことを目的としたものです。
地域の現実と創造的挑戦に出会う
初日、学生らは早朝に伊丹空港に集合し、空路で函館に向かいました。到着後は、最初の訪問先である函館市地域交流まちづくりセンターにて、永澤大樹氏(函館商工会議所 中小企業相談所長)による講演を受講しました。講演では、函館市が直面する人口減少や高齢化、若年層の流出、観光依存型経済の課題について、豊富な統計データを交えた解説を受けました。永澤氏からは、地域経済の持続可能性を高めるためには、若者のUターン促進や創業支援が重要であると説明がありました。
午後からの公立はこだて未来大学の田柳恵美子特任教授(同大学名誉教授)による講演では、函館市西部地区における再開発とリノベーション拠点形成の現状が紹介されました。歴史的建造物の再生を通じた地域活性化の取り組みや、住民との協働によるプロジェクトの推進、文化的価値の継承の重要性が語られ、学生は地域再生の可能性にふれる貴重な機会を得ました。
その後、実際に西部地区の旧市街地を歩きながら、街の雰囲気や地域の課題を体感するフィールドワークを実施しました。本プロジェクトに携わる蒲生寛之氏(合同会社箱バル不動産 代表)および富樫雅行氏(合同会社富樫雅行建築設計事務所 代表)からも直接指導を受けながら、「大三坂ビルヂング」や「街角NEW CULTURE」など、地域発の創造的拠点を視察しました。学生は再生された空間が新たな価値を生み出す現場のリアルな息づかいを感じているようでした。

最後に、ハコレコドットコム株式会社 代表取締役CEO 山田圭飛氏による講演では、学生時代のPBL(課題解決型学習)を契機に起業し、地域密着型のWeb制作会社として事業を展開してきた経緯が紹介されました。同社は、Web技術を活用して地域課題の解決に取り組む「シビックテック事業」に注力しており、自治体や地域住民と連携したプロジェクトを多数展開しています。講演では、函館山の混雑状況をIoTで可視化する技術を事例に地域の利便性向上を目指す具体的な事例が紹介され、学生たちはテクノロジーを通じた地域貢献の可能性に強い関心を寄せていました。
ICTと起業支援の最前線に触れる
翌日は、公立はこだて未来大学を訪問しました。同大学の理事長で学長の鈴木恵二教授による大学概要説明では、「専門性・デザイン思考・PBL実践力」を三本柱とする教育方針が紹介され、高度ICT人材育成のための6年一貫教育や、企業との連携による実践的な学びの場について理解を深めました。

続いて、同大学発のスタートアップ企業「funovo」の代表取締役CEO 松下文太氏による講演が行われ、建築業界に特化した技術支援サービスを展開する事業の内容や、学生起業のきっかけ、地域とのつながりが事業の原動力であることが語られました。

さらに、同大学の特徴的な学習プログラム「高度ICT演習」のプロジェクトに取り組んでいる5つの学生グループによるポスターセッションが行われました。学生同士、近しい課題意識や悩みを共有しながら、活発な意見交換が行われ、地域を越えて学びが広がりました。

その後、空港へ移動し帰路につき、2日間のプログラムを終えました。学生たちは、地域課題の複雑さと、起業による社会的貢献の可能性を実感し、それぞれのキャリアや学びへの意欲を新たにしました。
本ツアーは、9月に開催予定の「起業講座」や、12月の「ビジネスプランコンテスト(BPP2025)」へつながる実践的な学びの第一歩です。学生たちは、今回の経験をもとに、地域課題に根ざしたビジネスアイデアの創出に挑戦していきます。