【新入生の皆さんへ】2022年度 京都橘大学入学式 学長式辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんを心より歓迎いたします。
さらに18歳、19歳の皆さんは今日から成人となられ、二重のお慶びの日となりました。
皆さんを、これまで大切に育んでこられたご家族の方々へもお祝いを申し上げたいと思います。 まことにおめでとうございます。

 私からはこれから大学で学んでほしいことをお伝えして、お祝いの詞としたいと思いますが、皆さんをお迎えするにあたり、まず京都橘大学について簡単に紹介させていただきたいと思います。
 本学は京都橘学園を設置母体としていますが、この学園は、1902年に校祖中森孟夫によって創立された京都女子手藝学校をその礎としています。校名の「橘」という名称は、創立の地が京都御所の西側、紫宸殿の右側にありましたので、「右近の橘」に因んでつけられたものです。校祖の中森先生は、明治の世に青少年への教育の必要性を力強く説き、一生を教育にささげられた方です。建学の精神として、「力を実業教育に注ぎて、将来自営独立の実力を得しめん」という言葉を掲げ、当時の若い女性たちを地場産業の担い手へと育てることを目指して、女学校を創設されました。現在この学園には、大学、高等学校、中学校とこども園が設置されており、いずれも男女共学です。

 大学は1967年に、この山科大宅の地で開学されました。当初は文学部一つの女子大学からスタートして、幾度もの改革を行い、2005年度には男女共学となり、その後も改革を繰り返して、現在は8学部15学科となりました。国際英語学部、文学部、発達教育学部、経済学部、経営学部、工学部、看護学部、健康科学部の8つの学部と5つの大学院研究科で5,989人の学生がこの一つのキャンパスで学び、それぞれの学生生活を充実させて、互いに良質の刺激を与えあって成長していかれることを願っています。

 本学では、「自立・共生・臨床の知」という教学理念を掲げていますが、どの学部もこの理念に基づいて教育し、社会に有用な人材を送り出してきました。4年間の学びを通して、専門的知識を獲得して自ら探究し課題を解決していく「自立」の力、他者と互いに理解を深めて協働する「共生」の姿勢、そして人々の暮らしや健康に役立つ「臨床の知」を身につけて、ここから社会へと巣立って行ってほしいと思います。

 皆さんは大学選びの時に、興味関心のある学問、将来の希望する職業やこうありたいと思う暮らし方などを描いて、それに適した分野の学部・学科を選択されたことと思います。大学で高い専門性を身につけたいと思い入学されたことと思います。京都橘大学には8学部15学科に、それぞれの分野に精通した先生方が揃っておられ、皆さんと親しく指導してくださいます。専門的な大学教育を早く受けたいと楽しみにしておられることと思います。どうか、そのような初心を忘れることなく、卒業までの日々を充実させてください。
 ただし、皆さんの大学での学びについて、もう一つ忘れないでほしいことがあります。
皆さんの人生を豊かにするためにも、私たちの住んでいる社会が抱えている課題に取り組む姿勢が望まれますし、視野を広げ、より多くの対象に関心をもち、より多くの視点から物事を考えられる力をつけてほしいと思います。大学生時代に興味関心の間口をぐっと広げていただきたいと思います。自分とは異質な人や物事へも関心をもってほしいと思います。言葉を換えてもうしますと、しっかり教養を身につけてほしいということです。教養とは決してアクセサリー的なものではありません。行き詰った時にそこを突破する力を養いますし、他者への理解を深めて豊かな人間性を涵養することにもつながります。大学で身につけた教養は、個々の分野の専門性をより深いものへと昇華させ、今後の人生を歩んでいく際の指針となると思います。

 さて、大変残念なことですが、私たちの世界は今差し迫った重大な問題を抱えています。
その一つは2年前からの新型コロナウイルス感染症COVID19の世界的感染拡大です。皆さんにも非常に身近な危機となって迫ってきました。この間、ワクチンや治療薬の開発などの医療の進展はありましたが、今も完全な終息の見通しはありません。皆さんにとってはワクチン接種という身近な課題がありますし、人類にとっては自然の驚異は依然として存在し、自然をコントロールできるというような思いは驕りであったと思い知らされることになりました。また、日本では、この事態への対策を講じる際に、各所でデジタル化の遅れという2次的な問題が露呈されました。
 本学では、学生と教職員の健康を守るため、今後も感染対策を実施してまいります。対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリット教育を行い、両方の教育方法の長所を生かし、教育の質の向上に努めます。ご存じのことでしょうが、テクノロジーの発展に伴うデジタル化の波は、COVID19の感染拡大の前から押し寄せており、これからの社会で活躍する人には、多くの分野でITリテラシーを身につけていることが望まれています。教養教育によって、文系の学生は基礎的な科学的知識を獲得してほしいと思いますし、理系の学生には広く専門外の教養を身につけてほしいと思います。
 私たちが直面している世界の問題の2つ目は、ウクライナ情勢です。
人々の生活や文化、そして尊い命までもが破壊されている事態を深く憂慮し、一日も早く人々の安全が確保されることを強く望みます。そのためには私たちができることはどんなことか、一緒に考え、語り合いましょう。大学にはともに語り合う友人も先生もいます。これからの未来を担う皆さんがウクライナの悲劇を忘れることなく、まことの「共生」の時代を構築することを目指していただきたいと思います。

 私たちの世界には、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)に表されているように、多くの課題があります。皆さんの専攻する分野とこれらの問題とは、一見無関係のように思えるかもしれませんが、人々の置かれている状況を想像し、それらについてどのような姿勢で臨むのか、どんな解決方法があるのか、考えて語ることはできるはずです。そのためにも大学に教養教育は欠かせないと思います。どうか、皆さんの大学時代を、専門性の高い知識・スキルと豊かな教養を深く広く身につける実り大きい青年期としてください。

 京都橘大学は、皆さんが新しい時代の担い手として、力強く社会へと巣立っていかれる日まで、全力で皆さんを応援します。
 本日は、ご入学、まことにおめでとうございます。

2022年4月1日
京都橘大学・学長
日比野英子

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