2025.07.02
大学院生2名が国際会議「IEEE ICEIB 2025」にてBest Conference Paper Awardを受賞!

2025年4月25日から27日にかけて台湾・新北市の淡江大学で開催された国際会議「IEEE ICEIB 2025」において、西出俊准教授の研究室に所属する本学大学院情報学研究科修士課程1回生の松本穂莉さんと岡本和佳さんが、それぞれBest Conference Paper Awardを受賞しました。
IEEE ICEIBは、電子通信やAI、IoT、ビッグデータなどの分野において、世界中の研究者が最先端の研究成果を発表する国際会議で、修士課程の学生が受賞するのは非常に珍しいことです。
岡本さんの研究テーマは、「SketchRNN を用いたお絵描き人狼ゲームのAIプレイヤーの構築」です。「お絵描き人狼」というゲームにおいて、AIを1人のプレイヤーとして参加させることを目標に研究を進めており、その初期成果を発表しました。「お絵描き人狼」とは、プレイヤー4人がそれぞれ出されたお題に沿ってパソコン上で一筆ずつ絵を描き、1つの絵を完成させていくゲームです。4人のうち1人はお題を知らない“人狼”役となり、自分が人狼であることを他の“村人”役に悟られないように振る舞います。ゲームの最後には、全員で参加者のうち誰がお題を知らずに絵を描いた人狼かを推理します。推理が当たれば村人の勝利、外れた場合や人狼がお題を正しく当てられた場合は人狼の勝利となります。このゲームにAIプレイヤーを導入するというアイデアは、岡本さんが学部生の頃に受講した授業「情報工学実践」の課題を発展させたものです。授業で身につけた知識を活かし、AIが人間と同じようにゲームに参加できるよう工夫されています。
現時点で、AIが村人役として特定のお題に対応することは実現されており、人間3人と一緒にプレイすることも可能です。一方で、人狼として“正体を隠しながら描く”や“他者の絵を見て推理する”といった柔軟な振る舞いを実現することは今後の課題となっています。今後は、AIによる描画の学習精度向上などの技術的課題に取り組むことで、人間と本格的に駆け引きができるAIプレイヤーの実現をめざしています。


一方、松本さんは「作画支援システムの構築のための深層学習による作画プロセスの学習と生成」という研究テーマで、絵が描かれていく過程に関するAIの開発に取り組みました。この研究では、AIが絵を生成する際に作画過程を提示することで、ユーザーが自由に修正や手を加えられるような対話的な作画支援をめざしています。近年、テキストや画像で指示を入力すると画像が生成されるAIが急速に普及していますが、今回開発されたAIは、作画の過程でユーザーとやりとりをしながら一緒に作品を作り上げる新しい形のAIです。自身も絵を描くことが大好きだと語る松本さんは、独自に制作・構築したキャラクター画像データを活用し、作画の進み方を予測・生成するAIモデルを構築しました。さらに、AIの画像生成性能を高めるため、意図的にばらつきを加えたデータで学習させる手法も取り入れています。この技術は、芸術教育やデザイン現場などでの作画支援ツールとして期待を集めており、今後ますますの発展が見込まれています。
現地(台湾)では、両名とも各国から集まった研究者に向けて堂々と論文を発表し、国際的な舞台で高い評価を得ました。西出俊准教授は「今回の受賞は、両名の研究が斬新かつ実践的なテーマであったこと、研究者が少ない領域に挑戦したことから、高い評価が得られると確信していた。これで満足せず、今後も継続して研究を深めてほしい」とコメントしています。なお、両名が取り組んだ次の研究課題に関する論文は別の国際会議にも投稿しており、さらなる成果が期待されています。


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